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ガザ:20の援助団体が訴え「人道援助は崩壊の危機に──新たな検問所も見せかけの対応でしかない」

国境なき医師団 / 2024年6月6日 8時31分

ガザ南部、ラファからハンユニスに避難する人びと=2024年5月6日 © MSF

パレスチナ・ガザ地区ラファでイスラエルによる攻撃が激化する中、ガザにおける人道援助は崩壊の危機にあると、国境なき医師団(MSF)を含む20の援助団体が共同で訴えている。物資搬入のための「浮き桟橋」や新しい検問所の設置といった最近の対応は、実際にはわずかな効果しかなく、見せかけの改善策にすぎない。援助団体や医療チームの対応能力は、すでに限界に達している。

物資の量は最低レベルに

陸路も海路も、ガザに援助を届ける道は事実上閉ざされている。また、民間人が避難している地域での攻撃も激化。飢餓や病気、医療サービスの欠如により、今後さらに多くの命が奪われることを、援助団体は懸念している。

イスラエルの支配下にある検問所での組織的な妨害や暴力の激化により、食料、燃料、医薬品などガザへ入る援助物資の量は今、過去7カ月間で最低レベルにまで減少している。

ガザで最大規模の医療・人道援助を行うMSFは、5月6日以降、ガザに物資を搬入できていない。清潔な水の供給ができないため、患者はリスクにさらされている。しかし、水の供給に必要な海水淡水化キットや水ポンプの搬入は、イスラエル当局によってほとんど拒否されている。

ガザで援助を安全に提供することは、ますます難しくなっている。わずか3週間の間に、100万人近いパレスチナ人が、人間として最低限の生活を送ることすら難しい過密地域に新たに避難している。援助スタッフや援助活動の安全確保への懸念や、ガザ地区内にイスラエルの検問所が急増したことも、人道援助の妨げとなっている。

閉ざされる病院

空爆で夫を亡くした妊婦のゼイナブさんは、ガザ市からラファ、そしてハンユニスへ避難したと、援助団体ケア・インターナショナルに語った。彼女は、妊娠合併症に対処するための薬を見つけるために複数の薬局、病院、保健所を何時間も歩いて回ったが、水も食べ物も得ることはできなかった。医師は来週には帝王切開で出産する必要があるというが、稼働している数少ない病院でそれが可能なのか、不安が残る。

ガザの医療システムは事実上崩壊している。ほぼすべての病院は、退避要求が出されているか、イスラエルの包囲下にあるか、燃料や物資が間もなく底をつくか、そのいずれかだ。ラファ最大の病院であるナジャール病院は、イスラエルの退避要求によって閉鎖を余儀なくされた。ガザ北部のどの病院も現在アクセスできない。ガザ全域で医療物資が不足し、また、医療者が殺害されたり強制的に避難させられたりしていることから、多くの患者の命が脅かされている。

セーブ・ザ・チルドレンは、子どもたちはガザから避難することができないまま、日々の恐怖や家族を失った悲しみに直面しており、心理社会的支援が切実に必要とされていると述べる。

1日に必要な水の3%以下で生活

オックスファムのパートナー団体であるJuzoorは5月19日、ガザ北部のジャバリヤで支援していた、すでに過密状態のシェルターのうち6つが、イスラエルの砲撃によって完全に破壊されたと発表。避難所での医療支援では、北部の周辺地域からの避難民を受け入れていた。この地域から逃れたスタッフが戻ると、患者のベッドが焼け、重要な医療機器や物資が破壊されていたという。

ガザ南部では、援助の流入が完全に遮断されている。ラファのパン屋はすべて閉店を余儀なくされた。物資の減少、倉庫へ行けない状況、治安の悪化により、援助機関は南部での物資配布を中断せざるを得ず、ハンユニス、デールバラハ、ガザ市でも間もなく物資提供の中断を余儀なくされる恐れがある。

また、気温が危険なレベルまで上昇し、下痢や肝炎などの病気が急速に広がる中、多くのパレスチナ人は1日に必要な水の3%以下で生活している。

新たな対応は見せかけにすぎない

新たな「浮き桟橋」を含む通過地点の増設の発表は、状況が改善したような印象を与えるが、大部分は表面的な見せかけの変化にすぎない。国連の集計によると、5月7日から27日までの間に、新しい「浮き桟橋」を含むすべての通過地点を経由してガザに入った援助物資は、トラック1000台分ほどだった。これは、ガザに住む220万人の人びとの人道ニーズが急増していることに対し、極めて少ない。

人道援助スタッフや援助物資のガザへの主な搬入先の一つであるラファ検問所は、イスラエル軍に占拠された5月7日以降、閉鎖されたままだ。一方、エジプトのエルアリーシュでは、2000台以上の援助トラックがイスラエルからの入国許可を待っている。数キロ先で人びとが飢餓に直面している中で、食料は腐り、医薬品は期限切れになっているのだ。

ケレム・シャローム検問所は公式には開放されているものの、商用トラックが優先され、援助物資の搬入は予測不可能なうえ非常に少ない量に限られている。

今すぐ持続的な停戦を

援助団体や人権団体は、人びとの命を守り保護するために、即時かつ持続的な停戦を求め続けている。そして、ガザに援助を運ぶための一貫性のあるルートの確立を求めている。

すべての紛争当事者は、人道援助へのアクセスと援助物資の輸送を保護しなければならない。国際人道法を遵守し、ラファへの攻撃を停止するようイスラエルに命じた直近の判決を含め、国際司法裁判所の判決を守るよう、各援助団体は求めている。第三国の政府や国連安保理の理事国を含む国際社会は、パレスチナの人びとを保護するため、国際人道法と国際司法裁判所の判決に基づく義務を負っている。

援助団体は休みなく、困難な状況で命を救うための援助を届けようとしている。しかし、もし国際社会が停戦を確保するための法的義務や道義的責任を回避し続けるのであれば、援助団体にこれ以上できることは、ほとんど残っていない。

  • 空路や海路でガザに援助物資を運び込もうとしても、非効率でコストがかかり危険であることに変わりはなく、陸路に取って代わることはできないと援助団体は繰り返し訴えている。
  • 昨年10月7日に紛争が激化する以前、ガザへのトラックは1日平均500台だった。陸路と海路を合わせてガザに入った援助物資は、5月7~23日に906台分、24~26日に160台分で、合計1066台分だった。
  • ガザでは少なくとも8万1026人の人びとが重傷を負ったままでいるが、イスラエルが5月7日にラファ検問所を占拠して以来、ガザからの医療避難はすべて停止している。推定1万4000人の重篤な患者や負傷者が、ガザの外での救命治療を必要としている。
  • ラファ検問所のエジプト側には、商用トラックや援助トラックを含め、合計4500台のトラックが待機したままだ。
  • イスラエル当局は現在、ケレム・シャロームの陸路の検問所で援助トラックよりも商用トラックを優先している。これは、搬入される食料やその他の物資が、最も切実に必要としている人びとに届かないことを意味する。
  • 西エレズ(ジキム)検問所の通過は、依然として厳しく制限されている。
  • 少なくとも266人の援助関係者が殺害された。その多くはパレスチナ人だ。
  • 5月7日以降、ロジスティクス分野の人道援助団体は、物資の倉庫に行くことや、援助団体を支える貨物通知システムの運用ができなくなっている。
  • 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)によると、5月7日時点で45万人以上の人びとが南部のマワシ地区に避難しており、ラファへの攻撃が激化して以来、この数は増加している。

<賛同団体> Premiere Urgence Internationale Médecins du Monde France Médecins du Monde Switzerland Médecins du Monde Spain Danish Refugee Council Norwegian Refugee Council CARE International Médecins Sans Frontières/Doctors Without Borders (MSF)(国境なき医師団) Oxfam Save the Children International Plan International Amnesty International ActionAid International Humanity & Inclusion/ Handicap International (HI) Norwegian People’s Aid War Child Alliance Secours Islamique France Action For Humanity Islamic Relief Mercy Corps
(2024年5月28日)

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