登場が早過ぎた? 世界初・直噴ターボエンジンの栄誉:三菱4G93ターボ
MotorFan / 2019年5月3日 0時5分
直噴エンジンといえば三菱自動車、そしてGDIの愛称である。さまざまな要因により表舞台から姿を消してしまったが、当時の直噴ブームのなかにあっては非常に意欲的なエンジンであった。
4G93-GDI(1996):世界初の直噴エンジン
GDI!GDI!G!D!I!のかけ声も勇ましいCMが懐かしい。直噴エンジンとしてはメルセデスのレーシングカーが最初とされているが、個人的には市販車に投入されて登場を果たした三菱自動車の4G93型GDIを世界初としたい。4G93-GDIは直噴技術を用いることで低燃費モードと高出力モードを都度切り替え、環境性能とパフォーマンスを両立していたのが特長だった。
低燃費モードとは「圧縮行程の後期にコンパクトな球状の霧として噴射、層状混合によって安定した超希薄燃焼を実現」、高出力モードとは「吸気行程でコーン状に燃料を噴射、均一混合によるハイレスポンス・ハイパワーを実現」する運転(「」内は自動車技術会:日本の自動車技術330選より引用)。
もう少し噛み砕いて説明すれば、低燃費モードでは着火寸前に点火プラグ近傍にのみ燃料をコンパクトに噴射して着火、そのエリアはリッチ環境だが燃焼室全体で見ればリーン環境となり、結果として超希薄燃焼を実現するという技術である。高出力モードは、吸気行程で新気が筒内に急速に流入するシーンで燃料を噴射することで良質なストイキオメトリック混合気を醸成、早期の火炎伝播と良好な燃焼圧力を得るという運転。筒内に直接噴射できるからこそ、ふたつの異なる混合気のあり方を自在にコントロールできていた。圧縮比は10.5と、当時のPFIエンジンに対しておよそ「1」の向上。なお、可変バルブタイミング機構は備えていない。
しかし、昨今のGPF(ガソリン・パーティキュレート・フィルター)装着の報せが聞こえ始めたことからもおわかりのように、現在の技術をもってしてもなお直噴には「すす」の発生が不可避。ましてリーンバーンともなればNOx(窒素酸化物)の発生は避けられず、規制対応もままならないことから4G93-GDIは途中退場を余儀なくされた。市場から寄せられる評判が、三菱自動車がアナウンスした燃費性能に届いていなかったことも理由のひとつに挙げられた。
![三菱自動車の4G93-GDI。世界初の直噴エンジン——と言いたい。](https://motor-fan.jp/images/articles/10009435/big_1288997_201905021805350000001.jpg)
【4G93-GDI】
エンジン形式 直列4気筒
内径×行程 81.0×89.0mm
総排気量 1834cc
圧縮比 10.5
最高出力 66kW/5250rpm *ネット出力
最大トルク 133Nm/3750rpm
燃料供給装置 DI
給気方式 NA
バルブトレイン DOHC
バルブ駆動方式 スイングアーム
吸気弁/排気弁数 2/2
![GDIの概念図。ピストン冠面はボウル形状としてあり、直立した吸気ポートからの吸入新気と直接噴射した燃料がそこで渦を巻く、つまりタンブルを形成するような構造としていた。噴射圧力は5MPa。(FIGURE:MITSUBISHI MOTORS)](https://motor-fan.jp/images/articles/10009435/big_1288999_201905021956010000001.jpg)
![2000年には排気量を拡大した4G94-GDIが登場。4G93の81×89mmに対してボア81.5×ストローク95.8mmと、拡大/伸長している。圧縮比はさらに高めて11に。噴射圧力も7MPaとしていた。](https://motor-fan.jp/images/articles/10009435/big_1289000_201905022053540000001.jpg)
【4G94-GDI】
エンジン形式 直列4気筒
内径×行程 81.5×95.8mm
総排気量 1999cc
圧縮比 11.0
最高出力 100kW/5250rpm *ネット出力
最大トルク 191Nm/3500rpm
燃料供給装置 DI
給気方式 NA
バルブトレイン DOHC
バルブ駆動方式 スイングアーム
吸気弁/排気弁数 2/2
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