ハイチ:首都圏貧困地区の治安悪化で医療に深刻な影響
国境なき医師団 / 2023年11月20日 15時52分
2022年にはMSFは、ポルトープランスで最もコレラの被害が大きい地区の一つであるシテ・ソレイユで予防接種のキャンペーンを支援した=2022年12月21日 © Djenane Madona Baptiste/MSF
ハイチの首都ポルトープランス市内にある貧困地区シテ・ソレイユが、対立する武装ギャング間の抗争の再燃に巻き込まれている。国境なき医師団(MSF)は11月13日以来、シテ・ソレイユで負傷した約50人の治療に当たっており、改めて武装ギャングに対し、住民の安全性の確保と医療施設やスタッフ、患者の尊重を求めている。
治療ができる唯一の病院
この地区では最近、フォンテーヌ病院が無期限で閉院し、MSFのシテ・ソレイユ救急病院が、患者を治療できる唯一の医療施設となっている。フォンテーヌ病院はMSFの支援を受けていない民間の施設で、11月15日に衝突の渦中に巻き込まれた。現在、同病院の患者とスタッフは全てポルトープランスの他の病院に移され、シテ・ソレイユで医療を受けられる場は減っている。
患者の中でも妊娠中の女性は現在、特に危険な状況に置かれている。シテ・ソレイユのMSFチームは、出産に際してフォンテーヌ病院を紹介することが多かったが、閉院によって紹介は困難となった。ポルトープランスの産科センター、サン・ダミアンも治安の悪化から10月下旬に閉院してしまった。
MSFはまた、特に激しく、無差別的な暴力が起きている間は、スタッフ、患者、組織へのリスクを抑えるため、外来診療所を一時的に閉鎖し、シテ・ソレイユの医療チームを縮小せざるを得なかった。ただし、救急診療を提供するため、シテ・ソレイユ救急病院では診療を続けている。
住民の安全確保と医療の保護を
ハイチでMSFの活動責任者を務めるムムザ・ムヒンド・ムスバオは、「今回もまた、武装ギャング同士の衝突で、住民は高い代償を払わされています。住民の中には、避難する場所を求めて自宅を離れなければならない人もいます。医療施設はもはや正常に機能しておらず、患者は医療施設にたどり着けずに取り残される恐れがあります。MSFは、全ての武装ギャングに対し、住民の安全を確保し、病院や医療施設、そこで働く人びとや治療を受ける人びとを尊重するよう、改めて要請します」と訴える。
MSFは1990年にハイチで活動を開始し、2010年の地震やそれに続くコレラの大流行といった災害や病気の流行に大規模な対応を行ってきた。現在は外傷、やけど、救急医療を要する患者、性別・ジェンダーに基づく暴力被害者のケア、一般医療、産科診療ケアを担っている。
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