鬼才キム・ギドク、性描写の葛藤を告白

Movie Walker / 2014年12月6日 8時0分

衝撃作『メビウス』のキム・ギドク監督

第69回ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞受賞作『嘆きのピエタ』(12)ですさまじい母と子の物語を打ち出したキム・ギドク監督。続く『メビウス』(12月6日公開)では、親子の愛憎劇を背景に、性と欲望について挑戦的に斬り込む。なんと嫉妬に狂った母親が、息子の性器を切ってしまうのだ!韓国では上映制限がされ、日本でもR18指定となった問題作を掲げ、来日したキム・ギドク監督にインタビュー!

父親の浮気が招いた、壮絶な悲劇。性器を失い、打ちひしがれた息子と、苦悩する父親。なんとも目を背けたくなる惨状である。父親役に『鰐 ワニ』(96)や『悪い男』(01)などキム・ギドク組に何度も参加してきたチョ・ジェヒョン、息子役に新星ソ・ヨンジュ。興味深いのは、『さよなら歌舞伎町』(2015年1月24日公開)も待機中のイ・ウヌが、愛人と妻役の一人二役にトライしている点だ。実は、このキャスティングには、驚くべき裏事情があった。

「元々母親役を演じていた女優さんが、個人的な問題によって降板してしまったんです。それで、撮影を中断しなければいけない事態に陥り、思い悩んだ挙句、イ・ウヌさんに一人二役の件を相談してみたんです。そしたら彼女が『やってみましょう』と言ってくれて。メイクも全部変えて、トライしてもらいました。幸い、映画的にも斬新な挑戦になりましたし、むしろ良い意味をもたらすことができたと思っています」。

実際に、狂気に走る強烈や母親と、優しい印象の愛人を見事に演じ分けたイ・ウヌ。「彼女の演技力がなかったら成立していなかったでしょうね。また、僕がもし監督としてしか本作に関わってなかったら、一人二役は考えなかったかもしれません。『メビウス』では、監督兼プロデューサーでもあったので、自分で製作費をやりくりできたのも良かったです」と、おちゃめに笑うキム・ギドク監督。

過激な内容から、上映制限を受けた理由については、韓国の儒教思想が大きく影響したと語る。「道徳的に、近親相姦という行為は、かなり厳格に禁じられていて、人間がしてはいけない行為として認識されているんです。それは、青少年の感性を保護するための基準であり、私もそれには同意しているんです。ただ、私が『メビウス』で描いたのは夢のなかのシーンで、息子がお母さんとそういうことになるのを想像したという設定で、現実に描いてないから大丈夫かなと思っていたんです。でも、やはり審査する人たちは、たとえ夢のなかのシーンでもダメだということで。特に、青少年の保護者の団体からかなり反対がありました」。

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