シリア北部:局地的な衝突で大勢が避難──人道ニーズの高まりを受け緊急援助を提供
国境なき医師団 / 2024年12月12日 17時35分
シリアでは政権の崩壊後、一部の地域で衝突が続いている。地元当局によると、8万人超がシリア北西部のアレッポ北部からシリア北東部のタブカ、ラッカ、ハサカに避難した。北東部地域での人道ニーズの高まりを受け、国境なき医師団(MSF)は新たに避難民となった数万人の人びとへ緊急の医療・人道援助を提供。さらに避難民が増える可能性もあり、MSFは民間人の保護と国際社会による支援の拡大を求めている。
医療も水も避難所も足りず
シリア北東部でMSFの副活動責任者を務めるアレン・マーフィーはこう語る。
「避難している人たちは、医療や清潔な水など、基本的なサービスを今すぐ必要としています。気温が大幅に下がっているので、避難所も必要です。状況次第では、さらなる避難民が押し寄せる可能性もあります」 タブカではスタジアムや学校が避難先となっているが、これらは宿泊用として設計された施設ではない。気温は氷点下まで下がるが、毛布も不足している。当局が十分な準備をする時間や資源がなく、トイレも飲料水も食料も足りない状況だ。避難民を受け入れているいくつかの地域では、多くの人が押し寄せ、既存の医療活動を続けるのが困難になっている。
困難が続くシリアの避難民
アレッポ北西の町アフリンから避難してきた女性は「今のところ、これからどうするあてもありません。私たちにとって、これは2度目の避難です。空爆と銃撃があり、地域を離れました。いつか故郷の村に戻りたい。今や全てが変わってしまいました」と話す。 MSFは、避難民がアレッポ北部のテル・リファート(シャフバー)からシリア北東部への移動中に暴力に遭っていると報告を受けている。 避難してきたある男性は、こう恐怖を語った。「シャフバーは悪夢のようで、何が起きているかも分かりませんでした。移動の途中、武装した大勢の人たちを見ました。『お前らの後をつけていくぞ』と脅されました。そして、真夜中過ぎに400台以上の車列に出会いました。軍服を着、たいまつを持った人たちに止められ、携帯電話をよこせと怒鳴られました。 軍服を着ていましたが、誰だかわかりません」
MSFは援助物資や緊急医療を提供
この1週間で、MSFは1万本超の水、200張りの大型テント、乳児用粉ミルクパックと紙おむつ、毛布、マットレスを、タブカで緊急に援助を必要としている人びとに配布した。これらの必需品は、家を追われた人びとの健康と尊厳を守るために不可欠だ。 物資の提供に加え、MSFは給水車による清潔な水の供給や、緊急避難所の提供、急速に高まる医療ニーズに応える移動診療の運営を行っている。 MSFのシリア担当オペレーション・マネジャーを務めるマルティヌ・フロクストラは「私たちは人びとの新たなニーズへの対応継続に全力を尽くしています。しかし、そのニーズが広がる速さは、対応にあたる人びとの能力やリソースを上回っています。弱い立場におかれた人びとの多くは何度も避難生活を強いられています。彼らに支援を届けるため、人道援助の緊急かつ大幅な拡大が必要です」と話す。 シリア北部では、近隣諸国からの潜在的な脅威に伴い、暴力が局地的に起こり、衝突も続いている。これにより市民は危険にさらされている。 フロクストラは「人びとの苦境が急に覆ることはありません。その背景には、政情不安と避難があります。大勢の人がシリアへの帰還を選択している現在も、自らの意思で選択したかが重要です」と話す。 MSFは、民間人の保護と、全ての紛争当事者がシリアの人びとのさらなる苦しみと避難を避けるために必要な全ての措置をとることを求める。さらに、人道援助団体が人命を守るための援助を安全に届けられるよう求める。
シリア北東部でのMSFの活動
シリア北東部でMSFは、非感染性疾患に対応する基礎診療所を支援するほか、心のケアや心理に関する活動を行っている。また、栄養治療のための入院および外来病棟、救急処置室で活動。アルホールでは浄水プラントを運営し、アルホール・キャンプに住む人びとに安全な飲料水を提供している。さらに、他の緊急事態に備えるとともに、はしかやコレラの流行に対応している。 MSFは現在、最近まで旧シリア政府が支配していた地域では活動していない。
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