岡安学の「eスポーツ観戦記」 第22回 初心者に響く工夫が際立った「第2回全国高校eスポーツ選手権」

マイナビニュース / 2020年1月14日 22時43分

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毎日新聞社とサードウェーブは2019年12月28日、29日に「第2回 全国高校eスポーツ選手権」の決勝大会を開催しました。採用タイトルは、第1回に引き続き、『ロケットリーグ』と『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』の2つ。本稿では29日の『LoL』部門を中心に紹介します。

○夏冬連覇で強豪校の地位を獲得したN高校

『LoL』の決勝大会に出場するのは、Aブロック予選を勝ち抜いたクラーク記念国際 秋葉原(東京)、Bブロック予選を勝ち抜いた豊田高校(愛知)、Cブロック予選を勝ち抜いたN高校(沖縄)、Dブロック予選を勝ち抜いた横浜市立南(神奈川)の4チーム。N高校と横浜市立南は前回大会も決勝大会に出場した強豪校です。特にN高校は、2019年夏に開催された高校生eスポーツ大会「STAGE:0」の『LoL』部門王者。夏と冬の制覇がかかっています。

準決勝第1試合は、N高校vs横浜市立南。前回の大会で決勝大会まで勝ち残っていたチーム同士の対戦です。ここでは、圧倒的な力を見せつけたN高校がほぼ完封状態で勝利しました。続く準決勝第2試合は、クラーク記念国際 秋葉原と豊田高校の一戦。こちらは、クラーク記念国際 秋葉原が豊田高校を下して決勝戦にコマを進めます。

そして迎えた決勝戦。ここで、N高校は相手の意表を突く行動に出ました。それは、サブメンバーとして参加していた女性プレイヤーShakespeare選手の起用です。

準決勝で出場していなかったため記念参加かと思いましたが、Shakespeare選手、実はかなりの実力者。チームの連携練習が不十分なため出ていなかっただけで、戦力としては十分過ぎるほどの腕前だそう。この作戦によってクラーク記念国際 秋葉原は、ドラフト(キャラクターの選択や、使用禁止を指定するフェーズ)から困惑している様子でした。

そんな奇襲が功を奏したのか、第1試合を制したのはN高校。40分以上かかる大混戦でしたが、N高校リーダーのまりも選手の活躍によって勝利をもぎ取りました。続く第2試合も一進一退を繰り返すシーソーゲーム。最後の最後までどちらが勝つかわからない展開が続きますが、カギとなる集団戦をものにしたN高校が2連勝で優勝を手にし、夏冬連覇を成し遂げました。

N高校のメンバーはほとんどが2年生。来年もこの布陣で出場することを考えると、ほかのチームにはかなり脅威になりそうですが、クラーク記念国際 秋葉原など新進気鋭のチームも決勝まで勝ち上がっていますし、第3回大会はさらなる盛り上がりが期待できそうです。

○選手の家族が見ても内容が伝わる丁寧さ

今大会を通じて気が付いたのは、初心者にわかりやすい工夫が数多く実践されていたことです。これまでeスポーツでは、「ある程度わかっている人」が視聴する前提で配信を行いがちでした。ですが、高校生大会ともなれば、家族や同級生、教師など、ゲームを知らない人たちからも注目が集まるでしょう。第2回全国高校eスポーツ選手権では、ゲームに馴染みのない層でも理解しやすいような解説がされており、かなり親切な印象を受けました。

たとえば、ゲーム開始前やドラフト時には、チャンピオン(『リーグ・オブ・レジェンド』で使うキャラクターのこと)の特徴を丁寧に紹介。試合中は、細かいプレイの実況よりゲームの展開を重視して解説していました。実況・解説が使ったゲームの専門用語を配信画面でテロップ表示する工夫も、観ていてわかりやすかったと思います。

実況のeyes(アイズ)氏も、普段『LoL』のプロリーグで伝えるものとは異なる内容で話をしているのがわかりましたし、試合後はアナリストiSeNN(アイセン)氏による振り返りを実施していました。ラグビーワールドカップで、詳しいルールはわからないけど、見ているうちに「ノックオンとかは何かを理解していた」というイメージに近いと思います。

『LoL』は世界で1億人のプレイヤーがいる人気タイトルですが、日本ではプレイハード(PC版のみ)の制約もあるからか、まだライト層まで浸透しているとは言えません。全国高校生eスポーツ選手権を観て、新たにゲームを始める高校生も多いでしょう。そのため、今回のような初心者向けの実況・解説は、広い層に響くはず。プレイ人口の増加にもいい影響がありそうです。
○ゼロから勝ち得た準優勝、クラーク記念国際の先生を直撃

今回優勝したN高校と、準優勝のクラーク記念国際 秋葉原。両校とも大会では圧倒的な強さを示して決勝までのぼりつめましたが、実は1つの共通点がありました。それは『LoL』の元プロがコーチに就任していることです。

高校野球や高校サッカーで、元プロ選手や経験豊富な元選手が監督を務めることは珍しくありません。eスポーツの世界でも、同様に経験豊富な元プロ選手がコーチとして就任することで、より高いレベルの練習を実践できるでしょう。また、元プロ選手がコーチをする文化が定着すれば、プロゲーマーのセカンドキャリアの幅も広がるはずです。

クラーク記念国際 秋葉原は、2019年にeスポーツ専攻ができたばかり。元プロ選手をコーチに据えて全国2位まで急成長したことを考えると、かなりの大躍進を遂げたといえるでしょう。大会後に、クラーク記念国際 秋葉原 eスポーツ専攻の責任者を務める笹原圭一郎氏に話を伺いました。

まず聞いたのが、全国高校eスポーツ選手権への出場の経緯について。笹原氏は「1年前の全国高校eスポーツ選手権に参加した生徒とコーチに就任した元プロのセサミさんが、自主的に参加を決めました。ほとんどの生徒が『LoL』の未経験者だったので、ゼロからの活動でしたね」と、振り返ります。

そんなクラーク記念国際 秋葉原が決勝まで勝ち進むことができたのは、通信制高校でありながら秋葉原キャンパスが通学タイプだったことと、元プロのセサミ氏とYuki氏の2人の指導が大きかったと話します。

「『LoL』で大事なのが集団戦。秋葉原校は、毎日通うカリキュラムなので、普段から選手同士が顔を合わせ、コミュニケーションが取れていたと思います。どのタイミングで敵に仕掛けるか、言葉がなくても選手同士でわかるんじゃないでしょうか。個人個人のスキルはまだN高校さんには及ばないかもしれませんが、チームコミュニケーションでは負けない自信があります。また、人を育ててくれるセサミさんと、戦術に優れたYukiさんの指導は大きかったですね。もちろん、コーチがあれしろこれしろと一方的に指示を出すのではなく、自分たちの問題点を生徒自らが考えて、主体的に取り組んでくれたからこそ手に入れた準優勝だと思います」(笹原氏)

結果は惜しくも準優勝でしたが、決勝戦は2試合ともどちらが勝ってもおかしくない大接戦。対戦したN高校の印象はどのようなものだったか、聞いてみました。

「N高校さんは強かったですが、まったく歯が立たない印象ではありませんでした。手の届く位置にいると思います。もう少し時間をかけて練習して、リベンジしたいですね」(笹原氏)

第3回全国高校生eスポーツ選手権の開催が発表されたこともあり、クラーク記念国際 秋葉原はN高校へのリベンジに燃えます。
(岡安学)

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