トヨタ・プリウス、熱効率40%への道程(下)EGR、燃焼室、そして……
MotorFan / 2019年5月11日 10時45分
4代目プリウスに搭載された2ZR-FXE。世界で初めて最大熱効率40%を達成した量産ガソリンエンジンである。しかもトヨタ方式のHEVは効率の高い領域を多用する運転だから、受け取る燃費効果は大きくなる。 TEXT:牧野茂雄(Shigeo MAKINO)
「いちばんの功績はEGRです。EGR量を従来の15%から25%へと拡大しました。熱効率に大きく寄与したのはEGRです」
吸気マニフォールドを見せていただいた。素材はガラス繊維30%混入のPA(ポリアミド)だ。分解すると内部にEGR通路がある。さらにそのEGR通路を分解すると、まるでエンジンの排気管のように4-2-1になっていた。
「気筒ごとのEGR量のばらつきを抑えるため、このようなトーナメント型の通路設計にしました。通路を構成する樹脂部品の組み立ては振動による溶着です。水冷式のEGRクーラーを使うためEGRガスの温度は水温と同じ程度まで下がっており、通路は耐熱温度120°CのPAで十分です」
吸気マニフォールドの気筒ごとの出口にEGR通路が見える。その通路出口の形状も気筒ごとに違う。
「出口形状もチューニングしました。気筒ごとに均一なEGR流量を確保できたことで、EGRガスが少ない気筒でノッキングが起きることを回避しています。ノッキングが起きてしまい、その対策で遅角させるということがなくなりました」
通路形状はCFD解析で決めたのかと思ったら、すぐさま否定された。
「解析だけではできませんでした。試作してみると結果が違うのです。最後は粘土で現物を作って確認しました」
そう。エンジン開発の現場では、CFDが進化した現在でも必ずアナログ手法が用いられる。解析は万能ではない。答えに近づけてはくれるが、最後に答えを見つけるのはエンジニアの知見である。2ZR-FXEでは最大EGR量を従来の約1.6倍にできたことが今回の熱効率40%へのもっとも大きなジャンプだったと言う。ちなみに、今回は三元触媒を通過した排気をEGRに使用しており、EGR配管内にデポジットがたまることを回避している。
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