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新型トヨタ・クラウンのメカニズムを徹底解説!

MotorFan / 2019年3月17日 17時0分

新型トヨタ・クラウンのメカニズムを徹底解説!

トヨタ自動車の旗艦として、十五世代、60余年に渡り開発が続けられるクラウンには、その時代にトヨタが持ちうる最新・最高の技術が投入される。今回は待望の新プラットフォームを得たことで運動性能の水準が一気に上がり、それに見合うパワートレーンやサスペンションチューニングが施された。そしてついに、国内専用モデルでありながらニュルを舞台に仕上げが行なわれたという。 レポート◉安藤 眞 図版解説◉安藤 眞/編集部 フォト◉平野 陽/森 信英/編集部

慣性諸元と居住性の向上

レクサスLSに類するTNGAプラットフォームが与えられたクラウンは、やはりLS/LCと同様のコンセプトである「慣性諸元」が追求され、前後重量バランスの向上や重心高低減が施された。前後オーバーハングも短縮されている。

クラウン独特の装備

ショーファーユースの場合、後席乗員のために、ドライバーが助手席のスライド位置を動 かすことがあるため、助手席背もたれのドライバー側に電動シートのスイッチが付いている。この位置もモニター調査の結果に基づき、従来より100㎜低い位置に、1.5倍大きなスイッチを設定している。

新たな着想によるディスプレイ

上下2段に分かれたダッシュボード中央のダブルディスプレイは、マルチメディアと空調といった用途を分け、上段のディスプレイを確認しながら操作は手元にある下段の画面のみに絞るというように役割を分割。操作性と安全性を高めている。

日本人の体型に合わせたドアハンドル

ドアのアウターハンドル高さと操作角も、日本人の体型を考慮して設定。ドアの開き加減を3段階に調整するドアチェックは、形状をチューニングすることで、大きく開くほど操作荷重が大きくなるよう設計。操作時に意図せず全開にならないようにして、安全性を高めた。

所作の同調にまでこだわる

前席カップホルダーは、昇降式を採用。ケースに設けられたラックギヤの上をピニオンギヤが転動して昇降する仕組みだが、両側のピニオンギヤをシャフトに直付けし、回転を同調させることで、昇降時のガタつきを抑えた。歯形も純粋なインボリュート曲線ではなく、歯元を絞った形状を採用。歯先が出入りする際の抵抗をなくし、操作荷重が変化しない滑らかな動きを実現している。

足入れスペースを拡大して快適性を向上

リヤシートの居住性を高めるために、フロントシート下の足入れスペースを先代よりも57㎜拡大し397㎜とした。この数値は同クラスの欧州セダ ンと比べても大きいため姿勢の自由度が高く、長時間の乗車時でも快適に過ごせる。

五感で感じる室内の触感統一


室内の各部を乗員が触れる頻度で5段階にゾーン分けを行ない、見栄えと表皮の触感に統一感が持たされた。各ゾーンはそれぞれ触感の目標値が設定され、材質やシボのパターン、表面処理などで理想の感触が追求された。

日本人の体型に合わせ座面の形状が最適化されたリヤシート

日本人パネラー70人の姿勢や評価を調べることで最適な座面角を算出。座面角を日本人の体型に合わせて最適に設定することでフィット性を向上させた。体圧を分散し、長時間着座時の疲労を軽減する。

体圧分布の適正化で長時間の着座でも疲労を軽減する

上記の座面形状と角度の調整によって、体重の集中する座骨部の圧を低減したほか、腿まわりの座圧を分散して広範囲で身体を受け止めることで、フィット感と快適性を高めている。

フロア形状に影響を受けない理想の形状を追求

フロアパネル直置きのため、フロア形状によって理想的な体圧を求めにくいリヤシートだが、新型クラウンでは成形発泡ポリプロピレンの構造体を用いてシートクッションの厚みを均一化。角度も調整され、最適化されている。

レクサス譲りのプラットフォーム

フロントサイドメンバーは、レクサスLSと共通部品。全幅を狭めるため、エプロンメンバーやラジエーターコアサポートを専用設計している。センターフロアはレクサスLSの縮小形。リヤフロアから後ろは、先代クラウンをベースに改良を施したものだ。

高性能セダンの走りを実現するサスペンション

フロントサスペンションの構造はレクサスLSとまったく同じ。ダブルウイッシュボーンの上下リンクを分割し、マルチリンク化したものだ。リヤサスはレクサスGSのものをベースに専用設計。トーコントロールアームが後方にあるレイアウトや、ダンパーとコイルを別置きにしているのも、GSと同じだ。

コンセプトを具現化するダンパーは2種類


標準車両のダンパーには、モノチューブ式を採用。左は「RS」グレードに標準装備されるAVSのダンパー。シリンダーを三重にして、真ん中を伸び/圧両側の流路に使用。外付けのバルブで減衰力を制御する。

フラット感の高い走りをもたらすスタビライザーの効率化

スタビライザーは前後とも配索を見直して、作動効率を高めている。スタビ端の揺動軌跡がロワアームの揺動面に近くなるよう配置することで、スタビリンクの取り付け部に生じる横方向の力が最小になるよう配慮されている。フロントのブッシュは接着式、リヤのブッシュはインターリング入りとして、初期応答性を高めている。

アクティブノイズコントロール(ANC)


オーディオシステムを利用して車内の静粛性を高めるANCシステムを全車に標準装備。キャビンに設置した3ヵ所のマイクでこもり音を拾い、スピーカーから逆位相の音を出して相殺する。チューニングは「4席でベスト」とのことだが、着座センサーを利用して乗車位置に応じた制御をすれば、より効果が高まるのではないか。

フロアパネルの遮音で静粛性を向上

ボディシェル構造体の中でも、太鼓の皮のように振動して発音源となりやすいのがフロアパネル。特に電気走行頻度が高くなったHVモデルは、ロードノイズ系のこもり音が目立ちやすくなる。その対策として、裏からリインフォースを当て、剛性を高めて振動の抑制を図っている。

エンジンサウンドエンハンスメント(ESE)

クラウン購入層の若返りを狙い、走ってワクワクする理想的なエンジン音を室内に聞かせる。走行状況に応じた周波数サウンドをスピーカーから発し、臨場感のあるエンジンサウンドで音による加速感を演出する。

ロードノイズを低減するフロアの補強

走行中聞こえる“ゴー”という125Hz帯域の騒音は、フロアアンダーリインフォースが上下する振動に起因することが解析され、その対策として補強が施された。プラットフォーム開発段階で先代の弱点が解析され、骨格での抜本的な対策も施されている。

ホイール

18インチホイールには、リムの一部を中空にしてレゾネーター(共鳴式消音器)効果を持たせた“ノイズリデューシングホイール”を設定(「RS」を除く)。タイヤ内の空洞共鳴音を抑えることで、さらなる静粛性を実現している。

大幅に剛性が高められたボディがハイレベルな走りを支える


GA-LプラットフォームやLSW(レーザースクリューウェルディング)、構造用接着剤などによる結合部の強化などによって、新型クラウンはボディの捻り剛性を1.6倍(左上グラフ)に向上。フロントサスタワー部にはアルミダイキャスト製の部材で局部剛性が2.3倍(左下グラフ)と大幅にアップされている。

強固な結合を実現するセルフピアッシングリベット

アルミと鉄では融点が3倍違うため、溶接が難しい。そこで、アルミ製フロントサスタワーと鋼板製骨格の結合には、セルフピアッシングリベットを使用。コップ状の足を持ったリベットを打ち込み、アルミの内部で広がるように食い込ませて結合する技術だ。構造用接着剤も併用され、結合強化と電触防止を行なっている。

軽量・高剛性にボディを仕上げる高品位素材

アルミ合金はフロントサスタワーのほか、ボンネットフードとフロントフェンダーにも使用。重心から遠いところを軽量化することで、慣性諸元の向上を図っている。高張力鋼板も効果的に使用され、軽量、高剛性なボディが構築されている。

プリクラッシュセーフティが高性能化


カメラの性能とコンピューター処理能力の向上などにより、プリクラッシュセーフティの自動ブレーキの性能と機能が向上。昼間の自転車や夜間の歩行者が検知可能になった。作動に関しては、警報、制動力アシスト、自動ブレーキの3段階で衝突を回避、または被害を軽減する。

レーダークルーズコントロールの機能性が向上

ミリ波レーダーと単眼カメラによって先行車に追従するクルーズコントロール機能が完全停止にまで対応となり、渋滞時の利便性が向上。このほか、追い越し時にウインカーを操作すると加速度を増す機能も追加され、より快適に、より安全になった。

標識の見落としをサポート

前方カメラで「最高速度」「はみ出し通行禁止」「車両侵入禁止」「一時停止」と、4種類の道路標識を認識し、ディスプレイに表示。表示中に速度超過や追い越し操作を検出すると表示の点滅などで告知する。

新工法の多用により、高められたボディ剛性と静粛性

線レーザーではなく、レーザーの照射位置を渦巻き状に回転させ、円形のナゲットを形成するLSWの使用点数は88点。構造用接着剤はアッパーボディ、アンダーボディとも、振動減衰に効果のある部位に合計数十mに渡って使用している。

衝突時の安全性を高める


前面衝突時の衝突エネルギー吸収のため、入力荷重を複数の経路に分散するマルチロードパス構造を採用し、安全性を確保(左図)。また、側面のエネルギー吸収構造としては、ホットスタンプ材の採用によるキャビンの変形を抑制しつつ各方向にエネルギーを分散。

2.5ℓ直列4気筒ハイブリッド

最新のトレンドや技術が投入された2.5ℓエンジンは、カムリと同型のものを縦置きに変更して搭載。最大熱効率41%という高効率を誇り、ハイブリッドシステムとも好相性。新型クラウンの中核をなすエンジンだ。

エンジン型式:A25A-FXS
排気量(㏄):2487
種類・気筒数:直列4気筒+モーター
弁機構:DOHC16バルブ
ボア×ストローク(㎜):87.5×103.4
最高出力(kW[㎰]/rpm):135[184]/6000
最大トルク(Nm[㎏m]/rpm):221[22.5]/3800-5400
使用燃料:レギュラー
燃料タンク容量(ℓ):66
モーター形式:1KM
最高出力(kW[㎰]):105[143]
最大トルク(Nm[㎏m]):300[30.6]

新エンジンはTHSとの相性も良好

先代の2ARエンジンと比較すると高回転域の出力向上もさることながら、低回転域のトルクが大幅に増大されている。こういった大トルクエンジンはモーターの仕事を楽にしてくれるのでTHSとの相性が良く、加速性や燃費に好影響をもたらしてくれる。

レーザークラッドバルブシート

吸気側のバルブシートには通常の圧入式ではなくレーザークラッド工法を採用。圧入スペースが不要なので、理想的なストレートポートが構築できるので高い流速と指向性を持った空気流により、強いタンブル流の形成ができる。

マルチホイール直噴インジェクター

燃料噴射はD-4Sの最新版。直噴インジェクターの噴霧形状を、スリット型からマルチホール(6穴)に変更。強化したタンブル流と併用して混合気の均一化を図ると同時に、ハーフリフト制御によって多段噴射も実施。よりクリーンで効率の高い燃焼を実現している。

連続可変容量オイルポンプ

オイルポンプは連続可変容量型を採用。トロコイドポンプのアウターハウジングの偏心量を変えることで、エンジンの稼働状態に合わせた油圧を供給。無駄な仕事を廃して、機械損失の低減を行なっている。

ストレートポート&ロングストローク

A25A-FXSエンジンは、右上のレーザークラッドバルブシートの採用で可能となった吸気のストレートポートと行程×内径比1.2というロングストロークの組み合わせによる、強いタンブル流によって燃焼速度を高めている。

3.5ℓV型6気筒ハイブリッド

レクサスLS500hに搭載されているハイブリッドシステムを、クラウンのキャラクターに合わせてチューニング。変速の応答性やエンジン制御などでリズミカルな走りを提供する。

エンジン型式:8GR-FXS
排気量(㏄):3456
種類・気筒数:V型6気筒+モーター
弁機構:DOHC24バルブ
ボア×ストローク(㎜):94.0×83.0
最高出力(kW[㎰]/rpm):220[299]/6600
最大トルク(Nm[㎏m]/rpm):356[36.3]/5100
使用燃料:プレミアム
燃料タンク容量(ℓ):66
モーター型式:2NM
最高出力(kW[㎰]):132[180]
最大トルク(Nm[㎏m]):300[30.6]

トルク変動を抑制するトレランスリング

トルクコンバーターを持たないTHSⅡは、エンジンのトルク変動が伝わりやすい。しかもマルチステージハイブリッドは変速機構の追加でバックラッシュ要素が増えている。そこで、変速機構のバックラッシュを最小限に抑えたほか、MG2のシャフトには、スプラインのガタを吸収するトレランスリング(鋼製の筒)を挿入している。

トランスミッション冷却の強化


トルクコンバーターを持たないTHSⅡは、エンジンのトルク変動が伝わりやすい。しかもマルチステージハイブリッドは変速機構の追加でバックラッシュ要素が増えている。そこで、変速機構のバックラッシュを最小限に抑えたほか、MG2のシャフトには、スプラインのガタを吸収するトレランスリング(鋼製の筒)を挿入している。

2.0ℓ直列4気筒ターボエンジン

ターボエンジンに関してはハード面はそのまま継続搭載されるが、排気レイアウトの改善や、可変バルブタイミング機構の制御変更などにより最高出力が約10㎰向上されている。そのほかにも、フィーリングアップのためのファインチューニングが施された。

エンジン型式:8AR-FTS
排気量(㏄):1998
種類・気筒数直列:4気筒ターボ
弁機構DOHC:16バルブ
ボア×ストローク(㎜):86.0×86.0
最高出力(kW[㎰]/rpm):180[245]/5200-5800
最大トルク(Nm[㎏m]/rpm):350[35.7]/1650-4400
使用燃料:プレミアム
燃料タンク容量(ℓ):66

シリンダーヘッドの冷却

高圧縮比化には、冷却系の改良も貢献している。シリンダーヘッドの水流をサイドフロー方式とすることで、流量の増大と冷却の均等化によって耐ノック性を向上させた。ウォーターポンプは電動化されており、駆動損失もより小さくなっている。

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