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スーダン:銃声を止めるだけでは足りない──人びとが尊厳と幸福、医療を取り戻すために

国境なき医師団 / 2024年9月10日 13時7分

チャドに逃れたスーダンの人びと。アドレ病院の患者のために企画された野外シネマにて=2024年4月 © Corentin Fohlen/Divergence

国軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の戦闘が始まってから500日以上が経過したスーダン。栄養失調のまん延やコレラの流行が深刻化する中、医療システムは崩壊し、多くの人びとが医療を受けることができない状況が続いている。

8月、スイス・ジュネーブで開催された停戦協議を機に、国境なき医師団(MSF)スイスの事務局長スティーブン・コーニッシュがスーダンについて語った。1年以上続く人道危機の中、増え続ける人びとのニーズに応えるために必要なものとは。

スーダンの停戦協議を前に

昨年のちょうど今頃、私は戦闘を逃れたスーダンの子どもの声を耳にしました。内戦の初期に家族と共にハルツームからスーダン東部に避難した男の子でした。恐ろしい戦闘下にもかかわらず、その男の子が一番心配していたことは、銃声や空爆が続くことでお腹の空く日々が訪れることでした。彼にとって、内戦とは「食べものがある」といった日常を失うことだったのです。

現在、私はスーダンのニュースを読みながら、この原稿を書いている場所からほんの数キロ離れたジュネーブで行われている停戦協議に思いをはせています。サウジアラビアとスイスが調停役を務め、米国が仲介した一連の和平交渉は、スーダンの紛争当事者を交渉のテーブルに着かせることを目的としていました。内戦で荒廃したスーダンに、平和の礎を築くための長く困難なプロセスの一歩でした。しかし、それは単なる一歩に過ぎません。

政治的対話は不可欠ですが、何百万人もの人びとに尊厳と幸福、そして医療を取り戻すには、銃声を止める以上のことが求められます。

平和への道には、内戦当事者双方の集団的かつ長期的な公約が必要です。医療施設は尊重されなくてはならないし、人道支援は必要な人すべてに行き届くようにしなければなりません。

世界最大の避難民危機

スーダンの危機は多面的です。人口の約5分の1に当たる1000万人が避難を余儀なくされ、世界最大の避難民危機となっています。栄養失調がまん延し、2023年4月から戦闘の最前線にあるハルツームでさえもその脅威にさらされています。MSFは2024年1月から6月にかけて、2万人以上の栄養失調の子どもを治療しました。

医療システムは崩壊しており、70~80%の施設は機能しておらず、数多くの人びとが医療を受けられなくなっています。

内戦が始まって16カ月以上がたちますが、紛争当事者は双方とも人道アクセスを妨害し続けており、敵対勢力が支配する地域に援助が届くのを組織的に妨げています。現地に入るためのアクセスはたびたび制限され、援助関係者の安全は保証されていません。時にはアクセスが完全に断たれることもあります。

こうした状況の中で、MSFは活動の一部を中断することを余儀なくされました。それでもスーダン18州のうち8州で活動を続けています。MSFは、紛争の両陣営が支配する地域で活動を続けている数少ない国際援助団体の一つですが、活動は限界に近い一方で人道ニーズは計り知れません。

無制限の人道アクセスを

チャドなどの近隣諸国に避難した人は200万人。昨年12月、私はチャド東部のアドレ一時滞在キャンプを訪れましたが、私が出会ったスーダン難民のほとんどは、激しい暴力と食べ物がほとんどないことを理由にスーダンから逃れていました。内戦によって農家は作付けや収穫ができなくなりました。市場からは食べ物が消え、あったとしても価格が高すぎるため、多くの人は食料を手に入れられなくなったのです。

事態のこれ以上の悪化を防ぐためには、停戦の有無にかかわらず、大規模な人道援助活動のための安全で無制限のアクセスが認められなければなりません。民間人と人道援助活動のためのアクセス、安全、保護の確保に重点を置き、支配権に基づいて援助を制限したり優先順位をつけたりする行動は終わらせなければならないのです。 また国境を越えた支援も不可欠です。特に雨期には通常の供給ルートは使えなくなります。現地の食料生産と伝統的な輸入市場は深刻な打撃を受けているため、回復にはかなりの時間と投資が必要です。しかし、危機にあるスーダンの人びとにその時間はありません。

スーダンの復興のために

現在、和平への希望はバラバラです。国際社会が協調して長期的な公約を再確立し、十分な資金を提供する必要があります。しかし、和平交渉が終結しても、スーダンの人道危機は続くでしょう。

スーダンの復興には、緊急対応だけでは不可能です。人道援助団体、開発援助機関、復興基金など、スーダン国民の生活の立て直しを支援する長期的なパートナーこそ、この国に必要です。

ジュネーブ和平交渉は、政治的進展のための環境づくりに欠かせません。しかし、1年以上にわたる内戦がもたらした人道危機と、増え続ける人びとのニーズに応えるには、外交だけでは不十分です。和平プロセスは、すべてのスーダンの人びとが食料、医療、基本的なサービスを利用できるようにするとともに、民間人の保護を確保するための具体的な行動を伴うものでなければなりません。 やるべきことはまだ先にあります。そのときが訪れて初めて、私たちは銃声が静まり、人びとが尊厳と安全、そして未来への希望を持って暮らせるスーダンの姿を望むことができるのです。

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