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【動画】イラク:復興の道のりを歩む都市モスル 国境なき医師団は、いつも必要とされる場所に──

国境なき医師団 / 2024年5月24日 12時28分

アル・ワフダ病院 Ⓒ Bawar Mohammed Rasul/MSF

2014年、過激派組織「イスラム国」(IS)に占領された、イラク北部の都市モスル。激しい市街戦となったモスル奪還作戦では、多くの人びとが犠牲となり、2017年7月にようやくモスルは解放された。

国境なき医師団(MSF)は、モスルでの戦闘が終結した後、6年間にわたり、現地で外科医療を提供してきた。モスルが復興の道のりを歩む中、このたびモスル東部のアル・ワフダ病院の活動を、現地の保健当局に引き渡すことが決定。MSFはこの病院で、整形外科手術と包括的な術後ケアに取り組んできた。

「現在のモスルと以前の様子を比べると、ゆっくりとですが着実に町が復興しつつあるのを感じます」

モスルにおけるMSFの医療チームリーダーを務めるジルベルタ・ジェイロスはそう話す。ジルベルタが手術室の看護師として初めてモスルを訪れた時、街はまだ戦闘の真っただ中にあったのだ。

戦争の傷を癒すために

2018年4月、MSFはアル・ワフダ病院を開院した。戦争で負傷した人びとの外科治療と術後ケアが緊急に求められていたためだ。この病院は移動式の外科手術室と、40床のベッドを備える入院病棟からスタートした。

当時、モスルでは、地域社会の医療ニーズに応える力が決定的に低下していた。医療を必要とする人びとが多いだけではなく、市内の主要な医療施設が紛争により大きな被害を受け、稼働できなくなっていたことも要因だ。
「私たちは何度も家を追われ、暗く、悲しみでいっぱいの毎日でした。戦闘が終わってようやく家に戻っても、何もかもが失われていた。そして、市内で最も被害を受けたのが医療施設だったのです」

病院が最初の戦傷者を受け入れ始めてすぐに、人びとの医療ニーズの大きさが明らかになった。そのためMSFは、より多くの患者を受け入れるために、病床数と入院基準の拡大を決めた。

2019年にアル・ワフダ病院で治療を受け始めたサダム・アブドルモネイムさんは、次のように話す。

「長い間、自分の脚で立つことができず、症状は悪化する一方でした。ここに来て、必要な治療をすべて無料で受けることができました。今では以前よりずっと良くなったと感じています」

病院の再建と新型コロナ、2つの課題に取り組む

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が、モスルの医療現場で新たな課題として浮上した際、病院の拡張工事はすでに始まっていた。工事を継続しながら、MSFは、骨折から回復する患者を受け入れるために新設された40の個室を、軽度から中等度の新型コロナウイルスの感染者のための隔離ユニットに変更した。

新型コロナウイルスの急性期の影響が薄れ始めると、アル・ワフダ病院は、設備の整った2つの手術室を備えた整形外科病院として、再び開院。腕や脚に傷を負った人びとに対して、より幅広い外科手術を行えるようになった。

また、抗菌薬(抗生物質)に耐性がある薬剤耐性菌感染症は、負傷した患者の治癒と回復を複雑にする大きな課題の一つだった。個別の隔離室は、このような感染症が患者から患者へと広がるのを防ぐという点で画期的なものでもあった。

この病院で治療を受けた患者の一人が、ラフマさんだ。母親のイクラムさんは、ラフマさんが感染症のために経験した辛い日々を、こう振り返った。

「ラフマが腕を失ってしまったと思ったこともありました。彼女は腕を動かすことができなかったから……。それでも、4回の手術を受けて40日後、ラフマの腕は良くなりました。今では腕を動かせるようになったのです」

MSFが去った後も、人びとが医療を受けられるように

この6年間、アル・ワフダ病院は、緊急の医療ニーズに対応するだけでなく、モスルの長期的な医療システムの整備にも力を注いできた。現地の医療従事者に専門的な訓練と支援を提供することで、彼らの技能と能力を向上させ、MSFが活動を引き渡した後も、地域の人びとが質の高い医療を受けられるようにすることを目指した。

MSFは現在もモスルで活動を続けている。モスル西部のアル・ナフラワン地区とナブルス地区では、心のケア、妊産婦ケア、小児科および新生児医療を提供。MSFのチームはナブルス病院とアル・アマル産科診療所を運営している。また、人びとの基礎医療へのアクセスを向上させるため、アル・アブール地区にも活動を拡大している。

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