Volvo XC90 D5 AWD試乗記
MotorFan / 2019年7月19日 17時0分
ボルボのフラッグシップSUV、XC90に新たにD5ディーゼルが搭載された。極低回転域で圧縮エアをターボに送り込む機構によって発進時のもたつきを解消。力強い走りと北欧デザインのセンスが光るラグジュアリーSUVの誕生である。 REPORT◉山崎元裕(YAMAZAKI Motohiro) PHOTO◉篠原晃一(SHINOHARA Koichi) ※本記事は『GENROQ』2019年7月号の記事を再編集・再構成したものです。
![XC90は現在のボルボデザインを最初に纏って登場したモデル。デビューからすでに4年が経過しているがまったく古さを感じさせない。](https://motor-fan.jp/images/articles/10010212/big_1560806_201906201435170000001.jpeg)
ボルボの最上級SUV、XC90のラインナップに、ディーゼルエンジンを搭載する「XC90D5」が追加された。すでに発表されているとおり、ボルボは今後プロダクションモデルに搭載されるエンジンを2.0ℓ以下とすることを発表しており、このD5に搭載されるのも、2.0ℓの直列4気筒ディーゼルエンジンだ。最高出力と最大トルクは、それぞれ235㎰、480Nm。車重が2000㎏を超える重量級のSUVだけに、このディーゼルエンジンが、果たしてどのような走りを披露してくれるのかは、いわゆるユーザー予備軍には非常に気になるところだろう。
SUVとしての基本的な性能は、このD5も他グレードのXC90と変わるところはない。セカンドシートの後方にはさらにサードシートが収納されており、必要時にはそれを引き出すことで、最大7名でのドライブが可能になるのは嬉しい。インテリアはソフトで上質な感触のレザーや、流木にインスピレーションを得たというウッドパネルで美しく仕上げられている。これもまたライバルのSUVとは異なる、XC90に独特なフィニッシュだ。センターコンソールには大型のタッチスクリーンが備わり、ここからナビゲーションやエアコン、オーディオなどさまざまな装備を操作することができるが、最初にこれが導入された頃と比較すると、すでに直感的にその操作ができるようになった自分自身に驚かされた。
![低回転域でのターボラグを解消するパワーパルスを搭載。発進時から力強いトルクで2tを超えるボディを軽々と走らせる。](https://motor-fan.jp/images/articles/10010212/big_1560808_201906201434320000001.jpeg)
ディーゼルエンジンに特有のノイズは、さすがにアイドリング時や低速域では、少なからずキャビンへと届いてくる。しかしそれはノイズを意識すればこその話なのであって、普通にこのD5を走らせる時には、ノイズはほぼ気にはならないというのが実際のところだろう。アクセルペダルを踏み込んだ瞬間の動きは、明らかに2000㎏のSUVが加速する時のイメージとは違う。前で紹介した最大トルクの480Nmは、確かに1750~2250rpmでフラットに発揮されるが、ボルボはさらに発進時の低速域で圧縮されたエアをターボチャージャーのタービンに導入する、「パワー・パルス」と呼ばれる新技術を採用していたのだ。つまりターボの効果が十分に発揮されない低速域でターボの駆動を助け、そしてその効果を発揮させるためのパワー・パルスこそが、XC90の走りから重量感というものを感じさせなくするための重要な役割を果たしていたということになる。
![日本市場には初導入となるD5ディーゼル。アドブルーや燃料噴射タイミングを管理するi-ARTも採用する。](https://motor-fan.jp/images/articles/10010212/big_1560810_201906201436170000001.jpeg)
日本仕様のXC90は、ほかにガソリンのT5とT6、そしてプラグインハイブリッドのシステムを持ち、ボルボ自身はそれにツインエンジンのサブネームを与えるT8で構成されているが、今回追加設定されたD5は、その中でも最もコストパフォーマンスに優れたモデルとなることは間違いない。試乗車は正確にはAWDインスクリプションと呼ばれる上級グレード車で、それだけに装備のメニューはまったく不満を感じないまでに充実している。
とりわけボルボが強くアピールするのは、先進安全装備の充実だ。対向車対応機能を持つ歩行者・サイクリスト検知機能付き衝突回避・被害軽減ブレーキシステムや、最新のアダプティブクルーズ・コントロールのほか、ボルボがインテリ・セーフと称する先進安全装備群は、全モデルで標準装備となるもの。ボルボは2020年には新車生産されたモデルでの死亡事故、重傷事故をゼロにするという長期目標を立て、さまざまな新技術を開発してきたが、その完成は2020年には若干遅れてしまうとのこと。だが現在の段階で、ここまで先進的な安全装備を満載するブランドは数少ないのだから、それは十分に誇ってもよいことだろう。
![クリーンでシンプルなインテリアは、まさにスカンジナビアデザインの真骨頂という感じだ。スイッチ類も機能的に配置されている。](https://motor-fan.jp/images/articles/10010212/big_1560812_201906201439520000001.jpeg)
![ボディサイズが大きいだけに、ラゲッジスペースは広大だ。3列目シートを使用しても、なお十分なスペ ースを確保している。](https://motor-fan.jp/images/articles/10010212/big_1560813_201906201440200000001.jpeg)
![](https://motor-fan.jp/images/articles/10010212/big_1560814_201906201440360000001.jpeg)
![](https://motor-fan.jp/images/articles/10010212/big_1560814_201906201440360000002.jpeg)
試乗車は、さらにオプションのエアサスペンションを備えたモデルだったから、当然のことながらその乗り心地は素晴らしく滑らかなものだった。ハンドリングも実にスポーティで、SUVでは避けることのできない重心の高さを感じさせることなく、スポーティなコーナリングを楽しむことができた。ちなみにスタンダードなサスペンションは横置きリーフスプリングを使用したもので、こちらもどのような走りが演出されるのかは非常に興味深い。タイヤはこのインスクリプションでは20インチ。乗り心地をさらに望むのならば、19インチのモメンタムの購入を考えるのも悪くはない。安全装備やエンジンはインスクリプションと変わらず、価格は車両本体でインスクリプションの944万円に対して859万円と買い得感は高い。
D5の登場で、一応のラインナップが完成したXC90シリーズ。その抜群の使い勝手と日常的なコストパフォーマンスの高さで大きなアドバンテージを持つと言えそうだ。
![3列目シートを備え、いざとなれば7名が乗車できるのもXC90の魅力。3列目の足元は狭いが、大人が何とか座ることができる。](https://motor-fan.jp/images/articles/10010212/big_1560815_201906201440530000001.jpeg)
SPECIFICATIONS ボルボXC90 D5 AWD インスクリプション
■ボディサイズ:全長4950×全幅1960×全高1775㎜ ホイールベース:2985㎜
■車両重量:2110㎏
■エンジン:直列4気筒DOHCディーゼルターボ 総排気量:1968㏄ 最高出力:173kW(235㎰)/4000rpm 最大トルク:480Nm(48.9㎏m)/1750~2250rpm
■トランスミッション:8速AT
■駆動方式:AWD
■サスペンション形式:Ⓕダブルウイッシュボーン Ⓡマルチリンク
■ブレーキ:Ⓕ&Ⓡベンチレーテッドディスク
■タイヤサイズ(リム幅):Ⓕ&Ⓡ275/45R20
■新車価格:944万円
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