来年1月発効の日米デジタル貿易協定によって、何が変わるのか?

マイナビニュース / 2019年12月4日 9時0分

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今年9月25日、日米貿易協定ならびに日米デジタル貿易協定が締結され、最終合意に到達しました。ワシントンで10月7日に正式署名され、来年1月に発効される予定です。デジタル テクノロジーの進化と発展を進めていく上で、この協定はグローバルでも最も進んだデジタル貿易協定といえます。

2018年11月に署名された米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に続き、革新的で開かれた経済圏において、国境を越えたデータ移転を将来にわたり保護するための動きが加速していることの表れと言えます。

今日、貿易摩擦や金融危機で不安定なグローバル経済、テクノロジー、政策環境において、デジタル貿易を相互、地域、多国間で発展させることは、経済成長やイノベーションを加速させる上で重要です。同時に、それを支えるデジタル貿易上のルールを策定することも、雇用創出、経済競争、そしてクラウドコンピューティング、人工知能(AI)、スマートデバイスといった新技術など、ソフトウェアが可能にするイノベーションにおいて不可欠です。

日本、カナダ、メキシコ、米国などは、デジタル政策に対する前向きで進歩的なスタンスをとることにより、AI技術を社会課題の解決に活用するなどの恩恵を享受しています。さらに今回の協定により、ソフトウェアとデータの越境移転が加速するデジタル経済において、世界中で活動する日本企業のみならず、中小企業もグローバルの取引先に注目される機会が、大きく拡大することが期待されます。

米中貿易摩擦などにより保護主義が世界中で台頭する昨今、今回の日米貿易協定は「進歩的な協定により、オープンで革新的な経済圏をどのように促進できるか」を図る、今後に向けての重要な先例となります。

ではいかにして、プライバシーやセキュリティに十分留意しつつ、イノベーションにつながる積極的なデータの利活用を促進していくべきなのでしょうか。
○デジタル貿易の障壁やプライバシーへの懸念

今回の日米貿易協定には、デジタル貿易の障壁やデータプライバシーへの懸念に対する提案も盛り込まれています。

例えば、国境を越えた電子データ(デジタルプロダクト)のやりとりへの関税が禁止されたことで、データ移転が関税なしで行われることが期待されます。AIやロボット開発などによるデータのやりとりを巡る国際競争は、ますます激しくなるでしょう。

そのような観点から、他国におけるソフトウェアおよび関連製品の販売・使用の条件として、ソースコードやアルゴリズムの開示を国が強制することを原則として禁止しました。これにより、データを扱う企業が安心して海外進出できる環境が整備されることになります。

また、データプライバシーに関する対策として、デジタル貿易におけるプライバシー、および個人情報保護関連の法的枠組みを制定もしくは維持することが、日米両国に義務付けられました。

そして、サイバーセキュリティに関しては、両国はサイバー犯罪に対応する当局の能力構築 および 現行の協力体制を強化し、事案への迅速な対応のために情報共有することを確認しました。

また今回の協定には、デジタルスペースにおけるローカリゼーション規制の障壁に対応する、二国間交渉における主要な規定や、越境データ移転を進めるための取組みについても盛り込まれています。

例えば、データローカリゼーションの義務化を禁止したことにより、ビジネスを始める企業に対し、サーバやデータセンターなどの設置を要求することができなくなりました。さらに越境データ移転に関しては、対象企業の事業のために行われる国境を越えた電子データ移転を原則として禁止・制限することが禁じられました。

このような懸念や課題に取り組んでいるデジタル貿易協定は、デジタル経済にとって大きな一歩となります。デジタル時代に企業や個人が能力を十分に発揮して、ビジネスを展開できる環境づくりに大きく貢献します。

今回の日米貿易協定のように、スマートで、前向きなデジタル貿易のルールは経済成長、また、多分野におけるイノベーションに不可欠であり、BSAは、変化するグローバルなデジタル経済において、デジタル貿易を強化する政策上のプライオリティを以下にまとめました。
国際的な基準を採用

各政府は、自発的な、国際的に承認された基準を採用すべきであり、また市場参加者にとって矛盾するような国家基準は避けるべきである。
データローカリゼーションの義務化と越境データ移転の制限を撤廃

各政府は、データローカリゼーション義務化や越境データ移転の制限を課してはならず、データ移転をスムーズに実施できるよう相互運用可能なフレームワークを推進すべきである。
強制的なテクノロジー移転の防止

各政府は企業に対し、ソースコードやアルゴリズムを含む企業秘密といったテクノロジーの移転および開示を、市場へのアクセスの条件として強制してはならない。
プライバシー保護の支援

各政府は、貿易に対する不必要な、または見せかけだけの制限を排除し、個人情報を保護するための法律的フレームワークを採用すべきである。
ITサプライチェーンの保護

政府や企業は、国際的に承認された基準に則ったサイバーおよびサプライチェーンリスク管理と脆弱性の開示プロセスも含め、サイバーおよびサプライチェーンのセキュリティの脅威を減少させるために万全を期すべきである。
○日米貿易協定が世界のソフトウェアに及ぼす影響

ソフトウェアは、グローバル経済のあらゆる分野を通じて競争力を高め、改革を進めるために、日々変革を起こし続けています。今回の日米貿易協定では、そのようなソフトウェアの役割に影響する主要な要素についても述べられています。

まず、他国のデジタル プロダクトと自国の同種のものに待遇差をつけることが禁じられました。またデータセンターなどローカルな施設の設置を強要することが原則禁止されたことにより、不要な施設建設のコストが削減され、二国間での参入障壁が低くなります。さらに、ソースコードやアルゴリズムの開示強制禁止により、テクノロジーの流出などが保護されたことで他国でのビジネスが行いやすくなります。

今回の協定は、G20のリーダー宣言で記された「Data Free Flow with Trust(DFFT)」(信頼性に基づく自由なデータ流通)の考え方を実現するものとなりました。これにより、AI研究、雇用創出、ひいては経済成長につながる、インパクトのあるテクノロジー開発を強化できるようになるのです。

日本をはじめアジア太平洋地域は、大量のデータが国境を自由に越える グローバルなデジタル革命の只中にあります。その革命は、数えきれないほど大勢の人々の生活を改善し、世界の未来を牽引する新しい技術を育むことになります。

その上で最も重要なのは、デジタル貿易ルールの国際的なコンセンサスを醸成することです。あらゆる規模の企業が事業成長・変革を目指し、あらゆる分野にまたがり、インテリジェントなデジタルに注目しています。

BSAは、DFFTのコンセプトをサポートしています。今こそ、日本が DFFT のコンセプトを広め、国際的なルール作りにおいてさらなるリーダーシップをとっていくことを期待しています。

著者プロフィール

○ビクトリア A. エスピネル

BSA | ザ・ソフトウェア・アライアンス プレジデント 兼 最高経営責任者

世界におけるBSAの10の事務所を通し、60カ国のテクノロジー状況を方向づける戦略的取り組みを先導しているほか、世界経済フォーラムの「Global Future Council on the Digital Economy and Society」の議長も務め、オバマ大統領の指名を受け、国際貿易に関する米国政府の主要諮問団である「大統領通商政策・交渉諮問委員会(ACTPN)」での任務にもあたってている。

現職就任前は、共和党と民主党の両政権下で、10年ほどホワイトハウスに勤務しました。知的財産課題についてオバマ大統領に助言し、それ以前は、米国通商部(USTR)の初の知的財産・イノベーション担当代表補として、当課題の米交渉官を務めていた。

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