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スーダン:内戦開始から500日──人道支援の欠如により医療ニーズは急増

国境なき医師団 / 2024年8月30日 17時4分

チャド東部メチェの難民キャンプにあるMSF病院で10歳の小児患者の蘇生を試みるスーダン出身のファイザ・ハメド・ハンガタ医師=2024年8月7日 © Finbarr O'Reilly/VII Photo

スーダンで国軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の戦闘が始まり、国内が未曽有の人道危機に陥ってから500日余りが経過した。この間、国際的な人道支援や資金は十分に投下されず、子どもの栄養失調からコレラなどの感染症流行に至るまで、増え続ける医療ニーズに追いついていない。紛争の両当事者は敵対勢力支配地への援助提供を大幅に制限し、現地で活動する国境なき医師団(MSF)も影響を受けている。MSFは国際的な支援国や機関に対し、人道支援に資金を提供し、その規模を拡大するよう求める。

膨れ上がる医療のニーズ

2023年4月15日に首都ハルツームで始まった戦闘は、国内の複数地域で激化し、これまでの死傷者は数万人に上る。MSFも国内の支援先病院で、内戦開始から2024年6月までの間に、1万1985人の負傷者を治療してきた。またこの紛争は世界最大規模で避難民を生み出している。国連によると、スーダンの5人に1人に当たる1000万人余りが住まいを追われ国内外に避難、その多くは複数回にわたる避難を強いられている。

政治的解決は進まない一方で、医療のニーズは増え続けている。マラリアや水系感染症も増加し、少なくとも3つの州でコレラの流行が宣言されている。内戦で集団予防接種も中断されたため、はしかなどワクチンで予防可能な病気の脅威が子どもに迫っている。

さらに、食料価格の上昇と援助物資の不足のため栄養失調が増加している。MSFは北ダルフール州ザムザム・キャンプや、ジェネイナ、ニヤラ、ロケロなど、ダルフール地方の複数の場所で入院栄養治療センター(ITFC)を運営しているが、いずれの施設も患者であふれている。この状況は国境を越えたチャド東部のスーダン人難民キャンプでも同様だ。内戦が始まってから2024年6月までに、MSFはスーダンで3万4751人の急性栄養失調の子どもを治療してきた。

ダルフール地方でMSFの緊急対応コーディネーターを務めるトゥナ・トルクメンは、「現在、国内全土で子どもが栄養失調で命を落としています。ダルフール地方には緊急支援はほとんど届かず、届いたとしても、妨害に遭っています。例えば7月、ダルフール地方の2カ所で、MSFの物資を積んだトラック2台がRSFに、1台が正体不明の武装集団に奪われてしまいました」と憤る。

援助活動を妨げる要因

スーダンの東部と中部の状況も厳しい。現地で緊急対応コーディネーターを務めるクレア・サン・フィリポは「首都ハルツームの南部では、MSFは何カ月間も病院への医療物資搬入やや国際スタッフを送ることができていません。紛争当事者による妨害で、医療活動はますます難しくなっています」と話す。

国内の無法状態、治安の悪さ、煩雑な行政手続きの、支援が必要なコミュニティへのアクセス許認可の遅延または拒否など、紛争当事者による直接的または間接的な妨害が人道対応を大幅に遅らせていることは明らかだ。さらに現在では自然災害も人道援助従事者や物資の移動を妨げている。

現在スーダンは年間で最も雨量の多い時期にある。雨期は毎年人びとの生きるためのニーズを増大させ、移動を困難にする。大雨で渡河地点が何カ所も冠水し、主要な道路や橋を押し流す。例えば西ダルフール州のモルネイ橋の崩壊は、中央ダルフール州および南ダルフール州と、隣国チャドを結ぶ唯一の「生命線」を断つもので、数百万人が陸路による援助から遮断されることを意味する。

民間人や医療を保護する意識の欠落

世界保健機関(WHO)によると、紛争によって80%近くの医療施設が稼働不能になり、内戦前からぜい弱な医療体制にさらなる打撃を与えた。北ダルフール州の州都エル・ファシールだけでも、MSFが支援する施設はこれまで12回の攻撃を受け、2024年5月に市内で戦闘が激化してからは、外科手術が可能な公立病院は1カ所、それも機能の一部を残すばかりとなった。

直近では、8月22日午前4時40分頃、エル・ファシールとザムザムで活動するMSFチームの宿舎が砲撃を受けた。幸い負傷者はなく被害は物だけですんだが、内戦が始まって以来のMSFスタッフや車両、施設に対する暴力事件はこれで84件目となった。この内戦に関わる当事者が、民間人や医療関係者、医療施設を保護の対象としてみていないことが明らかだ。

近隣諸国の状況もさして変わらない。約200万人が国外へ避難し、家族・知人と離れ離れになっている。50万人以上が避難するチャド東部。そのうち約5万人が、辺境の地、メチェのキャンプにいる。MSFはメチェで2023年後半に病院を建設したが、やるべきことはまだたくさんある。多くの難民が1日1食を余儀なくされ、十分な住む場所も、清潔な水も、トイレもない。

紛争当事者は、民間人、保健・医療従事者、医療施設を保護しなければならない。また両当事者に影響力を持つ国々は当事者に圧力をかけてこれを徹底させなければならない。さらに、いずれの紛争当事者の支配地でも、管轄当局は、人道援助物資と人員があらゆる国境、州境、前線を越えるための移動許可を与える手続きを簡素化し、迅速に対応しなければならない。そして、国連や関連の諸機関は、支援を必要とする場所へアクセスできる経路を最大限に活用できるよう、あらゆる手段を講じることが求められる。

効果的な対応を今すぐに

ポートスーダンで緊急対応コーディネーターを務める、エスペランサ・サントスは「MSFは人道援助の欠落の一部を補おうとしています。活動地の多くで国際援助団体はMSFだけというのが現状です。しかしMSFだけでこの巨大な危機を相手にすることなど出来ません。また、活動に必要な物資やスタッフの確保にも苦労しています。問題は困窮する人たちへのアクセスのことだけではなく、国連機関や現地の支援団体に対する持続的な資金の確保も不可欠です。援助を最も必要としている人びとに届く効果的な対応を今すぐ始めるべきです。もう時間を無駄にしてはいられません」と訴える。

MSFは、スーダンの両方の紛争当事者の支配地で活動している数少ない国際団体の一つ。現在は国内18州のうち8州で20カ所以上の病院や診療所で医療を提供。現地スタッフ926人と国際スタッフ118人を投入し、保健省職員1092人に給与サポートを行っている。

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