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「新しいものを開発するには、先を見なくてはならない苦心もある」 開発ストーリーダイジェスト:トヨタ・エスティマ

MotorFan / 2020年8月14日 8時0分

「新しいものを開発するには、先を見なくてはならない苦心もある」 開発ストーリーダイジェスト:トヨタ・エスティマ

これまで数多くのクルマが世に送り出されてきたが、その1台1台に様々な苦労や葛藤があったはず。今回は「ニューモデル速報 第87弾 エスティマのすべて」から、開発時の苦労を振り返ってみよう。

1990年代、クルマに対する高性能化へのシフトが進む中、これまでレジャーを中心に“使う楽しさ”を特徴としていたワンボックスワゴンには変革が迫られていたという。

エスティマの開発でチーフエンジニアを務めた植田 豊は、それまでタウンエースに携わっており、従来のワンボックスワゴンではホイールベースの短さとエンジンを前方に置くことで生じるピッチングの大きさがネックになると考えていた。そこでエスティマでは、ワンボックスワゴンの“使う楽しさ”はそのままにスポーティーカーの持つ“走る楽しさ”との両立を開発目標に定め、やる以上は徹底的にワゴンの欠点を取り去って新しい魅力を持たせようとした。


そのため、開発初期には、そもそもワンボックスにはFF、FR、MRのいずれが適しているのかから見つめ直したという。その中でミッドシップ(MR)は、フロアを持ち上げることから乗降性などが最も不利と考えられていたが、エンジンを完全にフロアの下に収めることが出来れば、乗降性やフラットなフロアを実現できると考えた。さらに、クルマの中心に重量物を置くことでヨー慣性モーメントを小さくでき、走行性能も高まることからミッドシップが選ばれた。

ミッドシップを採用したことでフラットなフロアを実現。前席から3列目シートまでウォークスルーが可能。セカンドシートは180度反転でき、ボックス席のような使い方で家族や友人との会話を楽しめる。

ただ、エンジンを床下に収めるとなると、エンジンの高さを圧縮しなければならない。そのため、エンジンと補機類(オルタネーターや冷却ファン、エアコンのコンプレッサー、パワステのポンプなど)を分離させて、補機類はボディ前方に配置。補機類を駆動させる専用シャフトを設けた。さらにエンジンは、シリンダーの角度を垂直状態から75度も寝かせることで上下寸法で440mmという低さを実現させた。

補機類と分けた上で、75度傾けて440mmの圧倒的な低さを実現。
日常のメンテナンスにも配慮してフロントフードの中に補機類を配置。

こうして実現させた画期的なレイアウトをもとにキャルティがデザインを手掛け、生産を担当するトヨタ車体にはオリジナルのデザインを出来るだけ崩さないことを要求されたが、担当した星野昭平は以下のように振り返った。

「トヨタ自動車のワンボックスワゴンを長い間つくってきましたが、このクルマは実に難しかったですね。キャルティがつくったモデルはフラッシュサーフェスがポイントですが、滑らかな紡錘形の面でまとめようとすると、面が大きいのでわずかな段差があってもガラスに映り込む景色に歪みが出てしまいます。フロントドアの3次元ガラスの曲面をデザイン通りにして、それをうまくドアの内部に降ろしていく構造は大変でした。ガラスの後部を支点にしてわずかにガラスを後傾させたあと、パンタグラフ機構によってガラスを下ろすようにしたのですが、そこに行き着くまでに時間が掛かりました。」

滑らかな曲面のフロントウインドウ。運転時の視界の良さに加えて、車内の開放感も高める。

そのほかにも、エスティマではスライドドアのレールを中段の黒いストライプの中に収めたり、ローラーの構造と材質を工夫してドア開閉時の音にもこだわった。また、ドアの合わせ目の隙間を4.5mmと当時の高級車(マークⅡ以上)の規格に設定するなど、細部まで質感を追求した。

当時の乗用車のフルモデルチェンジが4〜5年だったのに対して、ワゴン車は台数がそれほど出ないこともあって、そのスパンは長かった。それだけ新しいものを開発するには、先を見なくてはならないという苦心もあると植田は語った。

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