子どもの結核:高まん延国は新たなWHOガイドラインの採用、実践を急げ
国境なき医師団 / 2023年11月15日 12時37分
世界保健機関(WHO)は11月14日、「小児と青少年の結核終息に向けたロードマップ(WHO Roadmap towards ending TB in children and adolescents)」を発表した。今でも子どもの主要な死因である結核は、3分に1人、子どもの命を奪っている。国境なき医師団(MSF)はWHOの発表を歓迎するとともに、全ての結核高まん延国に対し、WHOの結核管理に関する総合的なガイドラインの優先的な採用・実施・拡大を促している。
より多くの国でガイドラインの実施を
2022年に発表されたWHOの子どもと青少年における結核ガイドラインは、より多くの子どもを結核から救うために、いくつかの重要な介入を推奨している。これには、子どもたちの症状だけで診断できるように、確認項目をまとめた表の採用。そして、GeneXpert検査において、子どもたちに痰(たん)を出させるよりも、管理と採取が簡単な便を検体として使用すること。また、非重度の薬剤感受性結核に対して、従来の6カ月間の治療から4カ月間の治療への変更。さらに、家庭内で結核患者と接触した子どもに3カ月間の結核予防治療の提供が含まれる。しかし、結核の高まん延国のほとんどはこれらの勧告を十分に実施できていない。
MSFのアクセス・キャンペーンの結核医療アドバイザー、ガブリエラ・フェルラッツォ医師は、「WHOのガイドラインは、臨床検査やX線検査の利用が限られる場合など、あらゆる環境で、子どもの結核の診断を可能にする重要なツールですが、実践している国は多くありません。MSFは、より多くの子どもが診断を受け、すぐに治療を始められるよう、各国政府がWHOの勧告を採用し、実践することを強く求めます。同時に、勧告を実践するためのスタッフの研修やサポートも必要であり、各国にはこうした施策の早期実施が求められています」と話す。
多くの子どもが、結核と診断されないまま治療を受けることなく、命を落としている。成人の結核診断に使用する検査は、子どもの検体では菌が少なく検出が難しい。そのため、設備が整った環境であっても、結核と診断できる子どもの数は少数にとどまっている。
診断検査の開発が急務
成人の結核検査では喀痰(かくたん)を検体とすることが望ましいが、子どもに痰を出させることは難しい。WHOは現在、GeneXpert Ultra検査を使用して、胃、鼻咽頭、または便の検体による子どもの検査を推奨している。そのうち、胃液の採取は体に負担がかかり、小柄あるいは病気の子どもには非常に困難な場合が多い。そのため、外来患者には実用性に難点があるが、多くの環境では便検査が唯一の選択肢となっている。子どもの結核を発見するための正確で利用しやすい診断検査がない場合、医療従事者は、WHOも推奨しているように、徴候や症状に基づいた早期診断を確実に行わなければならない。子どもの結核を診断するためのより良い検査を見つけるために、さらなる研究開発が急務となっている。
タジキスタンのMSF結核プロジェクトで働くナシバ・マクスモバ医師は、「致命的な一方で治療可能でもある結核は、何千年も前から存在しているにもかかわらず、21世紀になっても適切な検査ツールがなく、小児結核患者の40%しか必要な治療を受けられないという事実に困惑します。口腔スワブやフィンガープリック採血といった採取しやすいサンプルを使って、へき地でも使用できる、より効果的な子ども用の結核検査の開発が必要です。より良い結核検査を開発するためには、研究者、資金拠出者、製薬企業のさらなる努力が必要であり、開発された検査は全ての結核の高まん延国で利用でき、かつ安価でなければなりません。小さな患者には、これ以上待つ余裕はありません」と話す。
予防治療の実践も必要
検査や治療とは別に、家族や地域社会で結核患者と密に接触している子どもや青少年に、予防治療を実践することも依然として大きな課題である。長年にわたり子どもには、結核予防用のより短い3カ月レジメンが推奨されてきたが、現在も普及に至っていない。活動性結核の発現リスクを減らすため、各国は予防治療を受けられる場所を増やし、対象となる子どもにこれらの治療を開始する必要がある。
シエラレオネでMSFのプロジェクトに携わるケネディ・ウアディアレ医師は、「数十年にわたる圧力と待ち時間の末に、ようやく子どもに使用しやすい結核予防薬ができました。それでも、スクリーニング過程がわずらわしいため、投与を受けている子どもはほとんどいません。今こそ10月の国連「結核に関する政治宣言」での公約を各国が履行し、結核にかかるすべての子どもの命を救うときです」と訴える。
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