「今すぐ出ていくか、死ぬか」 スーダン西部で起きた激しい民族間暴力の規模がMSFの調査で明らかに
国境なき医師団 / 2024年2月15日 11時32分
国境なき医師団(MSF)の疫学研究機関「エピセンター」が、チャドに逃れたスーダンからの難民を対象に実施した死亡率調査で、2023年6月にスーダン西部の西ダルフール州で激化し、最近まで同州の州都ジェネイナ周辺で続いた暴力の規模が明らかになった。
エピセンターの調査では、スーダンで紛争が始まった2023年4月以降、調査を行った3つの難民キャンプで死亡率が大幅に増加したことが示された。主にジェネイナを出てオウラン・キャンプに逃れた難民が、最も大きな打撃を受けている。
死亡率は4月以降20倍に増え、6月をピークに1日1万人あたり2. 25人に達した。死者の83%は男性で、特に銃器による暴力が死因の82%を占めている。大半はジェネイナで死亡しており、4分の1はチャドへの避難中に亡くなった。同時期に15歳から44歳の20人に1人近くが行方不明となった。
異民族を狙った暴力が6月に最悪に
「この調査結果は、昨年6月以来、私たちがチャド保健当局と協力して、アドレ病院の外科病棟で治療した約1500人のスーダン人負傷者の証言を裏付けるものです」と、チャドでのMSFの緊急対応責任者であるクレア・ニコレは述べた。
「アドレでは、6月15日から17日の間に858人の負傷者を受け入れました。これは私たちが受け入れた負傷者が最多となった時期ですが、調査で判明した死亡率のピークと重なっています。負傷者の多くは、自分たちが非アラブ系のマサリート人であることを理由にアラブ系民兵に狙われ、ジェネイナで撃たれたと告げました。暴力はその後もチャドへの道沿いの村や検問所で続き、マサリートの男性が組織的に標的にされています」
この半年間に西ダルフールから逃れてきた難民たちの証言は、略奪、家屋の焼き討ち、殴打、性暴力、虐殺など、耐えがたい暴力の横行が起きていることを示している。暴力は、この地域に存在する民族間の政治的、経済的、土地的な対立に根ざしており、特にジェネイナでは極端なかたちで表れている。
「連中は『ここはお前たちの国ではない』と言い、今すぐここを出てチャドに向かうか、死ぬかを選べと迫ってきました。何人かの男性を連れ去られ、路上で射殺されるのを見ました。死体を埋葬する人は誰もいませんでした」と、ジェネイナからアドレに逃れた26歳の難民Hさんは言った。
アドレでMSFの治療を受けた別の患者は、こう語った。「チャドへの道中、私たちは多くの検問所で止められ、どの民族かを尋ねられました。彼らはマサリートを標的にしていました」
ジェネイナ北東のアルダマッタでは11月、新たな暴力が噴き出した。避難民のための大規模なキャンプとスーダン軍の駐屯地があったこの地域を民兵が制圧し、数百人が死亡したと伝えられている。
「主に銃撃で傷を負ったアルダマッタからの人びと333人が11月の1ヶ月間、アドレでMSFとチャド保健省の医療チームによる治療を受けました」と、ニコレは付け加えた。
データが示す事態の緊急性
死亡率調査は、MSFのエピセンター・チームが8月と9月に、当時それぞれ6000人、4万4000人、2万5000人が集まっていたトウムトウマ、アルコウム、オウランのキャンプで行った。
3093人の世帯主に、2023年に紛争が始まる前後での世帯内の死亡者数と死因を尋ねた。これによって粗死亡率を求め、2つの期間で比較することが可能になる。これは、危機の深刻さを評価するため最も広く使われている指標のひとつであり、1万人あたり1日1人以上の死亡率があれば、即時の対応が必要な緊急事態であることを意味する。今回の調査では6月に2.25人に達した。
スーダンの紛争は、隣国チャド東部で大規模な人道危機をもたらすこととなった。チャド東部では、すでにぜい弱な地域コミュニティや、20年来同国に滞在している数千人のスーダン難民に加え、新たに約50万人が避難場所を求めてきたからだ。
アドレと周辺のキャンプで、人道的対応、特に緊急食料援助を強化するためには、資金、物流の確保、人的資源がさらに必要だ。MSFのチームは、アドレ病院やさまざまな診療所、診療所で幅広い医療ケア(小児科、妊産婦保健、栄養、外傷手術、予防接種、心のケアなど)を提供し、水・衛生サービスへのアクセスを改善するための活動を続けている。
エピセンターは、疫学、医学研究、技術革新、訓練を専門とするMSFの組織。複雑かつ不安定な状況で人道援助に特化したプロジェクトを立案・実施し、住民の健康ニーズに応え、MSFの活動を支援している。
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