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「エムポックス(サル痘)」が分かる6つのポイント──WHOが緊急事態宣言

国境なき医師団 / 2024年8月15日 17時19分

コンゴで住民に向けてエムポックスの啓発活動に取り組むMSFスタッフ © MSF

世界保健機関(WHO)は8月14日、エムポックス(旧称サル痘)がコンゴ民主共和国(以下、コンゴ)とアフリカ諸国で急拡大していることを受け、緊急事態を宣言した。国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態として、アフリカ大陸の国々の他、アフリカの外にも広がる可能性があるとWHOは警告している。

コンゴでは2年以上前からエムポックスの患者が増加していた。それが、ここ最近数カ月で状況がさらに悪化。さらに、ヒトからヒトへの感染につながる変異が見られている。また、以前から紛争が多発している北キブ州で暮らす避難民の間でも、感染の疑いが報告されるようになった。
コンゴで一体なにが起きているのか。国境なき医師団(MSF)は、この新たな緊急事態に対して、いかに対応しているのか。コンゴでMSFの医療コーディネーターを務めるルイ・アルベル・マシン医師に話を聞いた。

1. 感染すると発疹や痛みが

エムポックスは、文字通り、エムポックスウイルスが引き起こす病気です。感染した人間や動物と接触することで感染していきます。

もともと、エムポックスは、1970年代から、中央アフリカと西アフリカで流行し始めました。それが、2022年から2023年にかけて、急速に世界中に広がったのです。これまでに110の国で患者が確認されています。
エムポックスに感染すると、発疹や痛みを引き起こします。こうした症状を適切に対処して、さらなる合併症を回避するためのいわゆる支持療法が必要です。適切な治療を受ければ、1カ月以内に回復するケースがほとんどです。しかし、放置しておくと命取りになりかねません。

2. コンゴで患者が急増

もともと、コンゴ国内26州のうち11州において、エムポックスは長年流行していました。それが、ここ2年以上前から、患者数が急増し、2022年12月にコンゴ保健当局が流行宣言を発しました。2023年には感染の疑いのあるケースが1万4600件以上にのぼり、654人が死亡しました。 2024年に入ると、状況はさらに悪化しています。1月から7月中旬までの間に、感染の疑いのあるケースが既に1万2300件以上となっています。その範囲は23州にまで及んでいるのです。今年に入ってから、すでに479人以上が亡くなっています。世界保健機関(WHO)の推計では2022年におけるエムポックス死亡者数は世界全体で89人だったので、今年は特に多いのです。

3. 流行のスピードが加速

憂慮すべきなのは、流行のスピードが上がっている点です。特に、コンゴ東部の南キブ州では、遺伝子変異が確認され、ヒトからヒトへの感染が数カ月にわたって続いている状況です。

この変異に加えて、さらに懸念すべき事態が起きています。それは、北キブ州ゴマ周辺の避難民キャンプにおいて、エムポックスが確認されるようになった点です。ここは人口密度が高く、特に危険な状況です。コンゴ国境を出入りする人びとも多い。エムポックス流行が爆発的に拡大していくリスクを見ておく必要があります。

症例の発見、患者のモニタリング、治療の提供。こうしたプロセスが必要でますが、コンゴでは、それが十分に整備されていません。ワクチンも不足しているため、状況はさらに困難です。一部地域では、エムポックスが神のお告げや妖術と受け止められています。これでは、公衆衛生の対策を打ち出しても、人びとは守ってくれません。地域のリーダーたちに協力してもらい、住民たちの意識を変えていく必要があります。

MSFでは、リスクの高い地域の人びとをワクチン接種で保護していくために、スタッフを動員しているところです。

4. ワクチンの供給が急務

コンゴ政府は、すでに2種類のワクチンを承認しました。現在、それらワクチンの入手に務めていますが、現段階では利用できる状況にありません。いくつかの国々と供給交渉をしたり、ワクチンを優先して配布すべき地域を選定しているところです。一刻も早く、コンゴに十分な量のワクチンが供給されることを期待しています。

5. MSFは複数の州で医療援助を提供

私たちは、コンゴにおけるエムポックス流行に対応するため、複数の援助活動を行ってきました。2021年にはマインドンベ州で、2023年から2024年にかけては、赤道州で緊急援助活動に入りました。状況に応じて活動を広げているところです。

南キブ州

6月中旬から、MSFチームの一部が、南キブ州のウビラ保健区域で支援に入りました。総合拠点病院において、重症患者については治療にあたり、軽症患者については外来診療で対応し、感染の疑いがある患者については隔離を行っています。 また、医療スタッフたちに臨床管理研修を実施したり、感染予防に向けた啓発活動にも取り組んでいるところです。5週間で420人以上の患者治療にもあたっています。そのうち217人は重症患者でした。また、治療やサンプル採取用キットを病院に供給する活動にもあたっています。

北キブ州

北キブ州のゴマにある避難民キャンプにおいて、エムポックスの調査活動に入りました。病気の発生状況について、調査・集計・監視を行う疫学サーベイランスです。啓発活動も実施しています。また、現地の医療施設が、トリアージ(重症度・緊急度などに基づいて治療優先順位を決めること)、隔離措置、患者管理を適切に実施できるよう取り組んでいるところです。

赤道州・南ウバンギ州

コンゴ北西部でも、2つの地域で活動を開始しています。1つは赤道州のビコロ保健区域、もう1つは南ウバンギ州のブジャラ保健区域です。いずれの援助活動も、今後数カ月間にわたって実施される予定です。 この両地域では、エムポックスに関する治療方法と心のケアについて、医療スタッフ向けの研修を実施します。それだけでなく、疫学的サーベイランス、感染予防策、地域啓発活動などにもあたっていく予定です。特に、障がい者など、これまで関与の難しかった人びとへのアプローチは欠かせません。 ブジャラでは、6月中旬から7月中旬にかけて、MSF支援の下に329人の患者が治療を受けました。また、赤道州では、保健当局と協力して、ウイルスの動態や感染症対策について理解を深めるための研究も行っていきます。

6. より多くのリソース投入とワクチンが不可欠

今回の流行は、さまざまな地域で拡大していますが、いずれも人口動態や地理的状況が異なります。それゆえ、対応内容を多層化するだけではなく、各地域の特性に応じたものにしないといけません。ワクチン供給が始まるまでの間、できる限り多くのパートナーと提携して、患者のケアをはじめ、分析や監視、隔離措置、啓発活動などに努める必要があります。現在、これらの活動は不十分なままです。十分に機能させていくには、膨大なリソースを投入しなければなりません。

そして、なによりもワクチンが不可欠です。現在、コンゴには、感染リスクの高い状況下で生きている人びとがたくさんいるのです。エムポックス流行地の住民、医療従事者、セックスワーカー、キャンプの避難民──。彼らを守るために、一刻も早く、十分なワクチンがコンゴまで運ばれなくてはなりません。

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