BMW M850i xDrive Cabriolet
MotorFan / 2019年6月16日 9時0分
BMWの新時代フラッグシップ・クーペとして復活した8シリーズ。この手のクルマにオープンボディを用意するのはプレミアムブランドではもはやお約束だ。優雅なソフトトップを纏って登場したカブリオレ、その味わいはいかに。 REPORT◉渡辺敏史(WATANABE Toshifumi) PHOTO◉BMW AG ※本記事は『GENROQ』2019年6月号の記事を再編集・再構成したものです。
![屋根がなくなることで、8シリーズの低く、ワイドなフォルムがさらに強調された。ラゲッジスペースは350ℓの容量を持つ。](https://motor-fan.jp/images/articles/10009888/big_1430130_201906031117520000001.jpeg)
ラグジュアリークーペのカテゴリーを支える最大市場といえばアメリカ。彼の地ではオープンボディの人気が高く、8シリーズの実質的な先代にあたる6シリーズでは販売の半数以上がカブリオレだったという。言い換えれば8シリーズは、このオープンモデルの追加によって、いよいよ本格的な販売体制が整ったというわけだ。
![](https://motor-fan.jp/images/articles/10009888/big_1430132_201906031127410000001.jpeg)
8シリーズカブリオレのサイズは6シリーズカブリオレに対して40mmと、僅かながら全長が短くなっている。あわせてホイールベースも35mm短い2820mm。全幅は1900mmと、ほぼ変わりはない。ルーフシステムは50㎞/h以下の走行時もボタンひとつで開閉が可能で、その所要時間は約15秒と大ぶりな幌屋根を折り畳むモデルとしては相当に早い部類に入るだろう。四層の天井部にハードボードを織り込んだ幌屋根は縫い目も丁寧に織り込まれており質感は高い。その形状はさながらトンネルバックのようだった6シリーズのそれから、オーソドックスなシェイプへと改められた。
クローズ時はノッチバッククーペ的なシルエットとなり、ファストバック的なシルエットを採る先出のハードトップとは異なるイメージを表している。トランク容量はクローズ時350ℓ、オープン時280ℓと屋根の開閉状況によって異なるも、ハードトップの420ℓに対して著しい変化はなく、トランクスルー機能も備えるなど実用性には十分に配慮されているといえるだろう。後席はさすがに成人男性向きとはいえないが、女性や子供が短時間座るぶんには問題ない。この辺りは先代も同様だ。
![4人分のスペースが確保されるインテリア。シートの形状はクーペと同じだが、首元にエアコン吹き出し口が追加された。](https://motor-fan.jp/images/articles/10009888/big_1430134_201906031128330000001.jpeg)
![](https://motor-fan.jp/images/articles/10009888/big_1430134_201906031128330000002.jpeg)
パワー&ドライブトレインのラインナップはハードトップと同様で、4.4ℓV8ツインターボのM850iと、3.0ℓ直6ターボディーゼルの840d、2つのバリエーションが用意される。駆動方式は共にxドライブすなわち四駆を採用。トランスミッションは8速ATが組み合わせられる。日本市場に投入されるM850iは530psのパワーと750Nmのトルクを発揮。0→100㎞/h加速は3.9秒とクーペに対して0.2秒遅いが、それでもカテゴリーベストの瞬発力を備えることは間違いない。フットワークに関しても日本仕様は電子制御アクティブスタビライザーを加えたアダプティブMサスペンション・プロフェッショナルや、Mアクティブデファレンシャルなど、フルスペックで固められる。その他の装備面についてもB&Wのダイアモンドサウンド・サラウンドシステムやクラフテッドクリスタル・シフトノブなどラグジュアリーアイテムが網羅されている。
アルミ材置換を進めつつ、カーボン材を構造部に用いるなどした最新のCLARアーキテクチャーの採用で軽量化が果たされているとはいえ、8シリーズカブリオレの重量は日本仕様の発表数値で2120kgと決して軽いクルマではない。が、V8ユニットはその重さをまったく気にさせないほどのトルクをなみなみと発する。アクセルに薄く足を乗せているようなドライブでも、力加減で思いのままに反応するなど、タウンスピードで速度をコントロールするにしても、その柔軟さに不満はない。
![幌を閉じると、クーペとはまた違った表情を見せてくれる。50㎞/h以下であれば開閉可能で、フルオープンに要する時間は15秒だ。](https://motor-fan.jp/images/articles/10009888/big_1430136_201906031127160000001.jpeg)
アクセルを踏み込めば6000rpmオーバーまでパワーがタレる感もなくスキッと吹け上がるV8ユニットは、やはりこのクルマの核たるものだろう。フルスロットル時の速さは相当なもので、さすがに四駆をデフォルトとする設定にも納得がいく。操舵フィールは嫌な粘りや引っ掛かりもなく終始軽やかですっきりとしているものの、必要なインフォメーションはしっかりと伝わってくる。この辺りの調律は大型クーペづくりの手練ぶりをうかがわせる。
![4.4ℓのV8ツインターボは1800rpmで750Nmのトルクを発揮し、2tを超えるボディを恐ろしい速さで走らせる。](https://motor-fan.jp/images/articles/10009888/big_1430138_201906031129120000001.jpeg)
ワインディングでの手応えはさすがにサーキットスピードをタフにこなす潜在力を備えたハードトップの側には至らずとも、その味落ちは僅かなものだ。僅かといえば幌屋根の開け閉めによるフィーリングの差も無視できるレベルといって差し支えはないだろう。もちろんダッシュボード周りのスカットルシェイクやフロアの震えなど、屋根開き起因の低級な振動とは無縁だ。モードをスポーツやスポーツプラスの側にすれば、応答性は一気に高まり、タイトなコーナーでもアクティブデフを効かせながらすいすいと回頭させることも造作ない。スポーティネスの向上という8シリーズの主旨はきっちり踏襲され、ともあれ車格や重量からは想像できないほど軽快な印象だ。
街中も高速も、山も海もと、ドライブのあらゆるシーンを心地よく結ぶ最高のリラクゼーションカー。8シリーズカブリオレは映える場面を選ばないスペシャリティモデルとしてここ日本でもクルマ好きの気を惹く存在となるだろう。
BMW M850i xDrive カブリオレ
■ボディサイズ:全長4855×全幅1900×全高1345㎜ ホイールベース:2820㎜
■車両重量:2120㎏
■エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ 総排気量:4394㏄ 最高出力:390kW(530㎰)/5500rpm 最大トルク:750Nm(76.5㎏m)/1800~4600rpm
■トランスミッション:8速AT
■駆動方式:AWD
■サスペンション形式:Ⓕダブルウイッシュボーン Ⓡマルチリンク
■ブレーキ:Ⓕ&Ⓡベンチレーテッドディスク
■タイヤサイズ(リム幅):Ⓕ245/35R20(8J) Ⓡ275/30R20(9J)
■パフォーマンス 最高速度:250㎞/h(リミッター作動) 0→100㎞/h加速:3.9秒 燃料消費率(JC08モード):9.3㎞/ℓ CO2排出量:229~225g/㎞
■車両価格:1838万円
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