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アフガニスタン:村の子どものほとんどが栄養失調──増え続ける患者のためのプロジェクトとは

国境なき医師団 / 2024年8月1日 17時17分

カンダハルにある通院栄養治療センター前のベンチで、診察を待つ女性たち=2022年11月22日 © Tasal Khogyani/MSF

40年以上にわたる混乱や経済の悪化に加え、干ばつや地震など度重なる自然災害にも直面してきたアフガニスタン

医療システムは脆弱な状態が長く続いており、人材や物資の不足、医療への攻撃などの影響で、多くの人びとは基本的な医療さえ受けられない状態だ。 そんな中、国境なき医師団(MSF)は西部のヘラート、南部のカンダハルとラシュカルガーの計3都市で、入院栄養治療センター(ITFC)を運営し、栄養失調に対応するプロジェクトを行っている。

2023年にはITFCの規模を拡大し、重度の栄養失調や合併症を伴う治療に、より多く対応できるようになった。集中的なケアと栄養治療を通じて、患者が命を落とすことを防ぐためだ。

アフガニスタンで栄養失調に苦しむ人びとの実情、そして、増え続ける栄養失調に対応するMSFの最新の取り組みとは──。

いずれも栄養失調の母子

アフガニスタン西部ヘラートにあるITFC。赤、ピンク、緑のカラフルな毛布に包まれた赤ちゃんが、目を閉じて横たわっている。

小さな鼻の穴にはチューブが通され、テープで覆われている。その様子を、母親が近くの椅子からじっと見守っている。

すぐそばで、何人かの女性が、同じように横たわった子どもの傍らで話をしている。部屋は狭く、栄養失調の子どもと保護者のベッドでいっぱいだ。

ヘラートより南、ヘルマンド州ラシュカルガーにあるブースト病院でも、同じような光景がある。

看護師が赤ちゃんの二の腕に、栄養失調を見分ける「上腕周囲径計測帯」(通称:命のうでわ)を通し、端を引っ張る。うでわが指し示した色は赤。重度の栄養失調を意味する。赤ちゃんの体重を回復させ下痢の治療を行うため、2週間の入院が決まった。 保護者らは食料が足りないこと以前に、経済的に苦しく家族のために食料を買うお金がないと口をそろえる。

それは同時に、母乳育児中の母親の栄養不足が、乳児にも栄養失調というかたちで影響しかねないことを意味する。中には、母乳が十分に出ない母親もいる。 「出産したとき、この子は健康でしたが、私は母乳が出ませんでした。それで、粉ミルクを与え始めたのですが、そのせいで、この子の具合が悪くなってしまったのです」 カンダハルやヘラートでは、このような母親が栄養失調の患者として登録されることもある。

悲惨な経済状況 「病院に連れていくお金がない」

「私たちはバドギース州のカマリから4時間かけて、ここへ来ました」

栄養失調と水ぼうそうの治療のため、息子をヘラートに連れてきたファティマさんは、以前、自宅近くの診療所に助けを求めたが、必要な医療を受けられなかった。

MSFの病院や診療所、MSFが支援する地元保健省の病院では、自宅近くで質の高い医療を受けることが困難なため遠方から訪ねて来る、ファティマさん親子のような人びとを受け入れている。

以前は民間の診療所で治療を受けていた人びとが、今は国際機関が支援する保健センターに頼る背景には、アフガニスタンの人びとが置かれた厳しい経済状況がある。

ローヤさんの子どもはここ2週間、入院している。家計が苦しいため、村の子どもたちのほとんどが栄養失調に陥っているという。

たとえ50アフガニ(約105円)や100アフガニ(約211円)であっても、子どもを病院に連れていくタクシー代が払えないのです。

増え続ける栄養失調 この流れを止めるには──

太陽が灰色の砂利に反射する、カンダハルの病院屋外に置かれたベンチ。母親らは子どもを膝に乗せ、書類を両手にしっかりと握りしめ、辛抱強く待っている。少し離れた場所には、父親や兄弟、叔父らが座っている。

名前を呼ばれると、小さな患者とその保護者は、コンテナの中に入って診察を受ける。合併症を伴わない重度の栄養失調の場合は、栄養失調外来に登録され、すぐに食べられる栄養治療食が提供される。この治療食を6~8週間、完治するまで摂取し続ける。 2023年、ヘラート、ラシュカルガー、カンダハルにあるMSFが運営・支援する施設には、5歳までの子ども1万400人以上が入院した。2024年1月から4月かけては2416人で、これは前年の同時期と比べて、すでに5パーセントの増加となっている。 さらに、ヘラートとカンダハルのMSFチームは2023年、6900人以上の子どもたちを通院栄養治療センターに登録した。

「ヘラートでは、私たちが診察する患者の多くが1歳未満です。これは母乳育児と補完栄養(母乳に加えて栄養価の高い食品を与えること)に問題があることを示しています」と、アフガニスタンのMSF医療コーディネーター、アリーヌ・プレーナーは説明する。 「私たちは、健康推進活動を通じて、母親やその家族とともに、この問題に取り組んでいます。さまざまな栄養プログラムがありますが、6カ月未満の子どもたちは、登録するには幼すぎるとされることが多いため、栄養失調になったときに必要なケアを受けることが難しくなっています。登録基準を広げない限り、この状況は続くでしょう」 栄養失調の入院病棟は、赤ちゃん2人とその母親らが同じベッドを共有しているほど、混雑しているケースもある。これは赤ちゃんにとっても、医学的な観点からも、理想の状況とは程遠い。 MSFの治療を受け、自宅に帰っても、数週間後に戻って来る赤ちゃんもいる──栄養失調の根本的な原因が解決できないからだ。 先天性疾患を持つ赤ちゃんの場合は、専門的な治療を行う病院を見つけること自体が難しく、見つかったとしても自宅から遠かったり、費用が高額になることも多い。 しかし、ローヤさんのように、何とか治療の恩恵を受けられる母親もいる。

子どもの健康状態はすっかり良くなり、回復に向かっています。もうそろそろ家に帰れるでしょう。

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