ガザ:中部での虐殺はパレスチナ人からの「人間性のはく奪」
国境なき医師団 / 2024年6月12日 20時9分
パレスチナ・ガザ地区へのイスラエル軍による激しい爆撃と地上攻撃により、6月だけで800人余りが死亡し、2400人余りが負傷したと、ガザ地区の保健当局が発表した。現地で医療・人道援助活動を行う国境なき医師団(MSF)は、こうした攻撃は、パレスチナ人の命を明らかに軽視し、人間性をはく奪する行為だと表明する。また、6月10日に採択された国連安全保障理事会の決議が速やかに履行され、即時かつ持続的な停戦、および制限のないガザへの人道援助物資搬入の許可がなされるよう要請する。
1日で274人が死亡
過去数週間、多くの軍事攻撃によって、南部ラファとガザ中部にあるMSFの支援先医療施設に多数の負傷者が一度に搬送される事態が繰り返し起きている。
6月8日、意識不明の複数の子どもを含む60人余りの重傷患者が、MSFが支援する南部ハンユニスのナセル病院に搬送された。同じ日、中部のアル・アクサ病院は、多くの子どもを含む負傷者420人、死者190人を受け入れた。患者は手足の切断など重度の外傷、開放骨折を負い、激しい攻撃の影響を示していた。ガザ保健当局によると、その日だけで274人が死亡した。
MSFはイスラエルに対し、このような虐殺を直ちに停止するよう求める。また、米国、英国、欧州連合(EU)加盟国などイスラエルの同盟国に対し、ガザの民間人や民間インフラへの攻撃を停止するため、イスラエルに対しあらゆる外交手段によって働きかけるよう要請する。
この戦争の特徴は「パレスチナ人から人間性をはぎ取ること」
MSFの緊急対応責任者ブリス・デルビンヌは、「数日のうちに小さな子どもを含む800人余りを殺害し、さらに多くの人を負傷させた軍事作戦が、国際人道法に則っているとどうして正当化できるでしょうか。『あらゆる予防措置をとっている』というイスラエルの声明など、受け入れられません」と述べる。
6月初旬、イスラエルは「安全地帯」とされる難民キャンプ、学校、複数の人道援助用倉庫を繰り返し爆撃した。いずれもイスラエル軍が正式に「攻撃対象外」としてきたものだ。6月4日、中部で激しい空爆が行われ、少なくとも70人が死亡、300人余りが負傷した。多くは女性や子どもで、重度のやけど、爆弾の破片による傷、骨折を負ったためMSFが支援するアル・アクサ病院に搬送された。
デルビンヌは「昨年10月以来、そしてもっと以前から、パレスチナ人から人間性をはぎ取ることがこの戦争の特徴です。『戦争は醜い』という言葉がありますが、まだ歩けないほど幼い子どもたちの手足がバラバラになり、内臓が飛び出したまま死んでいくという事実は、そんな言葉では言い尽くせません」と憤る。
国際社会の良心に新たな汚点を残さぬために
一連の攻撃は、これまでの数々の残虐行為の最新の例でしかなく、イスラエルの戦闘がどのようなものかを表している。イスラエルと同盟国は、この暴力には転換点も限度もないことを繰り返し示してきた。過去に起きた「小麦粉配給を待つ人びとの虐殺」「テント住民の虐殺」として知られる攻撃や、「援助活動従事者とその家族の殺害」「病院と医療体制の全滅」は、その後に「外交努力の弱さ」や、「空虚な言葉」、そして「信じがたいほどの無策」を明らかにしただけだった。
6月10日、米国が示した決議案が国連安保理で採択され、停戦と人道援助の自由な供給が必要とされた。停戦とそれに伴う援助物資の供給は一刻の猶予も許されず、以前の同様の決議とは対照的に、即時の実行を必要としている。さもなければ、さらに多くの人命が失われ、国際社会の良心には新たな汚点が残されることになる。
安保理決議の速やかな履行を
イスラエル当局の度重なる公式発表とは裏腹に、昨年10月以降、人道援助は拒否されるか、著しく妨げられている。ガザ地区では必須医療物資の不足と、仮設病院設営のための安全保障と物資供給に関するイスラエル当局による承認の遅れにより、基礎的な医療の提供さえほぼ不可能になっている。ガザの医療体制が組織的に破壊された今、仮設病院が必要なのは言うまでもないが、それでも強固で機能的な医療の提供には遠く及ばない。
ガザ保健当局によれば、ガザではこれまで3万7000人余りが死亡し、8万4000人余りが負傷した。6月10日の安保理決議は即時の履行が必須だ。安全地帯はガザに存在せず、国際人道法の原則は無視され、人道援助は組織的に妨げられている。即時かつ持続的な停戦、および制限のないガザへの人道援助物資搬入の許可が求められる。
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