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パンクしても走れるランフラットタイヤを考察する──安藤眞の『テクノロジーのすべて』第16弾

MotorFan / 2019年3月16日 16時35分

パンクしても走れるランフラットタイヤを考察する──安藤眞の『テクノロジーのすべて』第16弾

新型Cクラスの日本仕様はランフラットタイヤ仕様をほぼ廃した。いっぽうで、ランフラットタイヤの採用が早かったBMWは、新型3シリーズの登場に当たってもRFTの採用を続けている。あらためてこのタイヤの特性と得失を考えてみよう。 TEXT:安藤 眞(Ando Makoto)

ランフラットタイヤの効果を確かめた試験の様子。

 独Dセグメントセダンの両雄、メルセデス・ベンツCクラスと、BMW3シリーズが、相次いでモデルチェンジを行った。Cクラスは基本ボディには変更はなく、定義上はマイナーチェンジに当たるが、新パワーユニットの搭載など、6500部品に及ぶ改良を実施したとのこと。自動車1台の部品点数はおおむね1万〜2万点だから、半分から3分の1程度の部品を刷新していることになる。

 中でも興味を引かれたのは、ランフラットタイヤを事実上、廃止してしまったことだ。厳密に言えば、エントリーグレードのC180には残されているが、このグレードが受注生産車であることを考えると、実質的には「やめた」と言っても過言ではないだろう。
 理由は「パンクのリスクと乗り心地を秤にかけたら、日本市場ではメリットが少ない」と判断したからとのことで、日本向け仕様のみの特別対応だそうだ。

 一方で、BMW3シリーズは、ランフラットタイヤが標準装備されている。乗り心地については、「ランフラットタイヤでよくここまで仕上げたな」と感心するレベルではあるものの、やはり特有の硬さと重さを感じさせるシーンがあり、「普通のタイヤと乗り較べてみたいな」と思ったのもまた事実。そこで今回は、ランフラットタイヤの是非について、考察してみたい。


 念のためランフラットタイヤについて説明しておくと、サイドウォールをゴムで補強することによって、空気圧がゼロになっても、80km/hの速度で80km(ISO規格)以上走行できるタイヤのこと。通常タイヤのサイドウォールの厚さが数mmであるのに対し、1cm前後の厚さとすることで、走行可能な形状が維持できるように作られている。
 
 メリットとして挙げられるのは、①スペアタイヤが不要となるため、搭載スペースを別の用途(HV/EVのバッテリーやディーゼルの尿素水タンク置き場等)に使える、②スペアタイヤを運ぶ必要がない分、燃費に有利、③廃車時に新品同様のスペアタイヤを廃棄せずに済むから省資源、④パンクしても路上で修理する必要がないため、二次衝突のリスクや作業の負担がない、などが挙げられる。ただしこの中の4番以外は、応急修理剤でもほぼ代替できるから、ランフラットタイヤ固有のメリットは4番だけということになる。

 一方でデメリットとしては、①サイドウォールが硬くなるため、乗り心地が硬くなりがち、②回転部分の質量が増えるため、燃費に影響がある、③ランフラット走行したタイヤは再使用できない、④タイヤの単価が高い、⑤ディーラーやタイヤショップの営業時間でなければ対応してもらえないのに加え、在庫があるとは限らない(ディーラーやタイヤメーカーは在庫負担が増える)、などである。

ブリヂストンのランフラットタイヤのカットモデル。

 こうして考えてみると、意外とデメリットも多いことがわかる。

 特に日本のように、パンクする頻度がそもそも少なく(僕は36年60万km乗って2回だけ)、ディーラーやタイヤショップ、ガソリンスタンドの数も多く、JAFや任意保険の付帯サービスも充実している環境では、パンクしても途方に暮れるということはまずない。しかもチューブレスタイヤになって以来、釘程度の細いものが刺さっても、いきなりペチャンコにはならないから、乗り降りの際や走行音で気付くことも多い。空気圧センサーが付いているクルマなら、それが点灯した段階で対処しても間に合わないケースは希だろう。

 こうして考えてみると、少なくとも日本では、ランフラットタイヤを装着すべき積極的な理由は見当たらないように思える。空気圧の低下は、タイヤの回転数から検出できるから、追加のセンサーも必要ない。となれば、空気圧警告と修理キットという組み合わせ(Cクラス方式)が、日本においては合理的な選択ではないかと思われる。

 ちなみに修理キットを使用する場合、コンプレッサーで空気を入れるだけでも、ディーラーやガソリンスタンド程度までなら走れる可能性もある。修理液を入れると後始末が大変になるので、状況によっては、まず「空気だけ」を試してみると良い。

FIGURE:BRIDGESTONE

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