2人に1人しか治療されていない子どもの結核──国境なき医師団の調査報告で課題が浮き彫りに
国境なき医師団 / 2024年10月25日 17時5分
世界の結核対策の中で、小児結核にかかった子どもたちが取り残されたままだという現状が、国境なき医師団(MSF)の報告書によって明らかになった。
結核の高まん延国を含む多くの国々で、自国の診療方針が世界保健機関(WHO)の最新のガイドラインに沿っていないことも、この報告書で浮き彫りとなった。世界で結核に罹患している子どものうち、診断や治療を受けている子どもは半数にとどまっている、その要因となっている。 MSFは、全ての国に対し、WHOのガイドラインに沿うよう自国の結核診療ガイドラインを更新し、必要なリソースを割り当てて実行に移すこと、そして、結核の予防、診断、感染児の治療へのアクセスを増やすための具体策を期限付きで策定することを要請する。各国がこれを円滑に遂行するためには、国際的な資金拠出機関と援助国、および技術支援機関による十分な資金提供が欠かせない。 MSFアクセス・キャンペーン診断検査顧問、ステイン・デボルグレブは「WHOが更新したガイドラインは世界で最も致命的な感染症のひとつである結核に感染した子どもに、最善のケアを用意するためのものです」と語る。
「しかし、小児結核の検査、予防、治療において、これらの解決策の導入と実施は遅れています。私たちは各国、資金拠出機関と援助国、技術機関に対し、この惨状に終止符を打ち、小児結核のタイムリーな診断と治療開始を図る対策の強化を強く求めます」
もはや無為に過ごす余裕はありません。どれ一つ遅れても、避けられたはずの死につながるのですから。
WHOのガイドラインと現状がかけ離れている
MSFの報告によると、自国の結核診療ガイドラインがWHOのガイドラインと完全に一致しているのは1カ国だけで、7カ国は80%以上、4カ国は50%を下回った。ケアにおいて最もかけ離れていたのは、小児の結核診断に関する政策だった。 例えば、細菌検査が陰性でも、結核の兆候がはっきりしている小児には治療を開始するというガイドラインを適応させている国は、14カ国中5カ国に過ぎない。さらに、このガイダンスを効果的に実施するために必要なリソースを有しているのは、これら5カ国のうち4カ国のみである。 WHOの推計によると、毎年125万人の子どもと青年(0~14歳)が結核に罹患している。しかし、診断と治療を受けられているのはその半数にすぎない。最新のエビデンスに基づき、WHOは2022年に子どもと青年における結核ガイドラインを改訂し、いくつかの重要な勧告を行った。 これには、検査で確認できなくても、症状のみに基づいて診断できるようにする治療決定アルゴリズムの採用や、小児結核の治療・予防に用いる短期経口レジメンなどが含まれる。より広く採用され、実施に至れば、感染児の診断と治療の質は飛躍的に向上するだろう。
死亡数の大幅減という成果に
シエラレオネのマケニにあるMSFの准医師、ジョセフ・セシーは「ボンバリ県の子どもにWHOの勧告を実行し始めてから、大勢の結核感染児が見つかり、治療を始めるようになりました」と話す。 「この新しい勧告のおかげで、子どもの誤診を避けられています。これまで検査で陽性の結果が出なければ、子どもに治療を開始することをためらっていた医師も、WHOの勧告を採用することで、臨床症状だけで結核を診断することに自信を持てるようになりました」
勧告を実行してから、多くの診療所で感染児の死亡数が大幅に減少していることに気づきました。
今こそ、MSFの医療ツールや治療法を子どもたちに届ける時
しかし、やるべきことは診療方針の変更だけではない。現在WHOは、小児の薬剤耐性結核と(DR-TB)治療において、より短期間で経口薬だけで完結する新しいレジメンを推奨しているが、高価格やその他の障壁に阻まれて各国での普及は遅れている。 さらに、薬剤感受性結核やDR-TBには、子どもにやさしい新しい治療薬が流通し始めたものの、全ての国で入手できるとは限らない。
MSFのワーキンググループのリーダーを務めるキャシー・ヒューイソン医師は「行政手続きの壁や資金不足のために、結核治療薬の小児用製剤が利用できない国が多いのは残念です」と語る。
結果として感染児は、成人用の薬を砕いた苦い薬を飲まざるを得ず、また、体重に応じた適切な用量を飲むことも難しいので、副作用や治療失敗の危険にさらされています。
「こうした現状の放置は今すぐやめるべきです。私たちMSFは政府、資金拠出機関と援助国、国際保健機関に対し、結核のように予防も治療も可能な病気で亡くなる子どもを一人たりとも出さないよう、最速で行動するよう求めます」
今こそ、私たちが持っている医療ツールや治療法を、最も必要としている子どもに届ける時です。
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