もっとも注目すべき医学のブレイクスルーBEST20

MYLOHAS / 2018年1月2日 20時0分

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2017年、世界中の研究者が取り組む命を救う新たな治療が多々発見されてきました。
そのなかから、特に魅力的なベスト20をご紹介しましょう。

1. 身体の再生

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再生医療──。傷付いた組織や臓器を再び作り出したり、ほかのもので置き換えたり。2017年、大きな飛躍がありました。オハイオ州立大学の研究グループが発表した「ナノ形質移入」と呼ぶ方法。身体に小さなチップを埋め込む「TNT技術」という方法を取ることで、皮膚の細胞を再プログラミングして、臓器や血管を生み出せるというものです。

あるDNAを操作して、「ある細胞をほかのタイプに変えてしまう」とオハイオ州立大学教授でこのプロジェクトの共同リーダーのジム・リーさん。

身体への負担がかからないこの方法は、切手サイズのチップを皮膚に置くだけ。そこから小さな電気を送って、DNAの断片を身体の中に送り込むのです。1秒もかからずに。この方法は動物でやっただけにすぎませんが、マウスの傷付いた足に血管を作り出したり、脳卒中を起こした後に神経細胞を復活させたりすることに成功しているんです。人を対象とした臨床試験も2018年に始まる予定です。

2. スマートフォン心臓モニター

心臓の働きをもっと便利に調べられる仕組み。スマートフォンの背面に小さなデバイスをつけて、医療現場で使えるレベルの心電図を取ることができるのです。毎月の結果を、主治医に直接送ることができます。

FDA(アメリカ食品医薬品局)の承認を待っている段階ですが、Apple Watchのバンドに指を置くだけで心電図が取ることもできるようになります。

「高カリウム、または低カリウムになって突然死してしまうリスクを予知するAIシステムをメイヨー・クリニックと協力して開発している」と、モニターを製造しているアライブコー社の最高経営責任者(CEO)、ビック・ガンドトラさん。

3. リキッドバイオプシー(血液から組織を検査する方法)

がんを見つけ出すために血液から細胞をピックアップして検査する「リキッドバイオプシー」。今年は大きな進歩がありました。がんの転移がある人にとっては、治療できるうちにがんを見つけ出す方法として有望です。

「腫瘍のDNAの見つけ出すのは、干し草の山から1本の針を発見するよう」と、最新研究を指揮するニューヨークのスローン・ケッタリング記念がんセンター腫瘍科、ベドラム・ラザビさん。

開発中の検査は一度に多くを調べることが可能。がんにつながる遺伝子変異のどれを調べているか、医師が意識する必要もなくなるのです。

4. すぐに効く抗うつ薬

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うつに悩む人のうち5分の1の人は、ほとんど薬が効いていないのです。ところが、静脈に注射する麻酔薬である「ケタミン」を使うことで、わずか数時間で薬の効かなかったうつ病の症状が軽くなるとわかってきました。

「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)に代わる革新的な治療法になる可能性がある」と、ケタミンを鼻にスプレーするタイプの研究をしている、マサチューセッツ大学医学部精神科医のアンソニー・ロスチャイルドさん。

ケタミンは50年に1度の薬になり得るよう。さまざまな神経学的な経路から効果を発揮し、うつの症状を緩和してくれるというのです。うつのメカニズムの考え方も大きく変える可能性があるとのこと。

ケタミンには難点も。強力な効果は7日~10日続くのですが、繰り返し注入しても安全かがよく分かっていないのです。血圧を高めたり、幻覚を引き起こしたりすることもあり、副作用を減らした同じタイプの薬の開発も進行中。2、3年で有望な薬が見つかる可能性があるそう。「月を追うごとに希望が高まっている」とロスチャイルドさん。

5. 膵臓がんの早期発見

米国ではがんによる死因の第3位。膵臓がんはほとんどの場合に、がんがあちこちに転移した段階で見つかるもの。結果として、発見されたときには致命的であることも珍しくありません。ところが、早期発見につながる発見がありました。

進行したがん細胞を、幹細胞の状態まで時計を逆回りさせる研究から、膵臓がんの早期に血液の中に現れてくるたんぱく質を2つ特定したのです。

「実に有望な研究です。もっともさらに調べる必要ありますが」と、メイヨー・クリニックのグロリア・ピーターソンさん、ペンシルべニア大学再生医療研究所ディレクターのケン・ザレットさんは言います。すべてがうまくいけば、数年以内で病気になるリスクを抱えた人の検査をできるようになるとのこと。

6. 手術で使える瞬間接着剤

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何の変哲もない「ナメクジ」から思いついたのが、手術で使える瞬間接着剤。針や手術用ステープラーに取って代わるものとして注目されそうです。

「ナメクジを刺激したときに分泌される粘液を研究し、新しい接着剤の開発に至ったのです。粘液をもとに作ったハイドロゲル。強くて、毒もなく、やわらかく、湿った場所でも使える。血液で覆われていてもです。次世代の包帯のように、傷口を治すときにも使われるでしょう」と、カナダ、モントリオールのマギル大学准教授、ジャンユー・リーさん。

動物の試験では、ブタの心臓の穴をふさぐことにも成功。さらに、ハーバード大学のワイス生物工学研究所とも組んで、使った後に分解される生分解性のある接着剤の開発も進めるそうです。

7. 脳深部刺激治療による脳卒中からの回復

2017年、脳の奥に電気刺激を加える「脳深部刺激治療」を脳卒中患者に初めて実施したクリーブランド診療所の研究グループ。女性患者に行ったところ、運動機能の回復が予想を大きく上回ったのです。

「治療はもともと4カ月の予定でしたが、経過が良かったために継続しています。研究グループを鼓舞するような結果。麻痺や衰弱につながる脳卒中になっても、身体の機能を回復させられる可能性があるのですから。脳卒中になった550万人もの米国人は、半数近くが介助なく日常生活を満足に送れなくなっているのです」と試験を進める同診療所神経学研究所長で、神経外科医のアンドレ・マチャドさん。

脳の深部への刺激は、通常パーキンソン病患者に用いられますが、神経のつながりを増やして、脳の機能を元に戻していく可能性もあります。標準的なリハビリの効果を引き上げてくれるかもしれません。現在、ほかの患者への治療も行っており、すぐに10人を超える人に実施する計画を立てているようです。

8. 3Dプリンターによる脊椎インプラント

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2017年、3Dプリンターによる「チタン製インプラント」が本領を発揮。脊椎の形の異常を治せるようになりました。インプラントは、パウダー状のチタンから作られるもので、表面はでこぼこで、多くの微小な穴が開いた構造。この特徴のために身体になじむというのがポイントです。

「3Dプリンターの技術を応用し、インプラントを移植した後に、骨がここを足場にして成長してくれる」と、エリック・メジャーさん。今年、FDAの承認を得た3Dプリンター製インプラント、2製品を作るK2M社の社長兼CEOです。

K2M社のインプラントの一つは、椎骨を1つ除いたときでも、そこにはまることで、脊椎を安定させることが可能。もう一つのシリコン製のインプラントは、骨盤と脊椎をつなぐ「仙腸関節」の異常があるときにつかわれます。ここは長引く腰痛の原因のうち4分の1に関わる大きな問題です。

9. 視力だけではないコンタクトレンズ

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コンタクトレンズをヘルスモニターに変える「透明センサー」を開発したオレゴン州立大学の研究グループ。血糖値や尿酸値などを測定できるようにしてしまうといいます。

「100以上のセンサーをレンズに組み込めるはず。コンタクトレンズによる血糖値のモニターを使えば、血糖値を測るために指先を針で刺すことは不要に。がんの早期発見、ストレスホルモンの測定、スポーツのパフォーマンスの改善にまで使える可能性もある」と、研究を指揮する同大学化学工学分野教授、グレゴリー・ハーマンさん。研究がうまくいくと、5年以内に発売されるといいます。

10. ドリルを使用しない歯科治療

歯の詰め物を時代遅れにする、新しい技術を発表したのは英国の研究チーム。幹細胞の力で歯の組織の成長を促し、歯の修復を実現してしまうというものです。

「タイドグルーシブという薬(臨床試験中のアルツハイマー病の薬)を少し使うと、歯の内部を形作る"象牙質"の成長を促し、歯を再生させる」というのがロンドン・キングス大学歯科研究所による発見。

マウスの実験では、薬を生分解性のスポンジに浸し、幹細胞の存在する歯の中心部の「歯髄」に詰めると、新たに象牙質の成長が開始。数週後には、スポンジは分解され、歯は完全に修復されたそう。

11. 卵巣がん、乳がんの新薬

卵巣がんの進行を2年遅らせ、乳がんにも効果を示すという「PARP阻害薬」と呼ばれる新タイプの薬。既に発売された3つの薬は化学療法でダメージを受けたがん細胞に効果を示し、ダメージの修復をできなくするのが特徴です。卵巣がんの薬が新たに承認されたのは米国では2006年以来初めて。

研究の初期には、これらの薬が効くのは、BRCA1とBRCA2と呼ばれる遺伝子に変異のある女性だけと考えられていました。ですが、現在はもっと多くのがん患者に有効であると考えられるようになっています。最近使えるようになったPARP阻害剤「ゼジュラ(Zejula)は2017に年承認されましたが、BRCA遺伝子変異がなくても使えるようになっています。

12.パーソナルロボット

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2017年、家庭にやってきたのが、パーソナル・ヘルスケア・ロボット。人々の健康管理をお手伝い。例えば、関節リウマチ、末期の腎臓病、うっ血性心不全のような慢性的な病気。

最初の1台である「マブ」は高性能の電子機器を備え、薬剤の使用をモニターしたり、医師の指示が守られるよう動機づけしたり、必要なら医師や薬剤師へと連絡を取れるようにしたりするのです。

「その目的は、医療機関に受診するまでのサポート。医師の指示を守ってもらい、再入院を減らしていく」とカタリア・ヘルス社のCEOで、マブを生み出したコーリー・キッドさん。

13.炎症を鎮める心臓ケア

今年はっきりと示されたのが、心臓病と炎症との関係。心臓病を治療するためのカギになる可能性が出てきたのは、炎症を鎮める薬。

「影響は幅広く、心臓発作の半分はコレステロールが高くなくても起きている事実からすると、ハイリスクの人は全く新しい、炎症をターゲットにした治療で救えるかもしれない」と、研究を推し進めるハーバード大学医学部教授のポール・リドカーさん。

 心臓発作を経験した1万人以上を対象にした研究でわかったのは、炎症を鎮める薬の注射によって2度目の心臓発作または脳卒中を15%減らせること。この「カナキヌマブ」という薬の年4回の注射を受けると、がんの死亡も減り、とりわけ肺がんを減らせることもわかりました。研究チームはほかの炎症を鎮める薬の働きも研究中です。

心臓専門医が高コレステロールと炎症からリスクを判断し、それぞれの患者に合った治療を行うようになる日も近いとリドカーさんは予測しています。

14.病気を消し去るDNA編集

2017年初めて成功した研究が、人間の胚のDNA編集でした。突然死をもたらす遺伝子変異を除去することができたのです。

「ハンチントン病」「テイ・サックス病」「嚢胞性線維症」のような重い、致命的な遺伝病をあらかじめ防ぐことのできる可能性が高まりました。

「原理が実用化できる可能性が示されたことになります」と研究メンバーの1人、オレゴン健康科学大学の産科婦人科准教授、ポーラ・アマートさんは言います。

この研究で使われたのが、「クリスパー・キャス9(CRISPR-Cas9)」と呼ばれる遺伝子編集技術。遺伝子がどのように修正されているかを把握する実験が繰り返される見通しとなっています。ただし、遺伝子の改変をした胚を使う臨床試験は米国連邦政府が禁止していますから、国内で受精卵を女性に移植することはできません。

遺伝子編集の技術は、優秀な知性や運動能力を持つ子を生み出すために使われるのではという心配の声もあります。しかし、「技術的に実現できない。遺伝子を入れ替えるのができず、胚がうまく受け入れない」とアマートさん。

15.痛みを和らげる仮想現実

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2017年、大きな可能性を示したのが、仮想現実を使った治療です。研究によれば、このハイテクを使った治療を行うと、薬と同じくらいの痛み止めの効果が現れるというのです。

米国ロサンゼルス、チェダーズ・サイナイ病院において、仮想現実を見ることのできるゴーグルを通して、気分の良くなるような映像を見ることで、痛みのレベルを24%低下させることができたのです。「麻薬性のあるオピオイドと同等かそれ以上の効果」と同病院の健康サービス研究所のディレクターで外科医のグレナン・スピーゲルさん。

ポジティブな経験を脳で感じ取ることにより、痛みから注意をそらすメカニズムが考えられています。高い効果が確認されたのは、特に痛みが強い人。

「仮想現実を使った診療所」も想定されています。新しい種類の医学プロフェッショナルが現れると予言するスピーゲルさん。それは「バーチャル療法士」と呼んでいる職業で、患者を調べて、何らかの仮想現実の体験を処方するという仕事を担います。ビーチに座っていたり、アイスランドのフィヨルドに飛んで行ったり、さまざま。「新しい医学分野の始まり」とスピーゲルさんは言います。

16. 人に移植するためのブタ臓器

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人に安全に移植できるよう遺伝子改変を受けた「デザイナー・子ブタ」が生み出されました。種の垣根を超えて器官を移植する異種移植が現実味を帯びてきたのです。

こうした手術を実現させようと、1世紀以上にわたって試行錯誤が繰り返されてきました。人間のための移植臓器はいつも不足。数えきれない命を救う可能性があるのです。現在も移植を待つ人々が長い列を成しています。

子ブタを生み出したのは、イー・ジェネシスという会社。人間にとって危険なウイルスとなり得る24以上のブタ遺伝子のコピーを、ハイテク遺伝子編集ツールクリスパー(CRISPR)により除去しています。

17.画期的な遺伝子治療

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2017年、致命的な病気に新たなアプローチが登場しました。米国で初めて実施可能となった遺伝子治療。FDAが承認した「キムリア」という治療で、化学療法の効かない急性リンパ性白血病の子どもや若者を治します。年間600人ほどを救う治療になると見られ、承認にあたってFDA長官は「医学におけるイノベーションのフロンティア」と表現しました。

「CAR-T細胞治療」と呼ばれるこの治療は患者ごとに薬をカスタマイズします。免疫細胞を集めて、がん細胞を殺すために遺伝的な編集を加えるのです。「うまく行けば、長期もしくは永久に有効性の続く治療となる」とアメリカがん学会副事務局長のレン・リッチェンフィールドさんは話します。

18.アンチエイジング薬

加齢のプロセスについての手がかりが2017年に発見されたことから、アンチエイジング薬が5年以内に登場する可能性が浮上してきました。

「傷ついたDNAを修復するのに使われるものとして特定されたのが"NAD"と呼ばれる化合物。NADは年を重ねるとともに減っていくのです」と、研究を率いる、ハーバード大学医学部教授のデイビッド・シンクレアさん。

シンクレアさんらは動物実験を行ってNADのレベルを引き上げるために、エサの中にNMNというNADに関連した合成物を与えると良いと発見しました。

NMNの効果を調べる前段階として、人にとっての安全性についての研究が進行中。「一生にわたってNADは見つかる分子」とシンクレアさん。NMNは人に有効と自信を示しています。

19.声から病気を発見

 電話で2、3語を発するだけで、病気を見つけられる可能性が浮上しています。いくつかの企業が研究中。声の微妙な特徴から肉体的、または精神的な病気を見つけられるかを調べています。2016年、メイヨー・クリニックがイスラエル企業と実施した研究によると、心臓病と関係する声の特徴が12以上も特定され、そのうちの一つがあるときには心臓病の可能性は19倍になることもわかったのです。

このほかソンデヘルス社という企業は、うつ病を予測するためのソフトウエアの改善を進めているところ。人の気づけないような1000分の1秒単位の声の変化を察知。「聞こえ方の微妙な変化を計測して、神経、筋肉、呼吸器官の健康状態を調べるのです。うつ病になると、特定の音が引き延ばされる人もいます」とソンデヘルス社の最高執行責任者(COO)で、共同創業者のジム・ハーパーさん。

「声を分析することで健康管理が簡単になって、従来ならばわからなかった深刻な問題も見つけられる可能性も。いつの日か、デジタル技術で動くアシスタントに話しかけると、うつ病のサインに早めに気づくことができ、適切な治療を受けられるのかもしれません」とハーパーさん。

20.植物の仕組みで心臓を救う

心臓発作が起きると、酸素の欠乏で心臓の細胞が死んでしまいます。ですから、医師は詰まった動脈にできるだけ早く血液を流そうとします。

一方、全く別の方法で心臓に酸素を送り届けようと模索しているのが、スタンフォード大学心臓胸部外科の教授、ジョセフ・ウーさん。

植物が、日光を浴びて二酸化炭素から酸素に作り出す光合成を応用するのです。植物と同じように光合成するバクテリアを、ダメージを受けたラットの心臓に注射。バクテリアに光を当てると、その治療を受けない場合と比べると酸素のレベルが25倍にすることができました。

ダメージを受けた組織に酸素を供給する新しい方法になれば、医学の対応は大きく変わる可能性も。「まだ初期の段階ですが、エキサイティングな時期」とウーさんは言います。

Rochelle Sharpe/ The 20 Most Life-Changing Medical Breakthroughs Of 2017
訳/ STELLA MEDIX Ltd.

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