スーダン:戦火のなか押し寄せるコレラ──人と物資を一刻も早く現地へ
国境なき医師団 / 2024年10月4日 17時7分
内戦が続くスーダンに、コレラの猛威も襲いかかってきた。戦火に苦しむ人びとが、さらなる危険と死の脅威にさらされている。国境なき医師団(MSF)の緊急対応チームは、コレラ患者の治療に努めており、水・衛生活動の支援にもあたっている。
コレラとは?
コレラ菌を原因とする水媒介性の感染症。コレラ菌に汚染された食物や水、あるいは感染者の便や嘔吐物との接触によって感染する。感染すると、激しい下痢や嘔吐を繰り返すようになり、治療しなければ数時間以内に致命的症状に陥る。一方、コレラの治療そのものはシンプルで、水分補給がカギとなる。
スーダンでコレラ流行宣言
今年8月、スーダン当局はコレラ流行を宣言した。特に、カッサラ州、ゲダレフ州、リバーナイル州、ジャジーラ州、ハルツーム州の5州が深刻な感染地となっている。スーダン保健省によれば、コレラ患者の数は5000人以上、死者数は191人になるという。8月後半には、1週あたりの症例数が4倍に増加した。
スーダンでは、コレラの症例そのものは珍しくない。それでも、2023年4月に内戦が始まって以来、コレラ流行が2年連続で起こっているのは異例である。この2年間、MSFは、コレラ流行の影響を抑えるべく、緊急対応に努めてきた。スーダンにおいてMSFの緊急対応コーディネーターを務めるエスペランサ・サントスは、次のように語る。
「スーダンでは、何百万もの人びとが劣悪な生活環境下に置かれています。飲料水すら満足に手に入らない。とりわけ狭い場所に押し込められた避難民キャンプの人びとは深刻な環境にあります」
それに加えて、この国では、激しい洪水や豪雨が続きました。こうした諸条件が重なって、コレラが猛威を振るっているのです。
スーダンは、内戦という危機的状況にある。医療システムも壊滅的な打撃を受けた。そこにコレラ流行という試練が追い打ちをかけているのだ。この国では、子どもの栄養失調が増大し続けており、内戦による負傷者も後を絶たない。予防できるはずの病気も予防できずに増え続けている。しかも、紛争を繰り広げる両陣営の妨害によって、人道対応も満足にとれない状況にあるのだ。
MSFが現在取り組んでいるコレラ対応
MSFのチームは、ハルツーム、リバーナイル州、カッサラ州、ゲダレフ州において、スーダン保健省を支援すべく対応活動に入っている。コレラ治療センターや治療ユニットを新設するほか、患者の急増を受けて手詰まりになっている既存の治療施設への支援にも回っている。とりわけ、感染の深刻な地域や、交通アクセスが困難な地域に重点を置いているところだ。8月末から9月9日にかけて、MSFは、支援施設において2165人の患者の治療にあたった。
現地でMSFの人事コーディネーターを務めるアンジェラ・ジャコマッツィが、次のように語る。
「ある成人男性が施設に運ばれてきました。すでに意識を失っていました。脱水症状が進行すると、体はショック状態に陥ります。その段階に達すると、数分のうちに手遅れとなるのです。医師たちは、彼を蘇生させるため、5分間にわたって何リットルもの輸液を静脈に注入しました。彼の唇は青紫色になり、呼吸も速くなっていました」
男性は、その後、幸運にも生還したという。
MSFは、感染の深刻な地域において、経口補水施設の設置、飲み水のトラック輸送、手洗い場やトイレの建設、衛生キットの配布、健康講座の運営などにあたっている。ダルフール地方では、まだ症例は確認されていない。しかし、MSFは、準備態勢の強化に努めているところだ。
人道援助に対する規制撤廃を要請
MSFで医療コーディネーターを務めるフランク・ロス・カタンブラは、次のように語る。
「現在こうしている間にも、人びとがコレラで命を落としています。MSFは、国連や国際機関に対して、資金援助と活動拡大を求めているところです。特に、感染流行が致命的レベルに至るのを防ぐためにも、水と衛生サービスの強化が不可欠です」
この17カ月近くにわたって、スーダンにおける人道援助は、多くの困難と妨害に直面してきた。MSFは、交戦中の両陣営に対して、医療スタッフや物資の輸送妨害をやめるよう求めている。医療を必要としている地域に向けて迅速な対応をとり、防げるはずの死を防がなければならない。
先ほどのカタンブラが、最後にこう述べた。
「対応活動を強化していく上で懸念されるのは、コレラキットなどの必需物資が枯渇することです。MSFは、物資や医薬品をスムーズに輸送できる体制づくりを当局に求めています」
敵側の支配エリアに向かう者にビザを発給しない、などといった行政的妨害が、私たちにとって重い障壁となっているのです。
スーダンにおけるMSFの活動状況
ゲダレフ州
【タネドバ】
タネドバ病院においてベッド数50床のコレラ治療ユニットを運営。感染者の多い村では3カ所の基礎診療所を支援し、水の塩素消毒および配給、寄付も行う。ベッド数20床からなるコレラ治療ユニットを新設するほか、緊急患者の搬送活動も実施している。
【ゲダレフ市】
国内避難民キャンプの周辺にて30床のコレラ治療ユニットを建設。軽症患者については、地域の経口補水施設で外来治療にあたっている。また、緊急用トイレの設置、飲料水の輸送と配給、石けんの配布も実施。さらに、患者の搬送活動も行っている。
リバーナイル州
【アトバラ】
州内で被害が最も深刻なアドバラでは、100床のコレラ治療センターを設置し、運営支援にあたっている。
カッサラ州
【カッサラ】
教育病院内で200床からなるコレラ治療センターを支援。症例管理を行い、経口補水施設も設置した。
【ワド・アル・フルウ】
地区南部での急増する症例に対応するため、地方病院の支援準備を進めている。
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