中国におけるコピー車敗訴の、本当の理由:米国という虎の尾を踏んでしまった中国
MotorFan / 2019年5月15日 0時0分
中国の司法当局が初めて自動車デザインの盗用を認めた。陸風汽車のSUV「X7」を提訴していたジャガー・ランドローバーの主張が認められ、同社は製造販売の停止を命じられた。中国企業によるデザイン盗用問題では過去、海外の自動車メーカーの主張がことごとく退けられてきた。知的財産権などないに等しかった中国になにが起きたのだろうか。 TEXT@牧野茂雄(Shigeo MAKINO)
「これは私も恥ずかしいです」と、旧知の中国メディア記者は陸風X7を見ながら私にこう言った。「最近、こういうあからさまな模倣はめっきり減ったのですが……」と彼。2015年4月、オート上海(上海モーターショー)会場での出来事だった。陸風汽車がX7を披露したのは14年11月の広州モーターショーであり、上海へやって来たのはそのときが初めてだった。どこから見ても姿形はレンジローバー・イヴォークである。発表された小売価格はイヴォークの約3分の1だった。
15年の中国はSUVブームの真っ只中だった。この年、中国ではわずか1年間で622万台のSUVが売れた。SUVが売れ始めたのは12年であり、初めて年間200万台の大台乗った。それからの勢いは凄まじく、2年後には400万台、さらに2年後には年間900万台となり、米国を抜き世界最大のSUV需要国になった。この間にモデル数は増え続け、非国営ではSUVを得意とする長城汽車と、国営では吉普(ジープ)名称の中国での使用権を持つ北京汽車を先頭に、SUVの新型車は年間50モデルを数えるようになった。
ジャガー・ランドローバー(以下JLR)が中国の奇瑞汽車との間で合弁生産について契約したのは12年。江蘇省の工場は14年に完成した。インドのタタ財閥が支配するJLRと、中国政府が「自動車産業再編の中核企業」と認めた優良私企業による合弁工場は、最初の生産車であるレンジローバー・イヴォークの出荷を14年中に開始した。しかし、同じ年に陸風汽車はイヴォークのフルコピー車X7を発売したため、JLRはすぐさま陸風汽車を提訴する準備を開始した。中国では「12年に奇瑞とJLRの合弁契約が結ばれたあとにイヴォークの設計データが流出した」と言われているが、真偽のほどは定かではない。
そもそも中国の自動車産業は、旧ソ連の自動車メーカーだったジルの支援で1953年にまず国営第一汽車が立ち上がり、58年に上海汽車、69年には第二汽車(現在の東風汽車)が誕生した。やがて旧ソ連の影響を色濃く残すのは第一汽車の「紅旗」ブランドだけになり、上海汽車がVW(フォルクスワーゲン)と合弁会社を84年に設立して以降は日米欧の自動車メーカーが中国企業との合弁設立または技術支援を行なうようになった。自動車技術のすべてが海外からの輸入であり、先達の模倣も当然の手段だったといえる。
そんな中国の自動車産業に変化が訪れたのは2002年ごろだった。中国企業が海外モデルのリバースエンジニアリングデータを販売するようになり、これをもとにコピーが流行した。ボディ外観を精密な計測機で寸法測定し、ボディを中心線で切断して分解し、内部のパネルも採寸し、場合によっては鋼板の強度測定や接合方法の検証も行なうという精密コピー作業によって得られたデータは、そのままCADデータとして設計に利用された。
もともと精密リバースエンジニアリングは日欧米で発展した。ライバル社の実力を知るための戦力分析手法である。中国のエンジニアリング会社はそれを真似たに過ぎない。同時に欧米系エンジニアリング会社も中国で設計データの販売を始めた。21世紀に入ってからの中国製コピー車は、それまでのアナログ的コピーとは別次元の精巧なデジタルコピーであり、素材の選択と接合方法さえ間違えなければボディ性能もほぼまるごとコピーできる。
もっとも、中国の自動車メーカーは精巧なデジタルコピーが可能になる前から、あの手この手で模倣を行なっていた。いわば伝統である。当然、真似された側の海外自動車メーカーは提訴という手段に出る。しかし、中国では勝訴できなかった。いくつかの例を紹介しよう。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
中国「奇瑞汽車」、スペインで自動車を現地生産へ 日産の旧工場を買収し、欧州進出の橋頭堡に
東洋経済オンライン / 2024年5月10日 16時0分
-
中国の奇瑞汽車、バルセロナでEVを共同生産へ(スペイン、中国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年4月26日 1時40分
-
中国奇瑞汽車、バルセロナ合弁工場を世界輸出拠点に
ロイター / 2024年4月22日 13時35分
-
中国「広汽集団」、三菱自の撤退で約600億円減損 独自ブランドの好調と合弁会社の苦戦に落差
東洋経済オンライン / 2024年4月17日 17時0分
-
中国の新エネ乗用車販売台数は2024年に1000万台を突破へ、CINNO Research予測
マイナビニュース / 2024年4月15日 6時30分
ランキング
-
1「歩くスピードが遅くなる」は認知機能低下のサイン【第一人者が教える 認知症のすべて】
日刊ゲンダイ ヘルスケア / 2024年5月14日 9時26分
-
2作業服の男がコンビニ店内に“ありえないゴミ”を置き去りに。店員が困惑した客の行動
日刊SPA! / 2024年5月14日 15時54分
-
33500万円! 日産が新型「GT-R」実車展示! 存在感スゴい「最強仕様」がNYに登場! 進化した「新デザイン」採用に反響あり
くるまのニュース / 2024年5月13日 21時10分
-
4プロント、漂白剤入りの水提供 → 体調不良者が発生 「多大なる苦痛とご迷惑」と謝罪
ねとらぼ / 2024年5月13日 17時25分
-
5ポイ活でひと月に1万円以上稼げる…?おすすめのポイントサイトランキング【200人に聞いた】
まいどなニュース / 2024年5月13日 19時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください