日産が初めて開発した軽自動車へ投入されたクラスの標準を超える技術の数々
MotorFan / 2019年5月28日 20時40分
激しいシェア争いが続くハイトワゴン系軽自動車のカテゴリーに、満を持して投入された新型デイズ。厳格な軽自動車規格のなかで競合モデルを上回る性能を実現するためには、以前の軽では考えられないメカニズムがどうしても必要だった。 TEXT:高橋一平(Ippey TAKAHASHI)/MFI PHOTO&FIGURE:NISSAN/MFI
”ユーザーが不満と感じる要素を一切なくす”という目標実現のための方策
ステアリングを切り込んだ瞬間から、その違いは明らかだった。「軽自動車らしからぬ」という表現は、もはや言い尽くされたフレーズとなっているが、新型デイズの第一印象はまさにこれ。そしてステアリングの話題から始めたものの、実は最初に「おっ」と思わされたのは発進時のトルク感。今回は自然呼気とターボの2台に試乗したのだが、とにかく印象的だったのが自然呼気エンジンだ。踏み込んでいった時のトルク感はもちろんターボのほうが上なのだが、自然呼気の発進時、特にタイヤが転がり始める時の力強さは特筆に値するもので、坂道でもトルク不足を感じることなくグイグイ登っていく。
聞けばトルクコンバーターの(トルク)増幅比を高めたことが大きく効いているとのこと。言うのは簡単だが、コンパクト化への要求から薄型化が進むなかで、この部分の性能を向上させるのは容易なことではない。最新世代の流体設計技術が用いられた結果だろう。
さて、ここからが本題、ステアリングである。正確にはEPS(電動パワーステアリング)についてなのだが、中立付近からわずかに舵を入れた時の、アシストトルクの立ち上がりかたが絶妙なのだ。無駄な遊びようのない精緻なメカニズムを操作しているかのような、しっとりしたタッチで、微舵操作がフロントタイヤに確実に伝わる感覚。ほんのわずかにステアリングに操舵力を加え、(ステアリング外周部で)数ミリだけ動かそうという操作にも、微妙に立ち上がるアシストトルクが極めて自然に後押ししてくれる。かといって反応が過敏なわけでもない。よくできたEPSの評価はみな似てくるもので、これもどこかで聞いたことのあるような話だが、それだけデイズのEPSはよくできている。登録車と比べても遜色ないどころか、かなり秀逸な部類に入るレベルだ。
好印象の後ろ盾となっているのが、パワーアシスト用のモーターだ。セレナやエクストレイルなどと同等のブラシレスモーターが採用されているのだが、そもそもは軽自動車初であるレベル2の自動運転技術、プロパイロットに対応するためだった。必要とされるステアリング角度センサーの分解能を得るために、もともとインバーターの制御に使う高角度分解能を持つレゾルバ(角度センサー)としての機能を備えるブラシレスモーターが必要不可欠だったのだ。その角度分解能は一般的な軽自動車用EPSのおよそ8倍。結果としてこの分解能がEPS制御にも生かされることとなり、飛躍的ともいえるレベルのきめ細やかな制御が可能となった。
ステアリングのフィーリングが良くなると、操縦性安定性にも好影響を及ぼすわけだが、シャシーまわりにもこのEPSの効果をさらに引き出すべく、サスペンションのストロークにともなうトー変化の抑制や、取り付け剛性の向上など、さまざまな工夫が盛り込まれた。なかでも特筆すべきはライントレース性で、路面のうねりなどの外乱を受けても影響は最小限。これなら長距離移動少ないはずで、ファーストカーとしての使用にも充分耐えうるはずだ。
ホイールベースを大幅拡大
ブラシレスモーターの採用
登録車並みの静粛性を目指したパワーとレーン
トルクアップにより発進加速性能が大幅に向上
軽自動車専用設計のコンパクトなCVT
アシスト時間を増したS-ハイブリッドシステム
エンジンマウントは高価な液封プッシュ!
内部に封入された液体が、複数の流体室を行き来することで振動を低減させるブッシュを、エンジンマウントの右側に使う。コンパクトカーなどではまず見ない部品だが、競争の激しい軽自動車ではじつは多くのモデルが採用している。またCVT上部に金属製のバーが装着されているが(写真)、これも振動/静音に大きく貢献。
形式が変更されたリヤサスペンション
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