【写真で見る】パレスチナ・ヨルダン川西岸地区:侵攻後のジェニン──人びとはいまも恐怖の中で
国境なき医師団 / 2024年10月3日 15時8分
8月、イスラエル軍による大規模な軍事侵攻が行われた、パレスチナ・ヨルダン川西岸地区。9日間続いた北部ジェニンにおける侵攻は苛烈さを極め、道路の大部分は破壊され、電気網や水の供給も大きな被害を受けた。
昨年10月7日にガザでの紛争が激化して以降、西岸地区への侵攻はますます増えており、暴力の増加はパレスチナ人の身体と心の健康に深刻な影響を与えている。保健省によると昨年10月7日以降、西岸地区で合計705人のパレスチナ人が死亡し、5700人が負傷した。人びとは継続的なトラウマと、予測不可能なイスラエル軍の侵攻という絶え間ない恐怖とともに生きている。
※写真はすべて2024年9月12日に撮影された。
ガザで起きていることは、ここでも…
ジェニンで行われた侵攻の後、 国境なき医師団(MSF)のチームは難民キャンプで心理的応急措置の活動を再開した。サルワとラフマは毎週キャンプを訪れ、住民に会い、メンタルヘルスのチェックを行っている。ラフマは説明する。
破壊のレベルはどんどん大きくなっており、人びとへの心理的な影響もはかり知れません。
「人びとはガザで起きていることが、自分たちのキャンプでも起きるのではないかと考えています。特に女性や子どもたちには、心理的なトラウマの症状もみられます。彼らは悪夢を繰り返し見たり、夜間にたびたび起こる侵攻への恐怖から不安を感じたりしています」
イスラエル軍のブルドーザーで自宅が破壊
自宅のがれきの中にたたずむオマルさん。ジェニン難民キャンプにある彼の自宅は、イスラエル軍によりブルドーザーで破壊された。
徹底的に破壊されたインフラ
侵攻の際、イスラエル軍は道路インフラを徹底的に破壊し、電気と水へのアクセスを遮断した。軍が撤退してから1週間がたった後も、ジェニンの人びとは清潔な水を手に入れることが難しかった。多くのポンプが切断され、貯水タンクは撃たれて破裂していたためだ。
ジェニンの難民キャンプには、銃弾の跡が残る家が多い。住民の話によると、イスラエル兵による家屋の占拠が繰り返されているという。またイスラエル兵は、狙撃兵用の穴を掘るために戦略的なポイントも占拠している。
このような状況下では、人びとは安心して暮らすことはできない。侵攻の残忍さに加え、いつ次の侵攻が来るか予見できないからだ。心理的なトラウマが絶えず生み出されるため、人びとの心のケアも容易ではない。
侵攻にさらされる町ジェニン
ジェニンは、2000年に勃発した第2次インティファーダ以来、イスラエル軍の激しい侵攻の舞台となってきた。最新の推計によると、ジェニン難民キャンプには約1万2000人が暮らしているが、この数字は以前に比べ急激に減少している。度重なる侵攻による治安悪化のため、人びとはキャンプを離れている。
いつ撃たれるか分かりません。でも…
サーレフはMSFの訓練を受けたボランティアの救急スタッフだ。法学部を卒業した29歳の彼は、ジェニン難民キャンプに住んでいる。イスラエル軍による侵攻の間、彼はMSFから寄贈されたトゥクトゥクを運転し、治療を必要とする人びとを搬送した。
路上での運転はとても怖いです。いつ撃たれるか分かりませんから。
「でも、患者をキャンプから連れ出し治療を受けてもらうには、これしか方法がないんです」。そうサーレフは語る。
キャンプで働くボランティアの救急スタッフはサーレフを含めて全員で27人。彼らは皆、自らの命を危険にさらしながら、住民の救命活動を行っている。
次の侵攻に対する恐怖は、いつもそこに
侵攻の際、アンワルさんの家にはイスラエル兵が押し入った。窓ガラスを割られ、上の息子のために建てようとしていた2階に火をつけられたという。また、アンワルさんの妻は6カ月間、罪状も逮捕状もなく刑務所に入れられていたため、彼は一人で4歳の娘の面倒を見ていた。
「毎晩、娘は母親を恋しがって泣き叫んでいました。私は眠ることができず、おもちゃを使いなんとか娘を楽しませようとしました」
アンワルさんの妻は、釈放され家に戻ったとき、自分の娘が深く心を病んでいることに気が付いたと話す。「サイレンや物音がすると、娘は叫びます。私が連れ去られるのを恐れているのです」
いまも、次の侵攻に対する恐怖は消えることはない。
イスラエル軍が戻ってきたときに備えて、私たちは玄関にバッグと靴を用意しています。すぐに逃げることができるようにね。
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