SKYACTIV-Dの登場以前、マツダのディーゼルはどうだったか
MotorFan / 2019年4月27日 17時40分
ディーゼルエンジンを日本市場で見事に復活させたマツダのSKYACTIV-D。しかしマツダのディーゼルエンジン技術はD 2.2でいきなり花開いたわけではなかった。欧州市場をにらみ技術を磨き続けていた同社が2008年に登場させたエンジンをご紹介しよう。 TEXT:近田 茂(Shigeru CHIKATA)
コモンレール方式を採用したMZR-CDは2003年に2ℓでデビュー。2008年に2.2ℓへ排気量を拡大のみならず多くを刷新した。パワートルクの拡大はもちろん、マツダの企業ポリシーであるzoom-zoomを表現するスロットルレスポンスを向上。さらに静粛性も格段に進化させた上に、燃費性能とクリーンな排出ガスも大きくレベルアップさせた。
改良のポイントは先代の2ℓに対して圧縮比を18.4から16.3に下げ燃焼室も一新。コモンレールの燃圧は1800〜2000barに高圧化された。タイミングベルトは耐久信頼性を重視してチェーン駆動に変更。シリンダーブロックもクランクのロワーケースを超硬アルミ合金化し、リブデザインの一新などで剛性が高められている。主にディーゼル特有のこもり音対策だが、ロワーブロック下方に平行する2軸バランサーシャフトを新設した点も見逃せない特徴である。
燃焼(着火)時の筒内圧力の高まりを穏やかにするため昨今のディーゼルエンジンは圧縮比が下げられる傾向にあるのはSKYACTIV-D 2.2の登場以降すっかり一般的になったが、NOXやPMを低減させるのも重要な狙いのひとつである。それも過給やインジェクターの進化、そして何よりも統合的な制御技術の進化がその背景にあってこそ成立する。MZR-CD 2.2はエンジンブロック自体の剛性を高くし、さらに二次振動を大幅に低減するバランサーの装備で、ディーゼル独特の気になる振動や騒音の発生を低減した。
また噴射制御技術は最大6回のマルチ噴射に加え、使用状況に応じて2度のパイロット噴射とメイン、さらに後噴射を加えた最大4段の噴射制御を行なっている。クーラー付きEGRシステムも状況に応じてクーラーを経ないバイパスバルブが設けられ、冷機時も含めて幅広くパワーと排出ガスの両立が図られた。さらに新開発された世界初のDPFシステムを採用。再生燃焼処理の頻度を減らすことで、ポスト噴射による燃料ロスの頻度を減らし、燃費率向上も果たしている。なおエンジン重量は軽量化努力により6kg増にとどめられた。
型式 MZR-CD 2.2
エンジンタイプ 直列4気筒DOHC16V+VGターボ
シリンダーブロック材質 鋳鉄+アルミ製ロワーブロック
総排気量(cc) 2183
圧縮比 16.3
ボア×ストローク(mm) 86.0×94.0
最高出力(kW[ps]/rpm) 136[185]
最大トルク(Nm/rpm) 400
燃料供給装置 デンソー製3rdGENソレノイド式コモンレール2000bar
CO2(g/km) -
搭載車両 アテンザ(欧州仕様)
トランスミッション MT
エミッション・コントロール EU5
(以下は、2008年当時のSKYACTIV-Dの開発状況)
2011年からグローバル展開を目指している次世代クリーンディーゼル。さらに厳しくなる排出ガス規制への適応はもちろん、燃費性能の20%向上を目指している。同年、マツダは新型オートマチックミッションの導入も計画している。まだ開発途上だが、ピエゾ式インジェクターの採用や、後処理には尿素水を使用した選択式還元触媒やNOx吸蔵還元触媒システムの使用などが研究されている。より高圧な燃料噴射と緻密な制御技術の進化も相まって、クリーンディーゼルの性能はさらに向上する。
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