フィリピン:台風「チャーミー」がもたらした猛烈な雨と洪水──多くの家や水田も被害に
国境なき医師団 / 2024年11月14日 17時6分
毎年、平均して20の熱帯性低気圧が発生するフィリピン。10月21日から24日の4日間、台風「チャーミー」(日本では台風20号)はルソン島とビサヤ諸島全域に猛烈な雨を降らせ、広い範囲で洪水と地滑りを引き起こした。国内17地域で700万人以上が被災し、100人以上の死亡が報告されている。
被害が最も大きかったのは、ルソン島の南カマリネス州だ。州では37市町村のうち36が浸水。洪水で家や農作物を失った世帯もおり、人びとの生計や暮らしへの影響は計り知れない。
10月26日、国境なき医師団(MSF)のチームは、いち早く現場に駆けつけ、被災した住民への緊急対応を開始した。MSF緊急対応チームの医療チームリーダーを務める医師のマーベ・ドゥカ・フェルナンデスが、現地の状況について伝える。
被災地の状況とニーズとは?
MSFのチームが訪れた地域には、水が引いたばかりの場所もありました。このような場所は医療へのアクセスが遮断されていたため、安全な飲み水や医薬品が必要になります。また、慢性疾患の人びとは、定期的に服用する処方薬もない状況でした。
何日間にも及ぶ洪水の影響で、人びとの間には、開放創(外部からの力による損傷で皮膚に開口、亀裂が生じたもの)、真菌感染症、またレプトスピラ症などの媒介生物感染症のリスクが生じています。
被災した地域の人びとが口々に訴えることの一つが、生計についてです。私たちが被災した人びとに聞き取りの会を開いた時のことです。それは、心理社会的な側面からのアプローチを試みるものでした。皆、浸水や片づけが終わった後の生活について前向きに考えようとするものの、生活の再建がどれほど難しいかを考えてしまうのです。
生活の糧である水田や家畜、農機具は流され、すべてが破壊されてしまったからです。
MSFはどのような支援を行ってきましたか?
MSFは地元当局と調整して被災地を訪問し、被害の最も大きかった地域の調査を行いました。そして、南カマリネス州のブラという町に焦点を当てました。河川に隣接したこの町には、数万人が暮らしています。
MSFはファブリカとオンバオ・ポルポグという2つのバランガイ(フィリピンの地域コミュニティ単位)を訪れ、移動診療を行いました。また、特に被災状況の厳しい人びとに向け、心のケアや心理社会的支援のセッションも実施し、衛生キットや飲料水も配布しました。また、サンミゲル郊外ではフォローアップを行い、2つのバランガイでも移動診療を行いました。
診療やメンタルヘルスの支援、衛生キットや水の配布といった包括的な支援を、特定のバランガイに対して実施しました。
アクセスと供給が大きな課題に
私たちが到着した当初、多くのバランガイはまだ浸水しているか、そこにたどり着くための道路は水没しているかだったため、軽車両では通行できませんでした。MSFのチームは地元当局と調整し、ボートやトラックでこれらの地域を訪れ、現地のニーズを把握し、物資やチームを送る方法を決めました。
さらなる課題は、必要な医薬品や物資を十分に揃え、地域に派遣できるチームを整えることです。医薬品に関しては、さまざまな要因が絡み合う問題です。現地の店舗や倉庫の大半は浸水しましたが、その在庫は首都マニラから届いていました。しかし、物資の供給は滞り、医薬品の配達にも遅れが生じています。また、道路の冠水や、検問といった治安上の問題もありました。
同時に、南カマリネス州では、多くの人が洪水により供給を断たれ、薬への需要が高まりました。その結果、ドラッグストアの棚がすべて空になってしまったのです。そのため、MSFが提供する医療の質にも影響を及ぼしました。MSFの医療活動にとって薬は非常に重要なため、私たちは医薬品をマニラから輸送することにしました。
地元ボランティアと協力しながら
南カマリネス州の活動では、各団体や病院から来てくれたボランティアの存在に助けられました。医師、看護師、地方自治体のボランティア、そして個人の方々が、情報やリソース、時間を提供してくれたのです。
MSFは、ビコール医療センターのボランティアの医師や看護師と協力して活動を行いました。保健省や町の保健所の看護師たちとも協力しています。私たちがバランガイに行くときはいつも、バランガイのヘルスワーカーが歓迎してくれます。MSFは彼らと共に移動診療を行い、皆トリアージや診察、調剤を手伝ってくれました。
彼ら自身も洪水の被害に遭っています。それでも、彼らはバランガイのため、コミュニティを支援するためにそこにいてくれたのです。
フィリピンにおけるMSFの緊急対応
MSFは2週間にわたり、南カマリネス州のいくつかの町でニーズ調査を行った。カマリガンのバランガイでは、MSFは190世帯に安全な飲料水の入った90個の水タンクを配布した。
その後はブラの町に重点を置き、いくつかのバランガイで緊急ニーズに対応。ファブリカ、オンバオ・ポルポグ、サンミゲル、カスガドで、700個の衛生キットと1110個の安全な飲料水の入った水タンクを配布した。また、MSFは地元のボランティアと協力し、ファブリカ、オンバオ・ポルポグ、サンミゲル、カスガド、サルバシオンのバランガイで、1449件の診察を行い、238人の被災者に心理社会的支援を実施。緊急事態の最も深刻な段階は過ぎたため、MSF は11月8日に緊急援助活動を終了した。
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