「サッカーをして、祈って、働いて…」 チャド 難民キャンプで暮らす子どもたちの日常
国境なき医師団 / 2024年9月5日 17時7分
国内での戦闘が激化して500日以上がたったスーダン。昨年4月から今年6月までに、60万人以上の人びとがスーダンからチャドへと避難した。*
国境なき医師団(MSF)は、紛争を逃れたスーダンの人びとに医療・人道援助を届けるため、隣国のチャド東部で緊急対応を続けている。避難した人びとが身を寄せるアドレの一時滞在キャンプとアブテンゲ・キャンプの診療所では、小児科を支援し、子どもたちに必要な医療を提供している。
キャンプで暮らすスーダンの子どもたちに、チャドでの生活を聞いた。彼らが話した、キャンプでの生活、好きなこと、そして将来の夢とは。
*国際連合人道問題調整事務所(OCHA)
マジムさん、12歳
マドリード対バルセロナ! 僕たちはいつもこうしてプレーしているよ。
僕はスーダンのジェネイナ出身で、姉が2人、弟が3人いる6人きょうだいの長男です。僕は1年以上ここにいて、2人のいとこも一緒にシェルターで暮らしています。 僕の毎日は、サッカーをすること、祈ること、そしてまたサッカーをすることでできています。ポジションはいつも同じで、ウイングバック。好きなチームはレアル・マドリード。見て! 僕のスウェットパンツにはレアル・マドリードのロゴが入っているんだ。好きな選手はクリスティアーノ・ロナウド。彼はもうプレーしていないけどね。弟はバルセロナのファンで、いつもバルセロナのジャージを着ているんだ。だから僕たちはいつもこうやってプレーしている。マドリード対バルセロナ、ってね。
最初はボールを使っていたけど、時間がたってボロボロになっちゃた。だから、今は靴下にビニールを詰めてそれでプレーしているよ。
スーダンから逃げてきた人たちは、避難する途中で連絡を取り合っていることが多い。だから、先に到着した人たちが国境で待っていて、新しく来た人たちを迎えるんだ。そして、自分たちのブロックに連れて行き、そこで住めるようにする。そうすると、キャンプ内でもスーダンにいた時のように、知り合いに囲まれて暮らすことができる。 僕は薪を拾いにキャンプを回ることもある。家族を養うために仕事もしなければならないから、靴磨きのアルバイトもしているんだ。週に何度か市場に行って靴を磨き、靴の修理もやる。人道支援団体から支給される食料だけでは足りないから、それで野菜や肉を買ったりしているよ。 将来は医師になって、たくさんの人を助けたいと思う。MSFのことは知っているよ。国境からそう遠くないところで小児科の診療所を運営しているから。そこにいた友達のお母さんと一緒に行ったことがあるんだ。
ムシュタハさん、10歳
電池がないから、猫の「トム」はもうしゃべれないの。
私には4人の妹と1人の弟がいます。末の妹は5カ月前にアドレの病院で生まれました。私たちはみんなで一緒に暮らしています。お母さんは私たちの暮らすシェルターの前で小さなお店を開いてお菓子を売っています。スーダンのジェネイナにいた時と、ここでの生活はまるで違う。シェルターには9カ月いるけど、キャンプでの生活はとても大変です。
電気がないからテレビも観ることができません。それに、椅子に座ることが懐かしいです。ここには椅子がないから、いつも床に座っています。
砂漠の真ん中だから、遊ぶ木もないし。でも両親が金属の屋根でできたシェルターを作ってくれたので、そこで寝たり遊んだりしています。ジェネイナから逃げるとき、いくつかのおもちゃを持ってきました。人形と「トーキング・トム」という猫です。でも、トムはもう電池がないからしゃべれないの。
ジェネイナでは学校に通っていたけれど、ここには学校がありません。私は将来、お医者さんになってMSFで働きたいと思っているのに。学校に行かないで、どうやったらなれるんだろう?
初めてここに来たとき、最初に見つけた人道援助のチームがMSFでした。私たちはMSFのことを「アタバ」(アラビア語で「医者」の意)と呼んでいます。私たちきょうだいは病気になると、MSFに行きます。最近は、はしかの予防接種のために行きました。私は妹と違って、注射を打たれても泣きませんでした。痛くもなかったよ。
ラヤンさん、7歳
泥で作ったティーセット。お茶はいかがですか?
ここでの生活はまあまあです。少なくとも銃声は聞こえないし。私は陶芸が好きで、小さなポットやカップ、ティーポット、そして 「マバカー」(アラビア語で、香草を燃やして部屋に香りをつけるために使う道具)を作っています。雨上がりのキャンプで見つけた泥を天日で乾かして作るんだ。
手作りのティーセットで、友達と一緒にお茶会をします。スーダンにいた頃、学校で一番好きだったのは、授業の最後におもちゃのティーセットをもらって遊ぶことでした。でも、もう学校には行けないから、ずっと遊べるように自分で作りました。
MSFのことはよく知っています。病気になったときや、はしかの予防接種を受けたときに、MSFの診療所へ行きました。
MSFに出会ってからは、私もお医者さんになりたいと思っています。いちばんの理由は、糖尿病のために足を切断したお父さんのお世話をしたいから。
アドレに来てからも、包帯を変えてもらうために何度もMSFの診療所に通っています。お父さんは、今は元気。でも、家族のために働けるのはお母さんだけになってしまいました。でもお母さんは洗濯からレンガ拾いまで、どんな仕事でもこなしています。 ここには最初、お母さんが5人の姉や妹たちと私を連れてやって来ました。キャンプで準備を整えてから、スーダンに戻って父を探し、荷車に乗せてここに連れてきたんです。「スーダンの家に帰りたい?」と聞かれても、私は「いいえ」と答えます。私はここでうまくやっているから。
チャドにおけるMSFの活動
MSFはアドレの一時滞在キャンプとアブテンゲ・キャンプの診療所で小児科を支援し、子どもたちに必要な医療を提供。今年7月までに、5歳未満の子どもを対象に4万3709件の小児科診察を実施した。
また、7月8日から13日まで、アドレの一時滞在キャンプで子どもたちへのはしかの予防接種キャンペーンを実施。6日間で、6カ月から14歳までの2万2000人以上の子どもたちがワクチン接種を受けた。MSFはできるだけ多くの子どもにワクチンを届けるため、キャンプ内に7カ所の予防接種所を設置し、移動しながら予防接種を行うワクチン部隊をキャンプ全体に配備した。
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