ガザ「負傷者が数時間以内に命を落とす危険性が」ー深刻化する医療・人道状況の今は
国境なき医師団 / 2023年10月20日 17時5分
パレスチナ・ガザ北部でまだ稼働している数少ない医療施設は、想像を絶する苦境に立たされている。イスラエル軍の執拗な攻撃が続き、多くの医療スタッフは南部に避難せざるを得ない。残されたスタッフは、包囲された状況の中で、電気や水の欠如に対処しなければならない。
状況はどうなっているのか。国境なき医師団(MSF)のパレスチナでの医療活動をエルサレムで統括する、医療コーディネーターのギルメット・トマが報告する。
極めて厳しいガザの医療と病院の状況
イスラエル当局による退避要求が出て100万人以上のガザ北部住民が南部への避難を余儀なくされて以来、人々は留まるか去るかの極めて難しい選択を迫られています。 これは医療従事者にとって、 ・患者をその場に残してほぼ確実に死に追いやってしまうか ・自らの命を危険にさらしても残るか という選択をさせられることを意味しています。 危険にもかかわらず、留まって仕事を続ける人もいます。MSFが以前からやけど患者のケアを提供してきたガザ地区中心部のアル・シファ病院では、保健省のチームを支援している仲間たちと連絡を取り合っています。 医療スタッフは今、他のガザ市民と同じ立場に置かれ、苦しんでいます。この10日間、彼らは常に爆撃を受けてきました。私たちの同僚によれば、イスラエルの攻撃が始まって以来、多くの医師やその他の医療従事者が亡くなっているといいます。
ガザ地区では毎日800人から1,000人が負傷していると報告されていますが、この数字には病院に行くことができた人しか含まれていません。 医療施設に向かう道のりは非常に危険で、ガソリン不足で移動がさらに難しくなっているため、病院での治療を受けられるのは重篤な患者だけになっています。今回の衝突が始まって以来、9700人以上が負傷していますが、医療を受けることが不可能になっているため、これらの人々は数時間以内に死亡する危険性がある、極めて深刻な状況におかれています。
ガザの保健システムは機能していない
私たちはすでに、治療体制の崩壊を目の当たりにしています。医療スタッフは、もはや人びとを治療することも、新しい患者を適切に受け入れることもできません。スタッフ、薬品、医療機器が不足し、すべてが極めて劣悪な状況に置かれています。それでも複雑な外傷、やけど、骨折、手足のつぶれた患者や重傷者が絶え間なく押し寄せています。 ガザの主要病院であるアル・シファ病院には、絶え間ない爆撃から身を守ろうと多くの人々が押し寄せています。ガザ全体が停電で暗闇に包まれるなか、アル・シファ病院はまだ電気が通っている数少ない場所のひとつです。
一言でいえば、電気がなければ多くの患者が命を落とします。特に集中治療室や新生児科、呼吸補助装置をつけている患者には、医療機器を動かす電気が必要です。 糖尿病やがんなどの慢性疾患の患者や妊婦も、医薬品不足のために危険にさらされています。
南部に避難した人びとの状況は厳しい
南部に避難した人びとにとっての最優先事項は、水の確保です。 現在、ガザの人々の60%、100万人以上が、水も医療も受けられずに屋外で寝泊まりしていると推定されています。 診療所が閉鎖されているため基本的な医療は受けられず、衛生状態も非常に悪化しています。下痢、呼吸器感染症、皮膚感染症、脱水症状などが急速に進行し、女性や子どもを含む最も弱い立場にある人々を深刻な危険にさらす可能性があります。ガザの人々の半数は18歳未満ですが、この子たちをケアする医療システムは、失われました。
病院機能の復活は不可欠
ガザの人びとに医療支援を行ううえで、まず病院を復旧させることが¥は不可欠です。そのためには、定期的な停戦を保証し、多くの医薬品や燃料を運び込まねばなりません。麻酔薬がなくなれば、外科医は手術の中断を余儀なくされます。 100万人の避難民に対しては、早急な人道支援が必要です。彼らの健康状態が劇的に悪化する前に、水と衛生設備、そして基本的な医療へのアクセスを保証すること必要なのです。
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