スーダン:西ダルフールで戦闘再燃 約7000人が隣国チャドに避難
国境なき医師団 / 2023年11月10日 15時7分
スーダン・西ダルフール州の州都ジェネイナで、戦闘と民間人に対する大規模な暴力が再燃し、11月1日から3日にかけて、女性と子どもが大半を占める約7000人が隣国チャド東部のアドレに避難を余儀なくされた。国境なき医師団(MSF)は、その後2日間で36人の負傷者を治療、アドレでのスーダン難民、チャド人双方への人道援助即時拡大の必要性を訴えている。
襲撃の危険の中チャドへ
MSFのプロジェクト・コーディネーターであるアルカッスーム・アブドゥラハマネは「ジェネイナは今年6月にも、悪夢のような暴力の激化に見舞われ、住民の多くは襲撃される危険の中でチャドへの避難を余儀なくされました。その後、街の状況は比較的穏やかになり、他の地域からの避難民を受け入れていましたが、現在、戦闘と恐怖に再び支配されています」と話す。
アドレでMSFのアウトリーチ・コーディネーターを務めるシュテファニー・ホフマンは、「スーダン難民の新規入国者数は、11月に入ってからの3日間で、10月の総数を上回りました。家が壊され、何も持たずにスーダンを離れなければならなかった母子を目の当たりにしたこともあります」と話す。
心身ともに傷を負う人びと
MSFはアドレの国境にある簡易診療所で、子どもにはしかの予防接種や、栄養失調のスクリーニングを行い、専門医療が必要な小児急患はMSFが運営するアドレ病院に搬送し、チャド保健省のスタッフとともに治療に当たっている。
4人の子どもを連れて国境を越えた33歳の女性、アムネさんは「昨晩、妹の家が爆撃されました。隣にあった私たちの家にも燃え移ったので、家族で外に飛び出しました。持ち出せたのはこのドレスだけ。妹の消息は分かっていません」と話した。
アドレ病院には、ジェネイナから逃れた27歳の男性が、手足に複数の銃弾を受けた状態で到着した。道路で襲われた16人のグループの中で唯一の生存者だと話す彼は、死んだふりをして生き延び、別の難民のグループの助けを借りて国境を越えた。
難民となった人の中には、家族の消息を知るため国境から数百メートル離れた場所でスーダンからの新規到着者を待っている人もいるが、そこで初めて家族や友人が亡くなったと知らされる人も多い。MSFは現在、過酷な移動を強いられた難民への心のケアや、飲料用の貯水タンクの設置に当たっている。
紛争から逃れ、再び人道危機の中へ
4月にスーダンで紛争が起きて以降、何百万人もの人びとが住まいを追われた。その多くは避難民としてスーダンにいるが、推定110万人が国境を越えて近隣諸国に避難。その大半は、これまでいくつもの人道危機に直面してきたチャドにいる。
MSFのチャド・スーダン緊急対応責任者を務めるクレア・ニコレは、「地域社会、当局、援助団体の総力を挙げた取り組みにもかかわらず、人道援助はチャド東部における危機の大きさに追いつかず、すでに疲弊している地域に更なる負担を強いています。多くの人びとが急ごしらえかつ悲惨な状況のキャンプで暮らしていますが、最近の難民の増加は、ニーズの増大に加え、その背景にある紛争終結が程遠いことを示しています。MSFは、難民とチャド人双方の最も弱い立場にある人びとを支援し、水、医療、仮設住居、食料といった生活インフラを確保するため、人道援助の即時拡大を求め続けます」と訴える。
最近到着した難民の話は、6月にアドレに避難した多くの難民の話とも重なる。同月、アドレの人口は3倍に膨れ上がり、6月15日から17日にかけて、アドレ病院は850人を超える、これまでにない規模の戦傷者を受け入れた。特に腹部、背中、脚を銃で撃たれた患者の多くは、ジェネイナでの悲惨な暴力や、チャドへ逃げる道のりで武装した男たちに銃撃を受けたと証言した。
チャド東部と西ダルフール州におけるMSFの対応
チャド東部で緊急対応が始まって以降、MSFは9万6000件余りの外来診療を行い、8492人の入院患者、7155人の栄養治療患者、3万1955人のマラリア患者を受け入れ、1634件の外科手術、1043件の分娩介助を行った。また、救援物資を配布し、難民の飲料水の最大80%を供給している。
西ダルフール州では、11月5日、ジェネイナ教育病院の救急部門に患者120人分の医薬品を寄贈。また、ジェネイナとアドレを結ぶ道にある3カ所の診療所に大人と子どものマラリア、下痢、呼吸器感染症の治療キットを寄贈した。
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