ゲームは就活に活かせるか? eスポーツ業界に飛び込んだ、CyberZ若手4人の「就職譚」

マイナビニュース / 2019年10月23日 16時30分

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●「eスポーツ就活」は数年で大きく変化した
eスポーツの盛り上がりとともに、注目を集めるようになったeスポーツ業界の仕事。最近では、新卒・第二新卒でeスポーツ業界に飛び込む人も現れるようになりました。

今回インタビューしたのは、ゲーム配信プラットフォーム「OPENREC」や、日本最大級のeスポーツ大会「RAGE」の運営などを行うCyberZの若手社員4人。2019年5月に開催された「PUBG MOBILE 企業対抗戦 2019」にチームで出場し、優勝した実績を持ちます。

彼らはどのような学生時代を過ごし、どのような就職活動を経てeスポーツ業界にたどり着いたのでしょうか。4人のエピソードを伺いました。
○同僚は大学時代に戦ったライバルでありゲーム仲間

――まずは、皆さんの自己紹介をお願いします。

植田晋太郎氏(以下、植田):2019年の新卒として、サイバーエージェントに入社した植田です。CyberZへの配属になり、現在はeスポーツ大会をオンライン上で開催できる「PLAYHERA(プレイヘラ)」というコミュニティプラットフォームを運営するチームに所属しています。

小部琢己氏(以下、小部):CyberZのOPENREC事業部に所属している小部です。隣に座っている石塚からの紹介をきっかけに、2018年10月に中途入社しました。プロゲーマーの方々のマネジメントや配信まわりの業務、大会の運営などを担当しています。

石塚久徳氏(以下、石塚):2017年に新卒でサイバーエージェントに入社した石塚です。今はCyberZのOPENREC事業部に配属されて、小部と同じくプロゲーマーや配信者の方々のマネジメントをメインに担当しています。

楠本慧氏(以下、楠本):CyberZのOPENREC事業部に所属する楠本と申します。2017年に中途入社しました。業務内容としては、主にOPENRECの番組や大会の制作を行っています。

――皆さんは入社する前から、もともとゲーム仲間だったと聞きました。

楠本:そうですね。僕と石塚が近畿大学、小部と植田が龍谷大学で、それぞれ大学が一緒だったのがきっかけです。

石塚:全員がFPSゲームの『Call of Duty』(以下、CoD)をプレイしていて、そのゲームで開催されていた「CoD 全国大学対抗戦」という大会に出場していました。お互いに対戦経験のあるライバル校同士でもあり、そのときからの知り合いです。

――皆さんが大学生時代にしていた、ゲームに関する活動内容を教えてください。

植田:僕は「CoD 全国大学対抗戦」に応募したことがきっかけで、大学1年から4年の間にアマチュア選手として戦績を重ねつつ、eスポーツサークルを立ち上げたり、アマチュア大会を運営したりしていました。

その後、プロ選手として活動するために、大学の在籍期間を1年延長して、プロゲーミングチーム「CYCLOPS athlete gaming」に所属します。就職するまで1年ほど活動していました。

小部:僕は大学3年で編入したのですが、植田と大学が一緒なので活動内容は少し似ています。もともとゲーム好きの集まりがあり、せっかくだからと、eスポーツサークルを立ち上げました。

「CoD 全国大学対抗戦」での実績から、大学の公認サークルになることができたので、大学のサポートを受けつつ文化祭でイベントを開催したり、企業の方とのネットワークを活かして、大会を開催したりもしていました。

石塚:僕は大学1年のときに「CoD 全国大学対抗戦」に出場するメンバーを集めて、2年のときに初出場・初優勝を果たしました。ちょうどそのときに決勝で戦ったのが、植田と小部がいたチームなんです。

次の年も僕らのチームが優勝し、2連覇を達成すると、その功績が大学にも認められて、「eスポーツサークルとして、オープンキャンパスで高校生に向けたイベントをしないか」というお話をいただきました。そのイベントでは、2日間でトータル2,000人くらい集まりましたね。そのころはまだ小規模なサークルだったんですが、いろいろなゲームの部門を増やしていった結果、100人くらいの大規模なサークルになりました。

楠本:僕は大学1年で『CoD』を始めて、2年のときに石塚から「一緒に大会に出よう」と声をかけてもらいました。学生時代のゲームに関する活動というと、大会に向けて練習をしていたことくらいですね。その後、eスポーツサークルができたので、大学3年から4年はサークルでの活動がメインでした。

サークルについて補足すると、当時はあまりeスポーツサークルの前例がなかったので、石塚を中心に、ほかの大学からサポートを受けながら出来上がったのが近畿大学のeスポーツサークルです。そのノウハウを活かして、お互いにサポートし合いながら、龍谷大学でもサークルの立ち上げが行われました。

当時は、本当にただのゲーム好きな学生で、ゲーム関係の仕事を視野に入れたことはありませんでした。自分がeスポーツ業界で働くなんて、まったく想像もしていなかったですね。
○“新卒でeスポーツ業界に入る”という選択肢

――新卒でeスポーツ業界に入った経歴の方は、まだ少ないと思います。新卒で入社されたお2人は、どういった就活を経て今に至るか教えていただけますか?

石塚:僕は2017年入社なので、就活をしていた時期は2016年。当時は、eスポーツという言葉自体が全然知られていなくて、「eスポーツ業界に行きたい」と考える人もほぼいない状況でした。

大学が情報学科だったので、システムエンジニアの仕事をメインに考えていたんですが、やっぱりゲームに関わる仕事がしたいなと。ゲーム業界にいれば、eスポーツに関われるチャンスもあるだろうと考えて、スマホゲームからコンシューマーゲームなど種類は問わず、ゲーム業界の企業を幅広く受けました。

就活の軸にしていたのは、僕の目標でもある「eスポーツをオリンピックの種目にして、それに自分が関わる」こと。なので、すべての面接でそう伝えていました。結果的にいくつかの企業から内定をいただいたのですが、eスポーツを軸に就活していた自分としては、なかなかしっくりこない状況が続きました。

そのような状況でサイバーエージェントの面接を受けた際、先ほどの目標を伝えると「目標を実現するため必要なこと」をていねいにフィードバックしてくださって。当時僕はただ夢を語っているだけで、中身が全然詰まっていなかったんです。それに対して真剣に考えてくれたサイバーエージェントグループに行くしかないと思いましたね。

植田:僕は大学で、街づくりや都市プランニングの研究をしていました。研究をしつつ趣味でゲームをしていたのですが、学生最後の1年をプロとして活動したことで、より選手目線でeスポーツを捉えるようになりました。

そのなかで強く感じたのは、eスポーツが話題になってきたとはいえ、世間からのイメージはさほど良くないということ。“たかがゲーム”という周囲の印象を、変えていきたいと思うようになったんです。

選手を続けるかどうかも悩んだのですが、当時のプロシーンでは10代の選手も多く活躍していて、すでに僕は年齢が高い方でした。そういう背景もあり、プレイヤー側としてではなく、eスポーツシーンを作っていく側に身を捧げたいと考え、eスポーツ業界で働くことを目指す方向に切り替えました。

なので、就活では石塚と同じように、ゲーム関連の企業やeスポーツに注力している企業を受けていました。僕は2019年入社なので、就活は2018年。ちょうどeスポーツが話題になり始めていたので、eスポーツという言葉に対して反応してくださる企業は多かったですね。

eスポーツの地位を底上げするためにはいろいろな武器を持った会社でなければと考えていたので、CyberZの動画配信や大会プラットフォームだけでなく、全社的に見てもスマホアプリやIPなど、幅広い武器を持っているサイバーエージェントグループに入社を決めました。

――学生時代にしてきた活動を、どのように就活での自己アピールに繋げていましたか?

石塚:僕は「CoD 全国大学対抗戦」で2連覇した実績があったので、それは必ず伝えるようにしていました。特に2度目は、全部で80チームくらいが参加していたので、大きな大会で全国1位を取りました、という感じで。あとは、eスポーツサークル立ち上げのことや、大学と協力してオープンキャンパスでイベントをしたエピソードも面接で話していました。

植田:僕は学部のなかでもトップクラスのガチなゼミに入っていたんですが、そこで表彰されたり、建築の賞や学内の賞を獲得したりと、いろいろと成果を残していたんです。なので、しっかり学業もやりつつ、eスポーツのプロ選手としても活動していたことを武器に就活をしていました。

石塚:学業は皆、がんばっていましたね。全員ちゃんと「フル単」で、僕は成績優秀者でもありました。eスポーツプレイヤーとして大会で良い成績を残していたとしても、どうしても「ゲームばっかりやって」とか、「たかがゲーム」と言われてしまう。でも、学業が優秀でゲームも強いことを示せたら、少しずつ社会的にも認められていって、“たかがゲーム”じゃなくなると思っていたんです。当時の僕らにとっては、それがeスポーツプレイヤーの形かなと考えていました。

僕はチームでリーダーをしていたんですが、メンバーには「絶対に単位を落とすな」「4年生までに単位を全部取り終われ」と伝えていました。ゲームの練習と学校の授業を両立させるために、皆で協力しながら練習して勉強もして。それを皆、ちゃんとやり遂げていたんです。そういう形であれば、ゲームの知識や経験、ゲームへの熱は就活に活かせると思っていました。

それに、例えば大会が授業と重なったときに、いきなり「ゲームの大会に出るので、休ませてください」というのは、難しいじゃないですか。でも、成績優秀だったら、話を聞いてもらえるかもしれない。結果として、大会と授業が被ることはなかったんですけど、そういうことも考えていました。

小部:“たかがゲーム、されどゲーム”だと思っているのは、自分たちだけなんですよね。まわりの人から見たら、“たかがゲーム”なんです。それを変えていくためには、ほかの人たちにも認めてもらえるように、自分たちが示していかなければいけないという意識はありました。

――就活した年によって、eスポーツへの反応もさまざまだったというお話もありました。これから就活するにあたっては、どんなアピールが活きるでしょうか?

石塚:僕は入社1年目から、サイバーエージェントの新卒採用にも一部関わらせていただいているのですが、「eスポーツの大会を開いたことがあります」とアピールする就活生は、すごく多いんですよ。

僕たちが就活していたときは、まだeスポーツが浸透していなかったので、例えば「◯◯というゲームで、60人以上が集まる規模のeスポーツ大会を開催しました」と言えるだけで、十分に評価されたと思います。

でも今は、いろんなタイトルのコミュニティ大会が、毎日のように開催されるようになり、eスポーツの認知度も高まりました。なので、eスポーツ大会に携わった経験があるだけでは評価につながりづらいでしょう。これからゲームやeスポーツの業界で就職活動をしようと考えている人たちは、何かそれ以上の実績、強みを持って挑むことでまわりの人と差別化できるのではないかと思います。

●仕事で目指すのはeスポーツの地位向上
続いて、趣味のゲームを仕事にしてeスポーツ業界に飛び込んだ4人に、家族からの反応や自身の変化、これからの目標などについて聞いていきます。周囲からのゲームに対するネガティブなイメージと対峙してきた彼らが、eスポーツ業界で目指すこととは。その想いを語っていただきました。
○eスポーツを仕事にすることへの家族の反応は?

――第二新卒で入社されたお2人は、前職ではどういった仕事をされていたのでしょうか?

楠本:テレビの制作会社に勤めていました。もともと学生のころから映像づくりに興味があったので、就活で受けていたのはテレビ局やテレビの制作会社など映像関係の仕事がほとんどでした。

前職の制作会社に入社してから半年ちょっと経ったところで、石塚からOPENRECで配信するオリジナルのゲーム番組制作をやらないかと声をかけてもらったんです。話を聞くと、趣味のゲームと自分の好きな映像づくりの両方が活かせる仕事だと感じて、面接を受けることにしました。僕にとっては、趣味のゲームを仕事にすること自体、それまで考えたことがなかったんです。めったにないチャンスが巡ってきたと思ったので、決断は早かったですね。

小部:僕はまったく畑違いのところから来ていて、前職では作業着にスパナを持って働いていました(笑)。

大学では、eスポーツをテーマにして論文を書くほどゲームは好きだったのですが、それが仕事につながるイメージはまったく湧いていなくて。就活では安定を重視して、工業系のメーカーを選びました。

入社から1年半くらい経って東京に転勤するタイミングで、CyberZの仕事の話を聞きました。前職はすごく良い会社で、不満もなかったんですけど、自分の好きなeスポーツに関われる仕事に挑戦してみたいという気持ちが強くて。

新卒で入った会社では「まずは3年働いて……」というイメージも一般的にはあると思うんですが、僕は自分の好きな仕事にチャレンジするなら、早い方がいいんじゃないかと考えて、転職を決めました。この判断は正解だったと思います。

――eスポーツ業界で働くことに対して、家族など周囲の人から反応はありましたか?

楠本:僕は幼稚園のころからゲームばかりしていて、ずっと「ゲームのやりすぎだ」と親にとがめられてきたんです。でも、今の仕事が決まったと話したときには、「ゲームが仕事になるなんて現代っ子だなぁ」という反応でした。

大会で実績を残したときにも、似たようなことを言われたんです。ゲームってスポーツのように一般に浸透しているものではないので、親からすると何をしているのかよくわからないと思うんですよね。それが、大会で勝って賞金をもらったり、実際に仕事につながったりして、これまでずっとやってきたゲームが無駄ではなかったんだなと。結果的には、「ゲームやってて良かったね」と言ってもらえるようになりました。

石塚:チームでの練習中とか、よくブレーカー落とされてたよね(笑)。後ろでお父さんめっちゃ怒ってて。

楠本:そうそう(笑)。大会に出ていたころ、夜にボイスチャットをしながら練習してたのですが、親から「うるさい!」って怒られて。そこはまぁ、僕が行き過ぎていた部分もあったと思うんですけど……。

今は実家に帰ると、ゲームやeスポーツの説明をしたりしています。最近は、父から「eスポーツって言葉を聞くようになったよ」と言われて、自分の仕事のことも説明しやすくなりました。そこは、ここ数年で変わったところかもしれないですね。

小部:僕が転職を決めたときは、ガッツリ反対されました。安定している大手メーカーから、変化の激しいベンチャー業界に行くというので、親からは「大丈夫なの?」と。ですが、サイバーエージェントという大きな会社がやっているから大丈夫、と説得することでなんとか理解してもらいました。

その後、2019年2月に開催された「EVO JAPAN」のOPENREC配信を担当したんですが、親にも「現地の福岡に行ってくる」と伝えていたんです。そしたら、ちょうどテレビで「EVO JAPAN」が放送されたのを見たらしくて。その写真と一緒に「eスポーツってすごいね」って送られてきたんです。テレビを見て、親が理解してくれたというか、「こんなこと最近やってるんだね、がんばってね」という応援に変わりました。

石塚:僕の母からも、テレビや記事でeスポーツという言葉を見つける度に、写真が送られてきますね。

母はeスポーツをきちんと理解しているというより、「eスポーツをやっている」というイメージなので、たまに弊社が出したリリースとかも送ってきて、「いやいや、それは自分の会社や」みたいなこともあります(笑)。

植田:僕は入社時に反対されることはなかったんですが、もともとはすごくゲームに厳しい家庭でした。「ゲームをするなら、リビングのここで何時まで」という感じで、ずっと決められた場所と時間でゲームをする環境だったんです。

その状態でコツコツとゲームを続けて、「CoD 全国大学対抗戦」で準優勝して賞金を持って帰ってきてからは、ゲームでの活動を認めて応援してくれるようになりました。それ以降は、プロ選手になるときも「がんばって」と言ってくれて。就職に関しても、やっぱりその方向に行くんだという感じで、すんなり受け入れてくれましたね。

石塚:僕はほかの3人と違って、親がゲームに対して寛容でした。小中高ではずっとバスケをやっていて、全国1位を目指していたんですけど、高校のときにケガで辞めたんです。バスケができなくなって、今度はゲームで全国1位を目指すと伝えると、母は「ゲームでも何でも、1位にこだわってがんばりなさい」と応援してくれました。なので、ゲームをしていても怒られることはなく、むしろ「大会の成績はどう?」と聞かれるくらいでしたね。

――eスポーツに対してプレイヤー側から仕事で携わる側になって、何か意識として変わったことはありますか?

楠本:仕事で携わるようになってからは、ただゲームを普通にプレイするだけではなく、どうしたらそのゲームの魅力がうまく伝えられるかを意識するようになりましたね。

例えば、このゲームはこういう部分がおもしろいから、それを伝えるためには番組でこんな演出にしようとか。そういうことを普段から考えるようになったのは、変化したことだと思います。

石塚:よく「趣味を仕事にすると良くない」と言われてますが、僕は就活をしていたころから、それは絶対にないと思っていたんです。実際にeスポーツを仕事にして、やっぱり趣味を仕事にして良かったなと思うことが多々あります。例えば、趣味でのインプットが仕事に活かされるので、好きで調べたゲームの情報を社内のメンバーに共有するだけで、いい情報をいち早く共有できたと喜んでもらえることもあります。

また、趣味を仕事に活かせると、さらに好きになっていく感覚もありますね。もともと好きだったシューティングゲームに限らず、『League of Legends』の韓国リーグを現地まで観戦しに行くこともありました。趣味で行ってそこで撮った写真を社内で共有したり、話したりするだけでも、周りの人に喜んでもらえて、“天職”だと思いますね。

小部:もともと自分がプレイヤーとして大会に参加する立場だったので、大会や番組を制作するうえで「自分が選手だったらこうしてほしいはず」と、選手の目線に立って考えられることが、強みの1つになっていると思います。

今、『Apex Legends』のオンライン大会の制作に関わっているのですが、どうしたらもっと選手にとっていい大会になるかを自分のなかで設計して、周りのメンバーと協議しながら、OPENRECというプラットフォームで出せることにやりがいを感じています。

植田:以前までeスポーツ大会の「RAGE」に携わるチームにいて、大会を作り上げていく仕事を経験しました。これまで会社や先輩方が培ってきた経験やノウハウがあるからこそ、作り上げられるものだと実感しましたね。同時に、僕自身が選手として活動したり、アマチュア大会を運営したりしてきた経験も、強く活きているなとも思います。

学生時代は出る側として「あの大会に出てみたい」とか「あの大会で優勝したい」と思うだけだったんですけど、作る側になってからは、プレイヤーの皆にそう思えるような大会を運営していきたいですね。

また、現在僕は2019年9月にリリースしたスマホアプリ「PLAYHERA」にも携わっています。「PLAYHERA」は新しいeスポーツコミュニティのプラットフォームで、eスポーツの大会を手軽に開催・運営できる機能や、ユーザーが大会を探して参加できる機能、SNS機能などを備えています。

そこでは、チームと選手、大会主催者、スポンサー、IPホルダーをつなぐハブとして、eスポーツのエコシステム構築に役立てられれば、と考えています。

○次世代の“eスポーツ人材”に求められることとは

――皆さんよりもさらに次の世代の、これからeスポーツ業界に携わりたいと考えている人に向けて伝えたいことはありますか?

植田:今はずいぶんeスポーツが話題になってきたとはいえ、まだまだ発展途上です。出来上がった市場ではなく、未成熟なeスポーツ業界で挑戦してみたいと思えることが、それだけで武器なんじゃないでしょうか。迷わず、eスポーツの業界に踏み込んでほしいなと思いますね。

先ほど石塚が話していたように、「趣味のゲームを仕事にしても大丈夫かな」と悩む人もいるでしょう。でも、ゲームやeスポーツが本当に好きだったら、絶対にもっと好きになるはずなので、そこで躊躇する必要はないと思います。

小部:eスポーツは発展途上だからこそ、自分のやりたいことをやれるチャンスはたくさんあるはず。ただ、好きなことを仕事にして、それをビジネスとしてやっていくことに対して、自分もすごく悩んだ時期がありました。単なる趣味ではなく、ビジネスとしてどう成り立たせるのか、という考え方を持たなければいけない。そこは苦労しつつ、学んでいくところなのかなと感じます。

そういう面も含め、eスポーツに興味があって「こんなことをやってみたい」という夢がある人は、ぜひ目指してみてほしいです。

楠本:eスポーツをさらに発展させていくためには、今の大人にはない知識や経験を持った若い世代の活躍が必要だと思っています。だから、僕たちよりも若い世代の人たちには、「君たちにしかできないことがある」と伝えたいですね。

今まさにプレイヤーとして経験している高校生や大学生くらいの、eスポーツ世代ともいえる層が入ってくることによって、eスポーツ業界はより加速していくのではないかと思います。

石塚:今、eスポーツ業界を目指したいと考える人では、自分が好きな1ジャンルのゲームを極めてきた人が多いのではないでしょうか。でも、eスポーツには幅広いジャンルのゲームがあって、そのなかにさらにさまざまなタイトルがありますよね。これからeスポーツ業界で働くことを考えたときに、1つのジャンルに詳しいだけでは厳しくなってきているように感じます。

僕らの世代だったら、プレイヤーとしてeスポーツ大会に出場したとか、そういう経験を持つ人自体が少なかったので、それだけでかなり有利でした。でも、これからは好きなゲームだけでなく、いろんなゲームに詳しい存在になって、やっと“eスポーツ人材”になれるのかなと。僕も入社当初、自分が好きなシューティングゲームを担当したいと考えていました。僕の場合はタイミングが合ったこともあり、すぐに担当させてもらえたんですが、もし違うジャンルを担当することになっていたら、それまでの知識だけでは全然活躍できていなかったと思います。

そう思って、社会人になってからゲームをもっともっと勉強するために、今ではPCゲーム、コンシューマーゲーム、モバイルゲーム、それぞれの人気タイトルをオールジャンルで触れるようになりました。

あとは、eスポーツに特化するだけでなく、“eスポーツ×何か”を持っていることも強みになるかもしれません。例えば趣味で、eスポーツ以外にアニメやサブカルの領域にも詳しい、とかでもいいと思います。幅広いゲームに詳しい存在になることと、eスポーツ以外にも得意な領域をもう1つ持つこと。加えて、基礎的なビジネススキルは必須ですね。ゲームメーカーとの交渉、選手のマネジメント、番組制作など、どの仕事でもビジネススキルは重要です。この3つが今後、eスポーツの仕事をするために、必要になってくるのではないでしょうか。

○eスポーツの価値を認めてもらえる社会を目指して

――最後に、皆さんが今後実現したい目標について教えてください。

植田:僕は、子どもたちが「サッカー選手になりたい」「野球選手になりたい」と言うのと同じように、「eスポーツ選手になりたい」と堂々と言えるようになってほしいと考えています。それが世間に認められるように、eスポーツそのものの地位をもっと向上させることに貢献していきたいですね。

小部:海外で活躍しているプロゲーミングチームの選手たちが、今は「東京ゲームショウ」や「闘会議」に出ていますが、そういうイベントを自分たちで開催できるようになりたいです。海外のプロチームを招いて、日本のプロチームも負けていないところを見せたいというのは、1つの目標です。

楠本:番組や大会の制作に携わる仕事をしているので、格闘ゲームなら世界最高峰の大会「EVO」があるように、それ以上の大きな大会を、いつか僕が携わった大会から生み出したいと思っています。

それから、もっとeスポーツの認知度を高めて、周囲の人に馬鹿にされないものにしたいと思っています。そのためにも、まずはテレビでeスポーツの大会を放映したいですね。一般的なスポーツの観戦であれば、家族で一緒に見ますが、日本ではまだ「家族でeスポーツ大会を観戦する」という感覚はないので、それが普通になることを目指していきたいです。

石塚:僕は、就活の時から掲げている「eスポーツをオリンピックの種目にして、それに自分が関わる」という目標から、今も変わりありません。これは一生かけて目指していきたいと思っています。

この目標を立てたのは、僕らが全国を目指して本気でゲームに向き合ってきたなかで、周囲からそのがんばりを認めてもらえない仲間を見てきたからです。そういうイメージを払拭するためにも、この夢を追いかけていきたいです。

――皆さん、本日はありがとうございました!
(綾本ゆかり)

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