チーズもとろける大熱論! ハンバーガー座談会 第1回 ジャンクからごちそうへ…その先は? ハンバーガー座談会が開幕!

マイナビニュース / 2019年10月21日 11時30分

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その昔、ほぼ全ての日本国民にとって、ハンバーガーといえば「チェーン店で食べるもの」だった。それがここ15年ほどの間に、どこのチェーンにも属さない、1店舗きりのハンバーガー「専門店」が続々と現れ、1個1,000円を超える「グルメバーガー」を食べることがいまや、当り前のようになった。ハンバーガーという食べ物の進化はなんとも劇的で、嬉しくもあるのだが、一方で最近、こんな不安を感じる時がある……。新しいバーガー店がどんどんオープンするのはいいが、このブーム、果たしていつまで続くのだろうか?

○職人化するハンバーガー専門店

「おいしいハンバーガーを出そう」というアツい思いから、ハンバーガーを作る技術は今、どんどん進化している。研究を重ねるほどに作業は複雑化。仕込みや調理の手間が増え、閉店後に翌日の仕込みなど始めれば、勤務時間も長くなる。各店、なかなか大変そうだ。

店主が若いうちはまだいい。しかし、10年も経てば身体の無理もきかなくなるだろう。それに、個人経営規模の小さなハンバーガー専門店は少人数でこなしているので、仕込める数に限りがある。それが全て売れたら早じまい。中にはタイミングが合わなくて、いつ行っても閉まっている店もあったりする。一方で、ラーメンの繁盛店が終日、大量の客をバンバンさばいているのを見ると、圧倒的な力の差を感じて、ますます不安になってくる。

食べる側である「こちらの財布がいつまで続くか?」という問題もある。牛肉、小麦、乳製品をはじめ、ハンバーガーの原材料は値上がりする一方。おまけに消費税もアップした。ハンバーガーは確かにおいしくなったけど、高くもなった。もしもハンバーガーが「贅沢な食べ物」になってしまったら、そうそう気軽に食べられなくなる。このおいしいバーガー、一体いつまで食べ続けられるのだろうか。

そんな疑問を、ハンバーガー界をリードする3人の社長にぶつけてみたのが、今回の座談会である。専門店のあり方から人手不足の問題、スタッフの教育問題、チェーン展開やFC経営の話、さらにはハンバーガーの「適正価格」まで、普段はなかなか聞けない疑問に分かりやすく答えてもらった。成長真っ盛りなハンバーガー専門店のこれからを占う座談会。ハンバーガーには一体、どんな未来が待っているのだろうか。

○趣味か、ビジネスか

松原好秀(ハンバーガー探求家):本日はよろしくお願いします。まずは、ハンバーガー専門店についてですが、規模がどうしても小さいですから、営業時間が短い店舗もあったり、なかなか大変そうに見えます。

船曵睦雄さん(フレッシュネスバーガー社長):お昼に閉まるハンバーガー屋さんでもいいじゃないですか――と、僕は思います。お蕎麦屋さんでも、うまい蕎麦屋は昼の1時半には閉まって、夜は営業していないとか、そういうこだわりにこだわった店もあれば、マクドナルドみたいに24時間、安定的に食を提供する店もあって、いろいろなバリエーションがあっていいんじゃないかなというのが私の考えです。お昼に閉まるのは、決して悲観的な話ではないですし。そこまでこだわっているハンバーガーであれば、逆にその方がいいし、売切れ御免の店が悪いことではないという気がするんですよね。

――フレッシュネスの船曵社長から、まずは前向きな答えが返ってきた。では、労働の問題はどうだろう? 各店ギリギリの人数でどうにか回しているので、店主が休みなしになるケースも多々あると思うのだけれど。

北浦明雄さん(ブラザーズ社長):まぁ、人手不足ってどの業界にもあることで、それだけの仕事量が十分にあって、それで人が足りてないってことですから、むしろ、人手不足の状態こそ正常だと思うんですね。ウチだって、人手が足りてたことなんて一度もないですから。でも、グルメバーガーの個人店って、自分がオーナーシェフで経営している店がほとんどじゃないですか? 自分さえいれば、それで回っちゃうじゃないですか? だから、「そんなに困ってるのかな?」っていうのが正直なところで、オーナーさんにやる気があれば、別にどうにでも回せるんじゃないか、って感じはするんですけど。

関俊一郎さん(ファンゴー社長):もうひとつはビジネスの形態ですよね。僕ね、よく店の相談をされるんですけど、聞いてると、圧倒的にこのハンバーガー的な業界は「趣味」っていうか、「好き」で、すごいマニアックにやってるなって思うんですよね。「ビジネスじゃない」ケースがすごく多い。

関:ビジネスっていったら味ばかりじゃないし、こだわりばかりでもない。自分がやりたいこととは別に、環境であったり、立地であったり、時代背景であったり、自分ではどうすることもできないものの占める割合が大きいというのが、根底にあると思うんですね。

例えばウチなんかだと、銀座にもレストランがあるんですけど、銀座は求人広告を出しても人が集まらない。ところが、吉祥寺の駅前だとわんさか応募がある。そういう場所はお客さんも来るんです。だから、やっぱり立地って大事ですよね。あとは、その土地の客層と、その土地でやりたいことがマッチするかどうか。ビジネスは大抵、そんなところですよね。やりたいこととビジネスとは「相反するもの」だというのが前提にあります。

船曵:初めから、「ビジネスとしてやろうとしているか」ってことですよね。

関:そこの違いはデカイですね。

――「趣味」か「ビジネス」か、それが問題だ。では、趣味の延長では店は成り立たないのだろうか?

北浦:オーナーさんが直接、お店に立っているのは大きいですよね。自分が「創作した人」じゃないですか? 要するに「創造者」ですよ。創造者がそこに立って、自分が生み出したものを目の前のお客さんに提供するっていうのは、どこかのチェーンで誰かに教わって作るものより、すごく価値のあるものだと思います。

北浦:だけど、他にも何店舗か店を持った時には、自分と同じような人を育てなきゃいけないってことになってくるんで。じゃあ「どうやって?」といったらもう、「スピリッツ」とかね、そういったものを延々とスタッフに話しながら、伝え続けて行かなきゃいけないって風になるんですよね。

――優秀な人材が育てば、提供できるハンバーガーの数はもちろん、営業時間や営業日数、店舗の数まで、さまざまな面で可能性を広げることができる。つまり、教育こそ究極の解決法だ。では、各店は何をどのように教えているのだろう?
○どうやって「人」を育てる?

松原:スタッフを育てる時、伝えるものは「スピリッツ」なんですか?

北浦:そこに賭ける「思い」とかね。ものづくりの姿勢だったりとか、その前提として、まずは人としての正しさとか。全然「離れてる」ワケじゃないですか? 自分と部下とを比較した時に、ものの考え方とかが。それを、どうやって分かってもらうか。その理解の量に応じて、自分と近いものをその人が作れるかどうかが決まってくるワケですよね? だからもう、毎日毎日、そういうコミュニケーションをとって、自分の価値観を理解してもらえるよう、そして、その人の価値感を広げられるよう、分かりやすく話をし続けるという、そういうことしかできないですよね。だから、労力が必要です。ウチの商売は時間かかりますよね。

関:永遠ですよね。

北浦:永遠ですよ。毎日毎日、もうプリントに印刷したりして、こんな思いで……とか、細かい部分をね。分かりやすく、例えとか入れながら説明して。本当に分かった時って、「あっ!」っていうんですよ。「なるほど!」とか。それを、いくつもいくつも積み重ねて、やっと近いものが作れるようになるという。だから、カタチじゃないんですよ。

関:辞めて独立したスタッフが、10年くらいしてブラっと訪ねてきて、「あの時、関さんがいってたこと分かりましたよ!」とかね。スピリッツが、そんな後になって伝わることもあるという(笑)。

北浦:そうそう(笑)。

松原:スピリッツには経営のノウハウみたいなことも含まれるんですか?

北浦:含みますよ、もちろん。例えば、1週間の業績のグラフをつけて、上がった時にどんな行動を取るのかとか、下がった時はどういうアクションを取るのかとかっていうのは、ちゃんとまとめたものがあって、以前は僕が、ひとりひとりにしっかりと教えてました。いまは統括部長にまず伝えて、部長から教えてもらってます。

関:ウチはちょっと、伝え切れないですけどね。店長には月次ミーティングがあり、店舗数の多いところは店長会議でいろいろ話すんですけど、なかなか難しいですね。

例えば、アップルパイ専門店の『グラニースミス』を例に挙げると、自分たちの幸せは「また違うところ」にあるスタッフも多いんですね。その店の営業や収支や、将来の展望、自分のキャリア……「じゃないところ」を見ている。僕の見ているのとは違うところを見ているスタッフに対して、こちらの思いを伝えるというのは、すごく難しいことですよ。

北浦:人によって、ホント違いますよね。

「おいしいハンバーガーが作りたい!」という思いから始まる店の経営は、やがて、スタッフの教育・育成の問題に行き着く。そこで登場する「スピリッツ」なるものの正体は一体? フレッシュネスバーガー1号店の話や、「スタバ愛」の育て方の話など、次回も話題満載でお送りする。どうぞ、お楽しみに!

○著者情報:松原好秀(マツバラ・ヨシヒデ)
ハンバーガー探求家。評論家。2014年に『ザ・バーガーマップ東京』(幹書房)出版。ハンバーガー関連の企画でテレビ&ラジオの出演多数。映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』(2017)の公開記念キャンペーンも担当
(松原好秀)

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