性器ヘルペスの症状や原因、薬物治療の方法などを専門医が解説

マイナビニュース / 2019年3月14日 16時48分

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ある日ふと鏡を見かけると、唇やその周辺に小さな水泡のようなものができているのを発見した経験はないだろうか。この水ぶくれのようなものは、ヘルペス(口唇ヘルペス)と呼ばれる病気である可能性が高い。ただこのヘルペスは、厄介なことに性器にもできる(性器ヘルペス)ことがあるのだ。

性器は日々の生理現象や性行為にも関わってくる非常にデリケートな部分だけに、見慣れない疱疹が突然現れたとしたら気が気ではないだろう。そのような事態を招かないようにするためにも、産婦人科専門医の船曳美也子医師に性器ヘルペスの原因や症状、治療法などについてうかがった。

○性器ヘルペスの原因と感染経路

性器ヘルペスは「単純ヘルペスウイルス」と呼ばれるウイルスが原因で発病する。ヒトを宿主とするヒトヘルペスウイルスにはいくつか型があり、単純ヘルペスウイルスII型が、性器に症状が出る性器ヘルペスの原因になるという。

「同様の症状が唇に出る病気を口唇ヘルペスと呼び、この原因は単純ヘルペスウイルスI型です。ただ、口唇ヘルペスの原因となる単純ヘルペスウイルスI型は性器にも感染します。そのため、主にII型単純ヘルペスウイルスが性器ヘルペスの原因ですが、I型の場合もありうるということです」

直接的、あるいは指などを介して間接的に性器から性器に感染するのが主な性器ヘルペスの感染経路。ただ、オーラルセックスで口唇ヘルペスが性器に感染するケースもある。
○性器ヘルペスの症状

単純ヘルペスウイルスは局所の粘膜から感染した後に増殖し、粘膜に病変を生じると同時に知覚神経をつたって神経節に潜り込む。免疫が低下したり、月経などのなんらかの刺激でウイルスが再活性化したりすると、局所に症状が出現する。

「性器ヘルペスになると、性器に小さく浅い潰瘍(ただれ)や2mm程度の小さな水泡ができ、その部位に痛みを伴います。尿がしみたり、歩くと潰瘍部位がすれて痛んだりします。また、鼡径部(そけいぶ)のリンパ節も腫れて押すと痛みが生じます。症状が重いと潰瘍や水泡が多数でき、発熱や全身倦怠感が現れ、まれに入院が必要になるケースもあります」

症状の出る場所は、女性は主に大小陰唇や膣の入り口、会陰部で、ほかに膣内部、臀部に出ることも。男性は主に亀頭や陰茎で、ほかに肛門周囲、直腸粘膜、臀部などのウイルス接触部分にも症状が出る。
○性器ヘルペスの症状はタイプによって異なる

これらの性器ヘルペスの症状は、ヘルペスウイルスの感染と発症の時期によって決定づけられるヘルペスのタイプ(型)に基づく。以下にそれぞれの特徴をまとめた。

無症候型

無症候型は、性器ヘルペスウイルスに感染しても発症しないという特徴がある。それゆえ、当事者が無自覚のうちに感染を拡大させてしまうリスクがある。

「性器ヘルペスの症状が出ないまま性器の粘膜や分泌液中にウイルスを排出する方が70~80%いるとされています。自分が気づかないうちに相手に感染させてしまうという点では、口唇ヘルペスも同様です。唾液中にウイルスを排出していると、口唇性交で相手がI型の性器ヘルペスになります」

急性型

性器ヘルペスの症状が重く出るのは、初感染、初発症による急性型。感染機会があってから2~21日以内に外陰部の不快感やむずがゆいなどの前駆症状が出現した後、「発熱」「全身倦怠感」「鼡径部リンパ節の腫脹」「強い痛み」とともに、多発性の浅い潰瘍や小水疱が急激に性器に出現する。重症の場合、まれに脳髄膜炎を合併したり、痛みで入院を要したりすることもあるという。

再発型

再発型は、過去に性器ヘルペスを経験しており、潜伏感染していたウイルスが再活性することによって起きる。そのほか、心身の疲労や月経、性交などの刺激が誘因するケースもある。

「再発型は、急性型に比べて病変が小さかったり数が少なかったりと症状は軽く、1週間以内に治癒するケースが多いです。再発の回数は月2~3回から年1~2回とさまざまですが、年齢を重ねるにつれ、再発の回数は減少してきます。II型性器ヘルペスの方がI型性器ヘルペスより再発はしやすいです」

誘発型

ウイルス自体には初感染ではないものの、初めて症状が出たときは誘発型と呼ばれる。過去に感染していたが無症状で、免疫低下をきっかけにウイルスが活性化し、初めて病変を経験するケースが誘発型に該当。免疫低下の程度によっては、かなり症状が激しく出ることがあるとのこと。自分では感染の自覚がないのに症状が出現するため、戸惑う人も少なくないという。
○ヘルペスはどのように治療するのか

性器ヘルペスを罹患していると判明した場合、早急に治療にあたる必要がある。抗ウイルス剤を用いた薬物治療が基本になるが、初発か再発かでその投薬期間が異なると船曳医師は解説する。

「初発の場合は、一日5錠の抗ウイルス剤を5日間から10日間内服していただきます。症状が強かったり脳髄膜炎を併発したりする場合ですと、静脈注射による点滴治療を行います。再発型のような軽い症状ですと、抗ウイルス剤を5日間内服するか、軟膏タイプの薬を用います。年に6回以上再発するような場合、予防投与で連日内服を行えることもあります」

なお、パートナーに性器ヘルペスの症状が出ているときは、接触感染を避けるためタオルの共有はNG。治療のための軟膏薬を塗布後は、手洗いとアルコール消毒を徹底するとよい。入浴を介した感染はなく、服も通常通り洗濯して問題ないとのことだ。
○ヘルペスの感染を防ぐための予防策

現在、この性器ヘルペスにはワクチンがないため、ウイルス感染後に苦しまないようにするには予防が何よりも肝要となる。ただ、パートナーがヘルペスウイルスを排出しているかどうかを確認する方法がないこともあり、ヘルペスの感染を100%防ぐのは至難の業だ。

万一感染・発症してしまったら、さまざまな二次的リスクに注意しなければならない。例えば、初発の場合は3カ月、再発の場合は再発後1週間はウイルス排泄している可能性ある。安易に性行為をしてしまうと、感染を拡大させる恐れがある。

「また、性器ヘルペス既往の女性の場合、出産時に再発していないかどうかを注意する必要があります。赤ちゃんはヘルペスに感染すると重症化しやすいので、もし出産時の女性で外陰ヘルペスが認められたり、ウイルス感染のリスクがあったりする場合は、帝王切開による出産も考慮されます」

性器ヘルペスによる無用なリスクを避けるためには、性行為時には最低限でもコンドームを装用するようにしよう。

※写真と本文は関係ありません

○取材協力: 船曳美也子(フナビキ・ミヤコ)

1983年 神戸大学文学部心理学科卒業、1991年 兵庫医科大学卒業。産婦人科専門医、生殖医療専門医。肥満医学会会員。医療法人オーク会勤務。不妊治療を中心に現場で多くの女性の悩みに耳を傾け、肥満による不妊と出産のリスク回避のために考案したオーク式ダイエットは一般的なダイエット法としても人気を高める。自らも2度目の結婚、43歳で妊娠、出産という経験を持つ。2014年、健康な女性の凍結卵子による妊娠に成功。出産に至ったのは国内初とされる。著書に、「婚活」「妊活」など女性の人生の描き方を提案する著書「女性の人生ゲームで勝つ方法」(2013年、主婦の友社)、女性の身体について正しい知識を知ってもらえるよう執筆した「あなたも知らない女のカラダ―希望を叶える性の話」(2017年、講談社)がある。En女医会にも所属している。

En女医会とは
150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加している会。さまざまな形でボランティア活動を行うことによって、女性の意識の向上と社会貢献の実現を目指している。会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用。また、健康や美容についてより良い情報を発信し、医療分野での啓発活動を積極的に行う。En女医会HPはこちら。
(栗田智久)

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