トラッカー? クルーザー? インディアン・FTR1200に乗ってその正体を確かめた。
MotorFan / 2019年6月2日 15時30分
本格フラットトラックレーサーのいで立ちでありながら、公道仕様車であるというのがバイク好きを惹きつける。モータージャーナリストの和歌山利宏氏が、インディアンモーターサイクルの本拠地アメリカにてFTR 1200に乗った。 REPORT●和歌山利宏
FTR1200……1,899,000円
FTR1200S……2,099,000円
インディアンによると、新しいFTR1200の位置づけは、“ニューアメリカンスタンダード”であるという。アメリカンという言葉からはクルーザー系を連想してしまいそうだが、そうでないことは明らかだ。
アメリカには、伝統的なバイクスポーツにフラットトラックレースがある。そのトラッカーマシンのスタイリングを具現化し、アメリカンたるを表現するのみならず、トラッカーが持つ多様なコンディション下におけるコントロール性を注入することで、“新世代標準形”を提唱しようというのか。
そうすれば、昨今の多くのバイクが忘れている多様性や懐の深さを取り戻すことができるのでないか。FTR1200への試乗を終えた今、そんな思いに駆られてしまう。
インディアンはワークストラッカーFTR750を開発、2017年、64年ぶりにフラットトラックレースに復帰、2年連続でタイトル獲得という快挙を成し遂げている。ブランディング活動の一環ともなるワークス参戦計画と、アメリカンスタンダードを提唱する市販FTRプロジェクトは、2016年初頭のほぼ同時期に始まっていたというから、そうしたビジョンにも納得させられる。
フラットトラッカーとしてのFTR750レプリカを望む向きもあったと思う。しかし、それは決して一般向きにはならない。多くの人に向けての新世代標準形を目指し、それに相応しい多様性とエモーショナルさを求めるとなると、スポーツVツインとして最大排気量級となる1200ccクラスが妥当である。
そうして、ここに、スカウト用V4ユニットからパワーソース部を流用した新設計エンジンを、トラスフレームに搭載したFTR1200の登場となったのである。
跨ると、ハンドルはやや広めで、マシンを抑え込みやすいスポーティな印象である。上体が起きているにも関わらず、ハンドル位置をさほど高いとは感じず、積極的に攻め込みやすそうなのは、やはりフラットトラッカー譲りなのだろうか。いずれにせよ、日常域でスポーツできる標準形に相応しいライポジだ。
足着き性はアドベンチャー並みで、決して良くはない。ただ、ここで強調しておかなければならないのは、停止時の車体が安定しているうえにバランスも取りやすく、足着き時の不安感が極めて少ないことである。
燃料タンクをタンクカバー後部からシート下に配置し、低重心化とマスの集中化が図られた効果が大きいのだろう。また、車体がスリムで身体のバランス取りの動きを妨げないことも好印象だ。それに、身長161cmの私でも跨ったままのサイドスタンド操作が可能だし、ハンドル切れ角がネイキッドモデルとして大きめなこともバランス取りを助けてくれる。シートの高さは十分に補われているのだ。
発進していくと、ますますホッとした気分にさせられる。ビッグVツインにありがちなゴツゴツ感がなく、マイルドでスムーズで、粘りもあるからだ。しかも、低回転域からのトルクフルぶりときたら、クルーザーを思わせる。と書くと鈍重なイメージもあるが、そうではない。トルクの厚さゆえにキビキビと走れるし、味わいもあるということだ。
そして圧巻は、ワインディングロードでのコーナリングだ。スペックからしても、ホイールベースが1524mmで前後輪19/18インチの車体は、それらが1400mm少々で前後17インチの純粋なロードスポーツほどに良く曲がるわけではない。でも、苦手とは一切感じさせないのだ。
あくまでも素直で、ニュートラル性を維持。マシンの旋回性能に気後れすることなく、自身の意思で曲げていくことができる。だからこそ、スポーティにコーナリングを楽しむことができる。しかも、150mmという大きめ前後サスストロークと大径ホイールのおかげで、荒れた路面でも抜群の走破性を見せてくれる。まさにサーキット指向ではない公道向きのハンドリングだ。
もし、このFTR1200をあえてカテゴリー付けするなら、ビッグVツインネイキッドとするのが適当かもしれない。しかし、フラットトラッカーのエッセンスが投入されたことで、無類のオールマイティさを発揮してくれる。クルーザーのエモーショナルさと走りの優雅さ、アドベンチャーツアラーの快適さと懐の深さ、ストリートスクランブラーの機敏性とスポーツ心を併せ持ったロードスポーツなのである。
外部リンク
- ♯1 生粋のスーパースポーツでの街乗りは苦か楽か……Ninja ZX-10R SEで出かけてみた。/カワサキ
- ♯2 「これなら思い切って攻めても大丈夫」Ninja ZX-10R SEは、安心をもたらす絶対的な存在だ。/カワサキ・サーキットインプレ
- 一番お得なハーレーはコレ!? 理由はわずか3分、工具無しでカウル&サイドケース着脱できる→1台で2つのスタイルを味わえるから。【H-D スポーツグライド試乗】
- モトブロガー「ANTI BCSC」、「ほねきち」の出演決定で、今年の鈴鹿8耐は 若年層もお得に楽しめる!
- 【5分でわかる最新ハーレーダビッドソン事情・ソフテイル編】シャシーとエンジンを大刷新した注目ファミリーを再検証してみた
この記事に関連するニュース
-
「縦置きエンジン」ってナニ? どこが「タテ」なの?
バイクのニュース / 2024年9月13日 11時10分
-
さらに軽量スリムでトラコンも搭載! 日本専用設定のヤマハ新型「YZ250FX」は技量を問わず有利!!
バイクのニュース / 2024年9月11日 12時10分
-
どのバイクが好き? BMWモトラッドが「R12」のカスタム車4台を公開!
マイナビニュース / 2024年9月6日 11時40分
-
東京・渋谷発 eバイクブランド「ROCKA FLAME(ロカフレーム)」2024年モデル「NEW MAKAMI/NEW FUMA」を販売中
PR TIMES / 2024年8月28日 17時15分
-
【スズキ Vストローム250 試乗】もはやアドベンチャーの定番! 250ccにオールマイティーさを求めるならコレ…佐川健太郎
レスポンス / 2024年8月27日 20時0分
ランキング
-
1「高くても低くてもダメ」血糖値の正しい整え方 人格破綻まで招きかねない「低血糖」の恐怖
東洋経済オンライン / 2024年9月23日 17時0分
-
2どんな時にスマホを買い替える? 3位スペック不足を感じた時、2位故障した時…1位は?
まいどなニュース / 2024年9月23日 16時0分
-
3健康診断の数値が改善する7つの習慣とは…いわき市で糖尿病の専門医師が解説・福島県
福島中央テレビニュース / 2024年9月23日 14時31分
-
4痛くて腕が上がらない…【医師監修】五十肩という思い込みには要注意!痛みの原因と病状セルフチェック
ハルメク365 / 2024年9月23日 11時50分
-
5コーヒーよりもはるかに効果的…88歳医師が「長生きしたいならこれを飲むべき」と強く勧める"飲み物"
プレジデントオンライン / 2024年9月23日 15時15分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください