「私は"水の何でも屋"」 エチオピア、内戦で傷ついた村に水を
国境なき医師団 / 2023年8月18日 13時35分
「私は"水の何でも屋"です。最高にやりがいのある仕事ですよ」。こう話すのは、国境なき医師団(MSF)で水と衛生の専門家として、エチオピアにて活動するウェルデキロス・アセファだ。
2020 年から政府軍と反政府勢力との戦闘が激化したティグレ州。紛争の影響で、水が手に入りにくい状況が続いていた。アセファはいまティグレ州のメイクウェートという小さな村で、手押し井戸ポンプの点検作業に取り組んでいる。ここではMSF の支援によって600台のポンプが修理され、2 年ぶりに清潔な水が使えるようになった。
破壊された水設備 感染症が広がった
「戦闘が激しくなった時、村の人びとは 1 週間ほど森の中に逃げ込んでいました。戻ってみると、電気は止まっているし、手押し井戸ポンプも壊されている。石が詰められていたそうです。村民たちは水が使えなくなってしまいました」とアセファは話す。
その結果、メイクウェート村の人びとは、1.5 キロ歩いて川から水を汲んで来なければならなくなった。すると、多くの人びとが下痢で体を壊していった。川の水は料理や飲料に使われたが、洗うことには使われなかった。清潔な水で洗わなければ、病気が広まる危険が高まるのだ。
2022 年 11 月、停戦が合意された。2 年間の紛争によって、この地のインフラは壊滅的な損害を受けていた。医療施設も、ほとんど機能不全の状態だった。
同月にティグレに戻ったMSF は、取り組むべき最優先課題として、医療施設への給水網を復旧させること、廃棄物処理システムを再構築させることにフォーカスした。例えば、ティグレ州シレの拠点病院であるスフル病院では、安全な水を再び使えるようにするほか、トイレ、シャワー、洗濯場も整備した。同時に、焼却炉も設置している。注射針、注射器、使用済包帯などの医療廃棄物を処理するためだ。それにより、病院の近辺にあったゴミの山を除去することができた。この山のなかに、危険な医療廃棄物がどれだけあったことか。
コレラの流行を防ぐ
もうひとつの最優先課題となったのが、安全な水を人びとの家庭に届けることだった。各家庭が清潔な水を使うことこそ、急性水様性下痢、皮膚病、眼病、寄生虫による病気など、水系感染症の流行に対する防御壁となるのだ。さらに、清潔な水の不足によるコレラ流行には、特に注意を払わなければならない。
今年の4月末、ティグレ州シェラロの一角にある小さな村で、10 歳の少年が医療施設に向かう途中に死亡した。その後、この村では、急性水様性下痢が数件発生。これを受けて、MSF チームは、村の 120 世帯に浄水剤を配り、ほかに病気になっているケースがいないか確認作業も実施した。すると、死亡した少年のきょうだい 2 人がひどい下痢をしていると分かった。MSF チームは、コレラ流行に備えて、シェラロに設置した隔離センターに 2 人を入院させた。 こうした状況にあるため、MSF チームは、車で 2 時間の距離にある拠点病院のスフル病院にも入って対応に追われた。同病院では、コレラ治療センターを改修し、コレラが流行した場合に備えて対応能力を強化するため、スタッフに研修を行っている。
MSF の水・衛生チームリーダーで、現地を調査したチームの一人、ダニエル・シュモンディは、次のように語る。「村の状況は本当にひどいものでした。井戸がないので、村の住民たちは川の水を利用していた。自宅の近辺で野外排せつもよく行われていたようです」
人びとに安全な水を
国境付近にある村アデメイティ。この村で暮らすアディサレムさんが、まだ朝も早いうちから、手押し井戸ポンプの修理に必要な資材をラクダに積んでいる。 「この村では、住民のほとんどが(避難先から)戻っていません。まだ、キャンプや受け入れ先の家で暮らしているんです」と、アディサレムさんは話す。 情勢がまだ不安定なこともあり、紛争からの復興は遅れたままだ。ティグレの水インフラは、何回もコストをかけて修理されているが、そのたびに、再び略奪されたり、意図的に破壊されたりしている。そうした理由から、援助団体は大規模な活動の開始に踏み切れずにいる。 復興に合わせて、安全な水をもっと供給できるようにしなければならない。衛生環境も全面的に改善しなければならない。そのために、さらなる力が必要だ。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
再び激化する戦闘──コンゴ民主共和国 暴力に巻き込まれる市民、人道援助活動も困難に
国境なき医師団 / 2024年6月12日 17時11分
-
ガザ:20の援助団体が訴え「人道援助は崩壊の危機に──新たな検問所も見せかけの対応でしかない」
国境なき医師団 / 2024年6月6日 8時31分
-
南スーダン:治療が受けられない遠隔地へ、あらゆる手段を尽くして医療を届ける
国境なき医師団 / 2024年6月4日 11時58分
-
人道援助の「空白地帯」となったスーダンで何が──戦闘から1年以上 援助のない避難生活は続く
国境なき医師団 / 2024年5月28日 17時18分
-
シリア:北部の医療を支える財政支援の強化を
PR TIMES / 2024年5月27日 18時15分
ランキング
-
1ウクライナ平和サミット、領土一体性の原則など共同声明を採択…インドや南アは支持表明せず
読売新聞 / 2024年6月16日 22時36分
-
2イスラエル、ガザ軍事活動を一部停止…支援物資搬入増へ国際的批判に配慮
読売新聞 / 2024年6月16日 22時48分
-
3G7のウクライナ融資、EU諸国は直接関与せず=イタリア首相
ロイター / 2024年6月17日 8時4分
-
4ロシア機、バルト海でスウェーデン領空侵犯
AFPBB News / 2024年6月16日 16時55分
-
5バイデン氏がセレブと選挙資金集会、3000万ドル調達 最高裁批判も
ロイター / 2024年6月17日 9時54分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)