スーダン:暴力に巻き込まれる首都圏の市民と医療施設
国境なき医師団 / 2023年8月18日 17時34分
スーダンの紛争が5カ月目に入る中、首都ハルツームに隣接する都市オムドゥルマンでは市民と医療施設が暴力によって脅かされている。同地での戦闘はここ数週間特に激化、空爆、銃撃戦、砲撃が行われ、子どもを含む何百人もの人びとが負傷している。この地域で機能している医療施設は数少なく、戦闘によって医療の受診はさらに危険かつ困難となっている。国境なき医師団(MSF)は紛争当事者に対し、市民と医療施設、医療従事者の保護の徹底を訴えている。
機能している医療施設はわずか
MSFが支援するオムドゥルマン市内のアル・ナオ病院。医療スタッフのオメルは、戦傷を負った市民について次のように話す。「先週、砲撃戦に巻き込まれた家族がやってきました。母親と幼い娘は亡くなり、別の娘は足を失い、息子は重傷を負っていました。別の家族は、銃で撃たれた3人の子どもを連れてきました。背中を撃たれた9歳と右目を撃たれた6歳の子どもは助かりましたが、4歳の子どもは亡くなりました」
アル・ナオ病院は、オムドゥルマンで現在機能しているわずかな医療施設の一つだ。患者数は多く、同市北部で唯一、外傷救急処置室を備え、外科手術が可能であるため、負傷した患者は全員ここに運ばれる。
7月29日から8月11日までの2週間、アル・ナオ病院でMSFは、スーダン保健省のチームとともに、808人の救急外傷患者を治療した。そのうち447人は、銃撃、爆弾の破片、刺し傷など戦闘に起因する負傷者で、3人に2人は銃創を負っている。女性や子ども、高齢者や新生児すら例外ではない。一方病院はその他の疾病にも対応し、同じ期間には糖尿病、高血圧など、外傷以外の患者787人を治療した。1日平均にすると、戦闘による外傷患者が34人、その他の患者77人が治療を受けていることになる。
市内でMSFはアル・サウジ産科病院を支援していたが、7月4日、病院敷地内で保健省職員が銃撃され死亡したため、閉鎖を余儀なくされた。同病院のスタッフはアル・ナオ病院に活動を移し、地域の妊産婦への医療提供を継続している。
治安の悪化で診療を控える動きも
アル・ナオ周辺での戦闘激化は、患者とスタッフ両方の安全を脅かしている。8月16日にはアル・ナオ病院の北と南西に砲弾が着弾するなど事態は深刻だ。戦闘が激しい日には、病院は主に戦傷者を受け入れているが、普段は他の急患にも対応している。しかし脳卒中や心臓発作等の急患でも、戦闘を恐れて、移動をためらい、受診を後回しにすることがあり、病院に到着したときには手の施しようがない患者もいる。治安の悪化は病院職員にも影響し、移動が危険なスタッフがいる場合は、他のスタッフが二交代制でも連続勤務する事態に発展している。
スーダンのMSF緊急対応コーディネーター、フラウケ・オシグはこう指摘する。「人びとは、暴力によって絶えず悲劇に直面しています。最も弱く罪のない人びとが、この紛争によって壊滅的な打撃を受けているのを目の当たりにして、心が張り裂けそうです。アル・ナオの医療スタッフが24時間体制で働く間も、近隣に砲弾が次々と着弾しては、さらなる恐怖を引き起こし、病院の救命活動を脅かしています。私たちは紛争当事者に対し、暴力から市民を守ること、そして病院と医療従事者の保護を徹底してほしいと要請します。病院が機能しなければ、さらに悲しみと苦しみが増えるばかりです」
ハルツーム州におけるMSFの活動
MSFはハルツーム州で8カ所の病院を支援し、ハルツーム市とオムドゥルマンにある4カ所の病院ではスタッフを派遣、戦線の両側で活動している。他のMSFの活動地と同様、アル・ナオ病院は、患者が紛争当事者のどちらに属するか、もしくは一般市民かに関わらず、医療ニーズのみに基づいて医療を提供している。同病院に加えMSFは、バシャール医学校附属病院とハルツーム南部のトルコ病院でも、負傷者のケアに当たっている。7月には、3カ所の病院全体で1770人の戦傷患者が外傷治療を受けた。
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