【Kids向け:海外スタッフ体験談】つながれ!支援のバトン 命を守る仕組みを育てる
国境なき医師団 / 2024年10月4日 11時7分
エスワティニという国を知っていますか? アフリカ大陸の南部、モザンビークと南アフリカ共和国に囲まれた、日本の四国ほどの大きさの国です。このエスワティニで「看護師の育成」に挑戦(ちょうせん)した、佐藤太一郎さんの体験談を紹介します!
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佐藤太一郎(さとう・たいちろう)
職種:看護師 活動地:エスワティニ 活動期間:2024年6月~7月(3週間) 看護師として日本の病院や国際クルーズ船で経験を積み、2020年から国境なき医師団に参加。これまでにイラク、パレスチナ、イエメン、ハイチ、チャド、スーダンで活動し、今回が7回目の派遣(はけん)。
一人一人と向き合うことで得た大きな“気づき”
僕はこれまで、国境なき医師団(MSF)の看護師として、イラクやパレスチナなど、さまざまな国で活動してきました。そのどれもが「緊急支援(きんきゅうしえん)」と言って、紛争や自然災害などで医療(いりょう)が受けられなくなった人びとに医療を届ける、という仕事でした。しかし、今回は緊急支援ではなく、「看護師を育てるトレーナー」の役割に挑戦しました。
やって来たのはエスワティニ。2024年、国境なき医師団(MSF)はエスワティニで集中治療室を立ち上げるプロジェクトをスタートしました。集中治療とは、命の危機に直面している患者(かんじゃ)さんを、24時間体制で観察し、高い医療技術で集中的に治療すること。その施設のオープンに備えて、僕は現地の看護師たちに研修を行うことになったのです。 研修に参加した現地の看護師は総勢30名。そのほとんどが、集中治療の経験がありませんでした。未経験の人たちを、短期間で、自立して看護ができるようになるまで育てる──正直、大変なミッションだなと感じました。
大事にしたのは信頼関係を築くこと。質問にていねいに答えたり、難しそうなら伝える内容のレベルを少し下げたり、試行錯誤しながら一人一人と向き合いました。そして無事、集中治療に必要な医療機器の使い方や重症(じゅうしょう)患者のケアを中心に、講義と実習を効率よく組み合わせて、2週間の研修を完了しました。 研修後、参加した看護師から「呼吸の状態の分析や評価ができるようになりました。これから若い看護師たちにも教えていこうと思います」と言われたときは、未来に続くサポートができたのだな、と感じて嬉しかったですね。 「技術を伝えることは、命を守る仕組みを生み出すことだ」と、改めて気づかされました。これからは、患者さんに直接医療を届けることに加えて、「人を育てる」ということにも力を注いでいきたいと思っています。
違う国、違う経験の仲間たち チームワークをどうやって発揮する?
今回の研修では、僕に加えて2人、トレーナーがいて、彼らとのコミュニケーションにも気を配りました。みんな看護のプロですが、国も違うし、これまでの経験もバラバラ。日本人同士でも何かを一緒にやるとなれば、意見の食い違いは起こりますよね。それが外国人同士となると、もっと「おや?」と思うことが出てくるんです。 それでも、同じチームとして、力を合わせて研修を進めていかなければなりません。いかに頭を柔らかくして、お互いを理解しようと努力できるか──そうやって、トレーナー3人でたくさんミーティングを重ねたことで、ニーズに合った研修コースを作り上げることができました。みんなで仲良く頭を悩ませながら、良いチームワークを築けたなと思っています。
平和な街並み しかし……
エスワティニはこれまで活動した場所の中で、一番安全だったと思います。MSFの宿舎や病院があった地域は、例えて言えば、日本の地方都市を2㎞四方に切り取ったような、のどかな街並み。道路はきれいに整備されているし、スーパーマーケットや銀行、映画館など生活に必要な施設は全部そろっていました。あまりに平和に見えるので、「MSFが活動する必要はあるのかな?」と思ったくらいです。 でも、よく調べてみると、5歳未満の死亡率など、医療レベルを表す数字は良いとは言えない。そして、HIVや結核の感染者も多くいます。病院があるからと言って、それに見合う医療ができているかと言えば、決してそうではないんだ、ということを改めて感じました。
MSFの活動は楽しい! すべてが経験と学びになっていく
MSFで国際協力というと、「長期間、行かなければいけない」と思っている人も多いようです。でも、働き方はさまざま。実際、今回の僕の活動は3週間でした。トレーナーの一人だったイタリア人看護師も、母国の病院で仕事をしながら、年に数回ほど、短い期間で参加しているそうです。また、看護師というひとつの職業の中にも、手術室看護、感染管理、マネジメント、教育と求められる業務は色々とあります。参加期間や職種、役割は十人十色です。そうやって多種多様な人たちが、「命を守りたい」と日々活動し、その想いをバトンにして、未来へとつないでいるんです。 そして、何より声を大にして言いたいのは、「MSFの活動は楽しい!」ということ。もちろん、大変なことも多いですが、すべて自分の経験と学びになっていく、そしてそれが誰かの命を守ることになる、という本当にステキな仕事です。だから、僕もこれまで続けてこられたし、これからも続けていきたいと思えるんです。 MSFの活動に少しでも興味がある方は、ぜひチャレンジしてほしいと思います!
エスワティニでの一日
7:00
起床、朝食
7:30
宿舎から研修所のある病院まで、車で移動
8:00
研修スタート
12:00
ランチ
17:00
研修終了。トレーナーチームでミーティングを行い、次の日の研修内容を確認
18:30
車に乗り、宿舎へ移動
19:00
運動(ランニングなど)、買い物など自由時間
19:45
夕食。MSFメンバーと一緒に食べることが多いが、つかれた時は無理せず一人で休む
21:00
メンバーと次の日の研修資料の見直しなど。準備が落ち着いていればメンバーと団らんのひととき
22:30
就寝(次の日の準備でもっと遅くなることも……)
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