200万人が被災──ブラジル史上最悪の水害 洪水で被災した人びとへ緊急援助を
国境なき医師団 / 2024年5月21日 19時2分
ブラジル南部リオグランデドスル州で4月末から続いた豪雨による洪水で、200万人以上が被災し、60万人が避難生活を送っている。水害としてはブラジルの歴史上、前例がないほどの規模だ。国境なき医師団(MSF)は水や食料の提供を行うとともに、移動診療のチームを編成した。緊急援助の動きを現地から伝える。
「何キロも水だけが……」
「状況は壊滅的です。この州に到着してヘリコプターで上空から町を見ると、屋根が沈んでしまっている家々もありました。何キロも何キロも、水だけが広がっています」 現地に入ったMSF医療コーディネーターのレイチェル・ソエイロはそう話す。 リオグランデドスル州を襲った豪雨と洪水は、道路や橋を破壊し、都市全体を孤立させた。州都ポルトアレグレの主要空港は無期限閉鎖されている。 そして大きな人的被害が起こっている。暫定データによると、死者は150人以上、行方不明者は約100人に上る。大勢が水も電気も得られない状況で過ごしているとされ、多くの場所で臨時の避難所が作られている。
物資の提供や移動診療を進める
MSFの緊急チームは被災地で、最も弱い立場に置かれた人びとに焦点を当てた活動を行っている。
「それは自然災害において常にMSFが意識することです。洪水以前から困難な状況にあった人びとは、援助がより届きづらい状況にあるのです」と医師のソエイロは説明する。
「私たちは現地の先住民保健当局を支援し、先住民が暮らす地域への医療支援と、医薬品や水、食料の提供を行っています。訪問したある地域は、増水によって完全に孤立し、10日以上も援助がない状態でした。
ほとんどの道路が封鎖されているため、輸送の手配は非常に困難です。ヘリコプターでしか行けない場所も少なくありません」
MSFはポルトアレグレ都市圏のカノアスで、医師、看護師、心理士、ヘルスプロモーターからなる移動診療チームを2つ編成し、避難所での活動を近日中に開始する予定だ。
緊急時に求められる心のケア
MSFは、洪水の被災者を支援する立場の人びとに対し、心理面での応急手当に関する遠隔トレーニングを実施している。自然災害下において、心のケアは医療相談とともにMSFの緊急援助の焦点の一つだ。
MSFの心理士であるアルバロ・パルハは「私たちのこれまでの経験から、緊急時には心のケアと心理社会的支援が非常に重要であることが明らかです」と話す。
リオグランデドスル州は、昨年も大規模な自然災害に襲われた。2023年9月から11月にかけて、MSFはタカリ渓谷の町でサイクロンと洪水の被災者に緊急援助を提供。心のケアの活動のほか、衛生キットの提供などを行ってきた。
今後現地では、不安定な天候がさらなる洪水を引き起こす可能性もある。MSFは状況を注視し、緊急のニーズに応じて最善の支援を提供できるよう、対応を続けていく。
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