次世代Armv8.1-Mアーキテクチャが、業界最小の組み込みデバイス向けに、強力な機械学習と信号処理を実現
MotorFan / 2019年2月15日 11時25分
Armは、Arm Cortex-Mシリーズ・プロセッサ向けのMプロファイル・ベクトル拡張機能(MVE)である「Arm Helium」テクノロジーを発表した。Arm Heliumは、Arm TrustZoneのセキュアな基盤に基づきArmv8.1-Mアーキテクチャの演算能力を強化し、次世代のArm Cortex-Mプロセッサにおいて、機械学習(ML)のパフォーマンスを最大15倍、信号処理のパフォーマンスを最大5倍向上させる。
発表の概要:
・「Arm Helium」テクノロジーは、Armv8.1-Mアーキテクチャに強力な演算機能を提供する、最新のMプロファイル・ベクトル拡張機能
・業界最小のエッジデバイス向けに、機械学習タスクで最大15倍、信号処理タスクで最大5倍のパフォーマンス向上を達成
・次世代のCortex-Mプロセッサでは、ローカルな意思決定が必要な小型の組み込みデバイスを対象に
「1兆個のデバイスがネットワークでつながる」世界に向けた取り組みは加速し、今後も続くことが予想される。ネットワークのエッジ側で機能的に制約のあるデバイスが増加する中で必要となるのが、こうしたデバイスの演算機能を効率的に拡大する方法を見つけることだ。これらデバイスの演算能力が高まることで、開発者にとっては、機械学習(ML)アプリケーションをデバイスに直接記述し、エッジ側で意思決定を行う機会が直ちに得られ、データのセキュリティを強化しつつ、ネットワークのエネルギー消費量、レイテンシー、帯域幅の使用量を削減することができる。
その実現に向けArmがこのたび発表したArm Heliumテクノロジーは、Arm Cortex-Mシリーズ・プロセッサ向けのMプロファイル・ベクトル拡張機能(MVE)として、Arm TrustZoneのセキュアな基盤に基づき、Armv8.1-Mアーキテクチャの演算能力を強化する。Heliumは、次世代のArm Cortex-Mプロセッサにおいて、MLのパフォーマンスを最大15倍、信号処理のパフォーマンスを最大5倍向上させる。その結果、パフォーマンスの課題によって、低コスト・高エネルギー効率のデバイスの使用がこれまで制限されていた分野において、パートナー企業に新たな市場機会をもたらす。
ワンランク上の演算能力
Arm Neonテクノロジー(*1)を通じて、より高価格のCortex-Aベースのデバイスを対象とした、高度なデジタル信号処理(DSP)の提供が開始した。このほか、比較的制約の多いアプリケーション向けにも、より高性能のCortex-Mプロセッサ(Cortex-M4、Cortex-M7、Cortex-M33、Cortex-M35P)を対象に、DSPの拡張機能を追加した。いずれの技術も、特定のアプリケーションでMLの演算能力を加速させるために使用可能だ。
*1) https://developer.arm.com/technologies/neon
本ソリューションはこれまで、エネルギー効率の優先度が高い、最も制約の多い組み込みシステムを対象に、CortexプロセッサとSoCのDSPを組み合わせてきたが、これにより、ハードウェアとソフトウェア両方の設計が複雑化している。こうしたデバイスにより多くのML機能を実装しようとする際、SoCの開発に関する既存のさまざまな課題は、より厳しいものとなり、異なるツールチェーンの活用、プログラミング、デバッグ、独自仕様の複雑なセキュリティ・ソリューションの作業には、より高度な専門知識が要求される。
Armv8.1-MとHeliumは、効率性で妥協することなく、リアルタイムの制御コード、ML、DSPの実行機能を提供することで、こうした課題を解消する。その結果、多数のソフトウェア開発者は、インテリジェントなアプリケーションをセキュアに拡張し、より幅広いデバイスでDSP機能を活用できるようになり、「振動と運動」「音声とサウンド」「視覚と画像処理」の3つの主要分野では新たなアプリケーションを強力にサポートする。これにより、センサーハブ、ウェアラブル端末、オーディオ機器、産業用アプリケーションなど、Cortex-MとHeliumテクノロジーをベースとした次世代SoCを使用する将来のデバイスでユーザー体験が向上する。
パフォーマンスの向上や開発コストの削減だけでなく、SoCの設計・開発チームには以下のメリットを提供する。
・機能の統合による、コスト、消費電力、設計作業の最適化
・Platform Security Architecture(PSA)仕様に準拠したArmv8.1-Mの設計により、TrustZoneをシンプルに導入
・制御と信号処理、両方のソフトウェア開発に単一のツールチェーンで対応
・十分に確立されたHeliumエコシステムが、ツール、モデル、ライブラリの包括的なセットを提供。その多くは、現在すでにCortex-Mの開発者に使用されており、ソフトウェアの開発が容易に
ソフトウェア開発をシンプル化
Heliumの統合ツールチェーン、ライブラリ、モデルによって、よりシンプルなソフトウェア開発が可能となる。Heliumのツールチェーンの構成要素であるArm Development Studioは、Arm Keil MDK、Arm Models(コードモデリング用途で開発者向けに提供開始)、CMSIS-DSPやCMSIS-NNなどの各種ソフトウェア・ライブラリを網羅しており、開発者はそれぞれのニーズに最適な選択が可能。そして、信号処理アプリケーションでは、専用DSPや機能アクセラレーターの必要性をなくし、設計の複雑化を解消することで、さらなるシンプル化を実現する。
次世代の組み込み/IoTデバイスをサポート
Heliumは、フレームワークやライブラリからハードウェアまでをサポートすることで、ArmのProject TrilliumがMLアプリケーションに価値をもたらす最新の事例。すべてのSoC開発者は、パフォーマンス、実装面積、消費電力、コストの制約の異なる環境でイノベーションを実現する必要があり、あらゆる用途に適合する単一の製品はない。
Helium用のツールチェーンとモデルは15日より提供を開始し、Heliumのシリコンへの搭載は、今後2年以内の実現を予想している。ホワイトペーパー(*2)では、Armv8.1-Mアーキテクチャのすべての強化機能に関する情報を紹介している。Heliumに関する詳細と開始方法については、以下リンク先(英文)(*3)を参照。
*2) https://pages.arm.com/introduction-armv8.1m.html
*3) https://community.arm.com/processors/b/blog/posts/arm-helium-the-new-vector-extension-for-arm-m-profile-architecture
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