【48kg、6.5馬力】「スズキ Hi/Hi-R 1987」はDCブランドブームの先駆けだった……のか?【青春型録 第4回】
MotorFan / 2019年5月3日 10時0分
明石家さんまのCM 出演で強烈なインパクトを視聴者に与えた「スズキ・ハイ」。その軽妙でポップなイメージから一転、後期型は急激にオシャレ路線へと舵を切る。どピンクからやにわにモノトーンへ! 語り◉津田洋介/ TDF、まとめ◉宮崎正行
画期的に“軽薄”だったハイというスクーター
──色数、前期型に比べてだいぶん減りましたね。最初のハイはホイールにはじまりグリップやミラーまでピンクだらけでしたから。
津田 脱“バイクっぽさ”が徹底していたもんね。オシリもかわいかった。安っぽいという向きもありそうだけど、軽快さを表現していると思えば大成功じゃないかな。
──コンパクトなスクーターって、ヒップデザインが大事ですよね。いちばん見られる部分かも。それまでのスクーターは、カクカクしたデザインのものが多かったですか?
津田 直線基調のものが大半だったけど、新しいハイはカブトムシとかクワガタを思わせる昆虫みたいな“おしり”で愛らしかった。
──前後タイヤはハイもハイRも10インチでしたね。
津田 とくにハイRは車高が上がっていて、他の車種に比べてサスペンションのストロークが長くとられている。サスもリンク式だしね。ハイパワーでバンク角もかせげたから、走り屋にはずいぶん愛された。
──スクーターに対する“走り”のニーズは、今とは比較にならないくらい強かったですものね、80年代は。……って、今回はマジメにバイクについて語っていますね。なんだか息苦しくなってきた(笑)。
津田 じゃあいいよ、いつもみたいにフザけて。どうぞ。
──いいんですか?じゃあ小噺を。僕の昔の同僚が、職場のフロアーで風俗店の会員証を偶然拾ってしまったというんです。
津田 ほお。
──その会員証に書いてある名前は知らないんですが、その詰めがビミョーに甘くて偽名っぽい。つまり所有者を特定できてしまうというんです。たぶん同僚Sの持ち物だと。山田太郎が山川次郎、みたいな。
津田 なるほど。
──彼が会員証を拾ってからものの10分しないうちに、くだんの同僚が血相変えて社に戻ってきたらしいんです。夕刻すでに退社したにも関わらず、ちょっと大事な探し物が! という体で。額に脂汗をにじませて。
津田 うんうん。
──ここまでイジれる条件が揃ってしまうと、彼とてその千載一遇のチャンスを逃すわけにはいきません。ジャストなタイミングを見計らい……高らかにその会員証を上空にかざして叫びました。「探してるのって、コレですか!」。
津田 言ったあ(笑)。
──そしたらその同僚、すごい形相で会員証をひったくった刹那「これ、僕のトモダチのものなんです!」って言い放ったというんです。これ以上ないほどぎこちない笑顔で。その後の空気は察してください。
津田 察せるなあ。知人っていうか、下半身だね。たしかにトモダチといえば無二のトモダチ(笑)。
──で、その元同僚がいまでも乗っているのが……スズキ・ハイ。
津田 それってホント?
──ホントです。連想ゲーム的に思い出しました。
津田 うーん、なんだかシンミリしてきたよ。ハイは悪くないな。
──さて、軌道修正しましょうか。
津田 そうだね。
──黒×ピンクの鮮烈なイメージカラーでデビューした前期型ハイから一転、DCブランドブームなどとリンクしたのか、白×黒のモノトーンを身にまとった後期型ハイ。だいぶ落ち着いた感じですね。
津田 スズキはブームを取り込むのが早いからね。当時、サイドスタンドはよくオプション品になっていたけど、ハイRの社外スタンドは今でもニシモトで手に入ります。
──マニアックな情報ですねえ(笑)。
津田 前期がド派手カラーだったことを考えると、後期はかなり地味になった。脱さんま、ってことなのかな。種々あったレーシングカラー(ウォルターウルフやパーソンズ)からの揺り戻しもあるかも。
──ビビッドカラーも行くところまで行ったカンジでしたものね。
津田 新機軸としては、アンチノーズダイブ機構が備わっている。他にもハイグリップ扁平タイヤ、エアロブリスターフェンダー、アンダーカウル、リヤスポイラー……などなどさまざまな装備が充実していた。
──なんだかクルマの装備品っぽいネーミングばかり。
津田 そう、クルマへの憧憬というかコンプレックスは相当なもんだね。ところでブリスターってどんな意味だったっけ?
──調べると……英語で「水ぶくれ」って意味らしいです。
津田 あっそ。ウェイトは乾燥重量で48kgとかなり軽い。今じゃ絶対に実現できない数字だろうな。どんどん大きく重くなっているからね、今のスクーターは。
──そういえばコナウインズ仕様ってのもありましたね。懐かしい。
津田 このまえ、その新車が16万円で売りに出ていたよ。
──え! 高い!
津田 いやいや、新車だよ。そんなもんさ。いまやエイティーズスクーターはコレクターズアイテムだもん。
──津田さんの仲間たちが買うんですね。スクーター・フリークス。
津田 はっきり変態って言えばいいじゃん……いや、やっぱりコレクターって言って。おねがい。
──変態フリークスの津田さんは、当時レースをやっていたんですか?
津田 ……やってないよ。でも憧れはみんなにあった。だからスクーターでもスポーツ仕様が売れたしね。ベースモデルに対してのスポーツモデル、ハイの場合はハイR。
──DJ1R、チャンプRS、ハイR。どれがいちばん好きでしたか?
津田 チャンプRS!
──そこは「ハイR」って言ってほしかったなあ(笑)。
![](https://motor-fan.jp/images/articles/10008712/big_1244335_201903181613010000001.jpeg)
![](https://motor-fan.jp/images/articles/10008712/big_1244335_201903181613010000002.jpeg)
カラーリングを変えるだけでここまでイメージが変わってしまうのか! という見本のような後期型ハイを今回はピックアップした。2年後の1987年にフルモデルチェンジを受けるまでに様々なスペシャルカラーが販売されたが、このモノトーン仕様が最後っ屁となった。
![あまりのキャラ変をスズキも危惧したのか、旧カラーモデルもしっかりラインナップに残すといういささか及び腰のマイナーチェンジであった。それだけ前期型のインパクトは強烈だったのだ。](https://motor-fan.jp/images/articles/10008712/big_1244337_201903181614110000001.jpeg)
![「ハイパースクーター」を標榜して1985年12月に発売された初代ハイ(前期型)。テールアップデザインの“ハイヒップシェイプ”をはじめ、数々のエポックが盛り込まれた。エンジンは6.5psを発揮。](https://motor-fan.jp/images/articles/10008712/big_1244338_201903181614590000001.jpeg)
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