「雪国絶対4WD主義」の常識を覆した、日産ワンペダル操作の「扱いやすさ」ノートe-POWER/リーフ
MotorFan / 2019年2月27日 23時50分
日産自動車主催の「Nissan Intelligent Mobility 雪上試乗会」が開催された。ノートe-POWERからGT-Rまで、日産の主力車種を一同に集め、雪上でのドライブパフォーマンスが楽しめる。そこで意外なパフォーマンスを見せたのが、ノートe-POWERとリーフのワンペダル操作車だった。その極意を日産エンジニア諸氏に訊いた。 TEXT:世良耕太@Kota Sera PHOTO:MFi /NISSAN
雪道といえば4WD(四輪駆動、よんく)のイメージである。前もしくは後ろの2輪で滑りやすい雪の路面に力を伝達するより、4輪で力を伝えたほうが安心だ。なにより、2WD(にく)だと「すべる」気がする。降雪地域のユーザーなら実体験がともなっていることが多いだろう。
そんなお客さんの声を受けて、北海道の販売会社は「4WDを寄こせ!」「なんで4WDを作らないんだ!」と、日産自動車の社員に訴えていたという。販売店にやってきたお客さんは、お気に入りのモデルに4WDの設定がないと知ると、「じゃ、いいです」といって背を向けるからだ。
だが、リーフやノートe-POWER、セレナe-POWERを出してからというもの、4WDに対する強い要望は影を潜めたという。なぜだろう。
結局のところユーザーは、4WDが欲しかったのではなく、「扱いやすさ」が欲しかったのだ。カタカナで表現すればコントローラビリティである。ノートやe-POWERは扱いやすいので、4WDでなくても(ノートe-POWERには4WDの設定もある)、雪が積もったすべりやすい路面で気を遣わずに発進できるし、安心して減速できる。だから、「4WDじゃなきゃ」という声が激減したのだ。
リーフやe-POWERが扱いやすい理由のひとつはモーターにある。リーフはバッテリーに蓄えた電気エネルギーだけで走る。ノートとセレナのe-POWERはガソリンエンジンを積んでいるが、エンジンで発電してつくった電気エネルギーでモーターを動かして走る。リーフもe-POWERも、タイヤを動かしているのはモーターだ。
日産は「1万分の1秒単位」という表現を用いているが、ともかく、モーターは反応がいい。細かな制御を緻密に行なうのが得意だ。これはエンジンとトランスミッションを組み合わせたパワートレーンには絶対に真似ができない。モーターで走るクルマであることが、雪道でも安心して走れる理由のひとつである。
それ以上に大きな理由が、ワンペダルドライブだ。アクセルペダルの操作で加速側だけでなく減速側もコントロールできるワンペダルドライブで走ると、日常走行のほとんどのシーンで、ブレーキを踏む必要がない。リーフやe-POWERの場合、アクセルペダルを踏み込めば加速し、戻すと減速する(ブレーキを掛けたようなものだ)。弱く踏めば弱く加速し、強く踏めば強く加速するように、ゆっくり戻せば弱いブレーキを掛けたように減速し、速く戻すと強いブレーキを掛けたように急減速する。
専門的にはFS特性(Fはフォース=力、Sはストローク)といって、ペダルのストローク量とそのときにペダルから生じる反力(足の裏に感じる力)の関係が関連してくる。ワンペダルドライブの場合は、アクセルペダルひとつで加速側も減速側もFS特性が完結している(わかりやすいように、図ではG=加速度とS=ストロークの関係で説明)。
これまでの一般的なクルマは、加速するときはアクセルペダルを踏み、減速するときはブレーキペダルに踏み換えていた。つまり、FS特性の異なる2つのペダルを踏み換える必要があったのだ。雪道でブレーキを掛けるときは、アクセルペダルと特性の異なるブレーキペダルに踏み換えなければいけないので、「どれくらい踏めばスリップしないで思ったとおりに減速できるだろうか」と不安になる。
ワンペダルドライブなら、その心配はない。どれくらい踏めばどれくらい加速し、どれくらい戻せばどれくらい減速するか。その感覚になじんでしまえば、気を遣うことなく加減速ができるからだ。従来の2ペダル車の場合、交差点などで発進する際は、ブレーキペダルからアクセルペダルに足を載せ替える必要があった。アクセルからブレーキに踏み換える際と同様、特性の異なるペダルを操作しなければならないので、無意識のうちに不安を覚えるのだ。「あれ? 大丈夫かな?」と。
ちなみに、「e-Pedal」と呼ぶ機能を備えたリーフはワンペダルの操作で完全停止できるが(日常の9割くらいはブレーキを踏む必要がない)、e-POWERの場合、完全停止はできない(完全停止時はブレーキを踏む必要がある)。また、e-POWERは停止状態でブレーキペダルを離すとクリープする(ゆっくり動き出す)が、リーフはクリープしない。こうした違いはあるが、どちらも、雪道で扱いやすい点は共通している。
開発に携わった技術者に聞くと、このワンペダルドライブ、もともとは安心・安全の観点での開発ではなく、ファン・トゥ・ドライブの実現が目的だったという。4WDキラーを狙ったわけではないのだ。ワインディングロードでは、アクセルオフによる荷重移動でクルマの向きを積極的に変えるテクニックがあり、これがうまくいくと楽しい。アクセルペダルの操作で減速度をコントロールできるワンペダルドライブなら、荷重移動を簡単に行なうことができ、運転が楽しくなるのではないか。
そういう発想だったという。サーキットを走った経験も含めていうと、確かに、曲がりくねった道でのワンペダルドライブはとびっきり楽しい。それは開発陣の狙いどおりだったが、ワンペダルドライブをテストしてみると、他にも発見があった。ペダルの踏み替えが要らないので渋滞での運転は楽だし、雪道のような滑りやすい路面でのドライブでは安心感をもたらした。「いい面がいっぱい出てきた」ので、「じゃあ市販車に投入しよう」となったのだという。
大正解だ。ワインディングロードを走って楽しいし、渋滞は楽だし、雪道では扱いやすく安心だしで(北海道での雪道ドライブで十分に確認したし、存分に楽しんだ)、ワンペダルドライブ、実に画期的な技術である。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
日産「新型ミニバン」公開! 斬新「“利休”ルーフ」新採用で超カッコイイ! 値下げ&新4WDモデルも導入予定の「セレナ」が販売店でも話題に
くるまのニュース / 2024年9月21日 13時10分
-
SUVのスタッドレスタイヤはどう選べば良いの? 横浜ゴム「iceGUARD 7」と「iceGUARD SUV G075」にはどんな違いがある? 同条件で試乗してみた
くるまのニュース / 2024年9月20日 21時30分
-
ホンダ新「フリード」人気の秘訣は日本仕様の追求 販売好調、本質を変えないことが売れる理由
東洋経済オンライン / 2024年9月14日 9時30分
-
フォードの人気コンパクトSUV『ブロンコスポーツ』、本格オフロードパッケージ「サスカッチ」設定
レスポンス / 2024年8月29日 7時0分
-
三菱ふそうの大型トラック『スーパーグレート』を新旧比較試乗、「なぜ、ここまで違う?」新型最大の魅力とは
レスポンス / 2024年8月27日 12時0分
ランキング
-
1「高くても低くてもダメ」血糖値の正しい整え方 人格破綻まで招きかねない「低血糖」の恐怖
東洋経済オンライン / 2024年9月23日 17時0分
-
2どんな時にスマホを買い替える? 3位スペック不足を感じた時、2位故障した時…1位は?
まいどなニュース / 2024年9月23日 16時0分
-
3健康診断の数値が改善する7つの習慣とは…いわき市で糖尿病の専門医師が解説・福島県
福島中央テレビニュース / 2024年9月23日 14時31分
-
4痛くて腕が上がらない…【医師監修】五十肩という思い込みには要注意!痛みの原因と病状セルフチェック
ハルメク365 / 2024年9月23日 11時50分
-
5コーヒーよりもはるかに効果的…88歳医師が「長生きしたいならこれを飲むべき」と強く勧める"飲み物"
プレジデントオンライン / 2024年9月23日 15時15分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください