ガザ:南部ナセル病院が機能停止 医療へのアクセスが断たれる
国境なき医師団 / 2024年1月29日 15時17分
パレスチナ・ガザ地区南部のハンユニスで激しい戦闘と爆撃が続くなか、南部最大の医療施設であるナセル病院が機能停止に陥っている。国境なき医師団(MSF)は、戦闘で負傷した人びとの医療アクセスが奪われていると警告し、改めて医療施設の保護と持続的な停戦を訴えている。
失われた医療
イスラエル軍による周辺地域の退避要求が出されるまでの数日間で、ナセル病院スタッフの大半は、病院に避難していた数千人の避難民とともに退避した。現在、病院の外科手術能力はほとんどなく、病院に残っているごくわずかな医療スタッフは、一度に多数の負傷者が運び込まれた時には、不十分な物資で対応するしかない。
ナセル病院の周辺は危険であることに加え、搬送用の救急車がなく、現在も300人から350人の患者が避難できずにいる。患者はいずれも戦闘による負傷者で、開放創(外部からの力による損傷で皮膚に開口、亀裂が生じたもの)、爆発による裂傷、骨折、やけどなどを負っている。1月24日には整形外科医による処置ができないことによって、少なくとも1人の患者が死亡した。
パレスチナでMSFの医療コーディネーターを務めるギュメット・トマは「医療が行き届かないために、人びとの命が危険にさらされています。ハンユニスの主要医療施設のナセル病院とヨーロッパ病院にたどり着くのは困難で、ガザにはもはや医療体制がありません。医療に対するこのような組織的な攻撃は容認できず、負傷者が必要な治療を受けられるよう、今すぐ終わらせなければなりません」と憤る。
使用済みガーゼを再利用——人も物資も足りない
ナセル病院で活動を続けるMSF看護師のラミ(※)は、1月25日に50人の負傷者と5人の死者が一度に運び込まれて来た際に無力感を感じたと話す。
※安全確保のため、名字は表記していません。
「ナセル病院の救急処置室で働くスタッフは残っていませんでした。ベッドもなく、椅子がいくつかあるだけ。数人残っていた看護師で患者を救急処置室に連れて行き、手元にあるもので応急処置をしました。そこで患者のトリアージ(重症度、緊急度などによって治療の優先順位を決めること)も行ったのです。恐ろしい出来事で、精神的に本当に参ってしまいました」
「ガーゼパッドのような基礎的な物資が底をつきかけています。今日、私たちの診療科の患者受け入れのために手術室に残っていたスタッフに腹部ガーゼを支給してほしいと頼んだところ、あるものはすでに使っていると言われてしまいました。一度使ったガーゼから血液を絞り出し、洗浄して滅菌し、別の患者に使用します。これがナセル病院の手術室の現状だなんて、想像がつきますか?」
医療施設の保護と停戦を
ヨーロッパ病院は、ガザ南部でナセル病院に次いで大きな施設で、外科手術の態勢も大規模だ。しかし、現在、近隣地域は退避要求下にあるため、医療スタッフも人びともたどり着くことができない。
病院は保護された空間でなくてはならず、人びとと医療従事者が医療にアクセスし、また、医療を提供することを阻害されてはならない。1月26日、国際司法裁判所(ICJ)はイスラエルに対し、パレスチナ人に対する大虐殺を防止し、ガザの人道状況改善に向けて緊急措置をとるよう命じる暫定措置を発表した。これは重要な一歩ではあるが、持続した停戦のみが、より多くの市民の犠牲を食い止め、ガザ地区に住む220万人のための人道援助と重要な物資の供給を可能にする。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
ガザ南部でイスラエル軍が避難命令、16人が攻撃で死亡
ロイター / 2024年7月22日 19時41分
-
イスラエル軍、ガザ南部や中部の学校など攻撃 57人死亡
ロイター / 2024年7月17日 9時2分
-
スーダン:首都で支援する病院から全スタッフの引き上げを決定――相次ぐ暴力に活動継続は困難に
PR TIMES / 2024年7月13日 17時40分
-
スーダン:首都で支援する病院から全スタッフの引き上げを決定——相次ぐ暴力に活動継続は困難に
国境なき医師団 / 2024年7月12日 15時59分
-
病院への道は「死のわな」──パレスチナ・ヨルダン川西岸で何が起きているのか
国境なき医師団 / 2024年7月1日 18時29分
ランキング
-
1米民主重鎮、決断を称賛=ハリス氏支持で対応分かれる―バイデン氏撤退
時事通信 / 2024年7月22日 9時50分
-
2バイデン大統領、米大統領選からの撤退を表明 代わりの候補としてハリス副大統領を指名
日テレNEWS NNN / 2024年7月22日 3時30分
-
3バイデン氏の決断尊重 英や独首相ら
共同通信 / 2024年7月22日 11時54分
-
4パリ五輪、4355人を「脅威」として排除 仏内相明かす、大会の治安対策で
産経ニュース / 2024年7月22日 11時27分
-
5《トランプ前大統領銃撃事件で使用》「全米で広く出回る」AR-15ライフル、日本の暴力団が「使わない」理由
NEWSポストセブン / 2024年7月21日 16時15分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)