【イベント報告】キーワードは「生きる希望」「変える力」:トークイベント、世界の人道危機の現場と国境なき医師団の活動より
国境なき医師団 / 2023年9月18日 9時4分
国境なき医師団(MSF)は、世界の人道危機とMSFの活動を紹介するトークイベントを開催しました。MSF日本会長で救急医・麻酔科医の中嶋優子と外科医の田邉康が、シリアや南スーダンなどの活動地の現状やMSFの対応について、それぞれの経験を交えて紹介。イベントは、難民や移民の人びとが置かれた状況や医療ニーズについて紹介する「エンドレスジャーニー展・札幌~終わらせたい、強いられた旅路~」会期中の9月2日(土)に、同イベント会場内およびオンラインで行われ、合わせて150人以上が参加しました。
会長の中嶋からはMSFが世界各地で医療・人道援助活動を行う国際NGOであることに加え、現地で起きている人道危機を広く世界に伝える「証言活動」も使命の一つとしている点が紹介されました。2009年に初めてMSFの活動に参加して以降、延べ7回の派遣を振り返り、MSFの活動現場では言語や文化が異なっても、誰もが人の助けになりたいという情熱を常に持ち、同じ目標の下で働いていると語りました。
続いて、2013年シリアの紛争地域での活動体験に触れ、幼い兄弟が「ここに来れば助けてくれる」とMSFの病院を訪ねて来た時のほほえましいエピソードも交え、医療アクセスのない場所に医療を届けるというMSFの目的が、地域の人びとに確実に伝わっていることを実感したと話しました。昨年11月末のウクライナ、キーウ視察の話では、避難を余儀なくされた国内避難民の現状が共有され、つい数か月前まで日本にいる私たちと同じような生活を送っていたウクライナの人びとが直面する困難について述べました。
外科医の田邉からは、医師18年目にMSFへの参加を決めたきっかけに続いて、2016年の南スーダンでの活動が共有されました。難民キャンプでは1週間で倉庫を病院に改造し治療に当たったこと、難民の中から採用された医療スタッフとの思い出、物資の足りない状況下、創意工夫で活動を続けたことなどを交え、当時の状況を振り返りました。また、紛争や迫害などにより移動を強いられた人びとの現状を伝える、「エンドレスジャーニー」のキャンペーンサイト動画に出演した際のエピソードも紹介されました。
2010年以降、10年以上にわたり11カ国で活動し、主に紛争地での外科外傷治療を担ってきた田邉。多くの国で難民の人びとからかけられたという言葉を紹介し、彼ら一人一人が将来に対する大きな不安や、世界から忘れ去られてしまう恐怖を抱えながら生きている現実を強調。それを多くの人たちに伝えることが自分の義務だと思うと語りました。
続く質疑応答では、会場とオンラインからMSFに参加するための語学の習得や現場で必要なスキル、救えない命を前にした際の心情についてなど多くの質問が寄せられました。
「MSFに参加するために今からできることは?」という高校生からの質問に田邉は、自分の可能性を信じ、夢を大きく持って一歩一歩進んでいってほしいと回答。続いて中嶋は、日本に生まれた幸運を常に感じ、生まれた場所が違うだけで困難を強いられている人たちにどのような形で貢献できるかを考えながら、いろいろな経験をしてほしいと語りました。
最後の「国境なき医師団をひと言で表現すると?」という問いに対し、2人が用意した答えは「生きる希望」と「変える力」。その真意とは──。ぜひ動画でご覧ください。
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