「世界から切り離されたよう」「遺体安置所は満杯」──戦闘激化のコンゴは今、現場からの報告
国境なき医師団 / 2025年2月5日 18時11分
コンゴ民主共和国(以下、コンゴ)の反政府勢力M23とコンゴ政府軍、それぞれの同盟国軍の戦闘が、コンゴ東部の主要都市ゴマの中心部に及んでいでいる。現地は今、どうなっているのか。国境なき医師団(MSF)はどう対応しているのか。ゴマのMSF緊急対応コーディネーター、ビルジニー・ナポリターノが語った。
路上に散乱する軍服と武器
状況は、非常に混沌としています。
当初は砲撃の応酬がありました。そして、家や職場のすぐ近くで多くの銃声が響きました。ようやく外に出ることができた時、街には軍服と薬きょうが転がっていました。路上には多くの武器も放置されていて、その一部は人びとや武装勢力に回収されました。
市内で多くの略奪が発生しました。MSFを含む多くの国際組織の倉庫が被害を受けました。その中には、避難民キャンプ向けの医薬品など人道援助物資が含まれていました。ほとんどの人道援助団体は、もはや活動できない状況です。
「ゴマが世界から切り離されたよう」
ゴマの人口は約200万人。これに加え近年の戦闘で避難した65万人が市街地周辺にある衛生環境の悪いキャンプに暮らしています。MSFの医薬品の備蓄は少なく、当面はキャンプでの活動を中止しています。一方、ビルンガ総合病院には医療キット、燃料、水を寄贈することができました。
市内は1週間にわたり停電が続き、混乱に拍車をかけました。まるで、ゴマが世界から切り離されたかのようでした。水も断たれ、今も多くの人びとは飲料水を手に入れることができません。
ゴマの住民や避難民は、離れたキブ湖まで水を汲みに行くことを余儀なくされています。幸いなことに、現地に赤十字がおり、彼らは人びとが水を運ぶ缶を塩素で消毒し、コレラなどの水系感染症の蔓延を防ごうとしています。
しかし、こうした努力にもかかわらず、ゴマでコレラの症例がいくつか報告されました。MSFは、この病気に苦しむ人びとの治療支援と、市内の水と衛生に関する活動を始めています。
MSFの対応は
ゴマ市内で戦闘が激しくなる前、MSFのチームは保健省管轄の病院を支援すべく、市西部のキシェロ病院で栄養失調の子どもたちのケアを行っていました。
事態が悪化した後は、すぐに多数の負傷者に対応する計画を作り、ヌドショ病院で赤十字国際委員会(ICRC)の支援を始めました。この病院に多くの負傷者が押し寄せ、対処が難しくなっていたからです。
1月23日に最初の負傷者が病院に到着しました。1月29日だけで140人近くの負傷者が運び込まれ、その多くが入院しました。この日は初めて戦闘が下火になったので、自宅にとどまっていた負傷者も病院に来ることができたのです。
M23の攻勢が始まった当初、私たちは主に破片で負傷した患者を受け入れました。爆弾や砲弾が爆発すると、その破片や砕けたコンクリート片などが飛び散り、人を傷つけるのです。
最近では、流れ弾が当たった民間人を含め、主に銃弾による負傷者を受け入れています。戦闘の近くにいて身を守れなかった人びとや、家にいるときに負傷した人びとです。銃弾は木造住宅の壁を貫通します。
私たちはまた、戦闘に参加していた人びとや兵士も受け入れています。
病院の遺体安置所は満杯
キシェロ病院の遺体安置所は今、遺体であふれています。ほとんどが身元不明です。これらの人びとに尊厳ある埋葬を行えるよう、保健省と協議しています。他の病院の安置所も一杯です。
赤十字と消防隊が遺体の回収を続けていますが、犠牲者の数は、衝突や暴力が完全に止まり、すべての回収作業が終わる時まで集計できないでしょう。
MSFや保健省のチームが最善を尽くしているにもかかわらず、キシェロ病院は多数の負傷者に圧倒されている状態です。この病院では医薬品だけでなく、スタッフ、特に外科手術の専門家も不足しています。
病院スタッフの中には、市内での戦闘のために出勤できない人もいました。日曜日からすでに現地入りしていたスタッフは、まともに寝ることもできないまま4日間連続で泊まり込み、すべての治療にあたりました。
移動ができないため、患者のために医療器具や医薬品、食料を運ぶことができず、活動は大きな影響を受けました。
緊急課題は
MSFにとっての緊急課題は、医療機器と医薬品の在庫をできるだけ早く補充すること、専門スタッフを投入すること、特に外科治療を強化することです。
私たちは1月30日に市の西に位置するいくつかの避難民キャンプを訪れました。各キャンプで状況はかなり異なっていましたが、その中のカシャカ・キャンプでは、市内で起きた数々の略奪事件に、人びとが特に不安を抱いていました。
避難民はもはや、どこも安全だとは感じていません。シェルターを解体し、他の場所で安全を確保しようとキャンプを離れる人も出てきました。残った人びとは、故郷に戻れるのか、それとも武装集団に強制されるのか、不安を抱えたままです。
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