【動画】ブンブン飛び交うイノベーション? 蚊で広まる病気を、蚊で制する──ホンジュラス、命を落とす病気から住民を守れ
国境なき医師団 / 2023年9月22日 17時49分
世界でも危険な国の一つといわれる中米ホンジュラス。いま、この国で新たな脅威が急速に拡大している。蚊が媒介するウイルス感染症、デング熱だ。
国境なき医師団(MSF)は、地域社会や保健当局と連携し、対策に取り組んでいる。蚊が媒介する病気を、蚊で予防する──その革新的なアプローチとは?
深刻化するデング熱
デング熱は、感染した蚊に刺されることで人に感染するウイルス感染症だ。熱帯気候の都市部で多く確認され、発熱や頭痛、体の痛み、吐き気などの症状が見られる。重症化した場合は病院での治療が必要になり、命にかかわることもある。
ホンジュラスでは、毎年1万件を超えるデング熱患者が報告され、その流行はますます深刻化している。デング熱に治療法はなく、感染を十分に防ぐワクチンもまだ開発されていない。また、時代遅れの媒介蚊駆除技術を使用するせいで、蚊が現在の予防法や殺虫剤に耐性を持つようになっている。
現在の予防法では人びとをデング熱から守ることはできません
蚊を放つ、新たなアプローチ
より優れた持続可能な解決策を見出すため、MSFとホンジュラスのパートナー団体は、デング熱の多い他の国で効果が実証されている予防法を試験的に導入することにした。それが、蚊のウイルス感染能力を低下させる共生細菌「ボルバキア」を持つアカイエカを地域に放すことだ。
「蚊がボルバキアを保有していると、その菌はデング熱のようなウイルスと競合し、蚊の体内でウイルスが繁殖しにくくなります。つまり、蚊が人から人へとウイルスを拡散する可能性が格段に低くなり、蚊の集団にボルバキアが定着している地域ではデング熱が減少するのです」。MSFの技術顧問であるクレア・ドリオンはそう説明する。
「ワールド・モスキート・プログラム」(WMP)のボルバキアを利用した予防法は人にも環境にも安全であり、これまでに13カ国以上で展開され、約1000万人が恩恵を受けている。その証拠に、蚊のボルバキアが高いレベルで維持されている地域では、デング熱の感染が著しく減少しているのだ。
MSFは地元コミュニティと緊密に協力し、この活動にかかわるすべての設計や準備、実施に取り組んできた。プロジェクトは、テグシガルパで蚊が媒介する病気の発生率が最も高い地域の一つである、エル・マンチェン保健地区の50地区で実施される。また、MSFのチームは、活動を開始する前に、1万人以上の住民と協議を行った。相談を受けた97%がこの計画を支持し、多くが蚊の放飼の実施に積極的に関わっている。
MSFは、長い間ホンジュラスでデング熱の感染対応の難しさを目の当たりにしてきた。 「このプロジェクトの最初の目的は、デングなどのウイルスによる死亡や病気を減らすことでした。長期的にはこれらの新しい方法が、蚊を媒介とした病気に苦しむ人びとを守るための持続可能な解決策になることを願っています」とボキンは言い、こう締めくくった。
「今こそ変革の時なのです」
MSFのホンジュラスでのデング熱対応
MSFは1974年に初めてホンジュラスで活動を開始。1998年以来、同国でデング熱に対応し、テグシガルパで患者にケアを提供すると共に感染対策に取り組んでいる。
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