やはり、恋愛は一筋縄ではいかない。「ダメ男」に惹かれる女性の脳のメカニズム/脳科学者・中野信子

マイナビニュース / 2020年7月14日 7時30分

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恋愛には、数学の計算問題のような明確な「答え」が存在しません。だからこそ、多くの人が悩み、胸を痛め、その答えを追い求めるのでしょう。たしかに「答え」はないかもしれません。しかし、そのメカニズムは存在します。恋愛依存からはじまり、浮気に走りやすい人が持つ特徴、そして、なぜか「ダメ男」に惹かれてしまう女性の脳について、脳科学者の中野信子さんが迫ります。

○恋愛自体が好きになる「恋愛依存症」は、ドーパミン依存状態

恋愛の悩みは人によっていろいろですが、そもそもあまり人を好きにならないタイプと、好きになりやすいタイプがいます。恋愛に悩みがちな人はやはり後者に多く、これには「新奇探索性」という傾向が関係しています。

新奇探索性とは、簡単にいえば「新しいものごとに飛びつく性質」のこと。個人差があり、遺伝的に決まっています。この新奇探索性には、快感をもたらす神経伝達物質のドーパミンが関係しています。

恋愛に悩んでいるときは、苦しいようでいて、じつは楽しい面も多いものです。相手の姿を垣間見たり、メールに返信が来たりするだけですごくうれしい気持ちになってしまう。そこには、相手の一挙手一投足が刺激となって、ドーパミン濃度が上がる現象が起きています。

逆にいうと、なぜ恋愛が苦しいのかといえば、相手からの反応などの刺激がないときに、ドーパミンが分泌されないから。これは一種の中毒状態で、進んでいくと、恋愛依存症のような状態に陥ってしまいます。

恋愛依存症は、相手のことが好きというより、むしろ恋愛そのものが好きな状態。恋愛状態を楽しみたいので、相手を大切にすべき結婚生活や共同生活をはじめると、急にダメに
なる場合があります。

そして、また新しい人を探すようになってしまう。

ときめきの楽しさばかりで、相手をひとりの人間として見るのが難しい、そんなドーパミン依存状態が恋愛依存症といえるでしょう。
○浮気に走りやすい人は、「浮気遺伝子」を持っている

恋愛に関することでいくと、特定のパートナーがいても一向に満足しない人や、次々と新しい人を見つけては恋愛状態に酔ってしまう人がいます。そんな人は、もしかしたら「浮気遺伝子」を持っているのかもしれません。

「そんな遺伝子があるの?」と思うでしょうか。

まず、人間の脳は、なにかの刺激を受けると、快楽物質のドーパミンが分泌されます。この物質は人間が行動を起こすうえでのモチベーションになり、もちろん恋愛による刺激でも分泌されて、快感や幸福感を得られます。

ただし、ドーパミンを受け取るためには、脳にあるレセプター(受容体)が必要です。このレセプターを「DRD4」と呼び、DRD4の型によって、おおよその恋愛観が決まってくるとされています。

DRD4の長さが長い型の遺伝子は「浮気遺伝子」とも呼ばれ、これを持つ人はたくさんの刺激を求める人になります。つまり、浮気に走りやすい人ということもできるのです。

浮気遺伝子を持つ人は、100人あたりスペインで18%、スウェーデンで16%、デンマークで14%というデータがあります。ちなみに、日本では1%程度。もっとも、あくまで実験データであり、日本は婚外交渉の割合が諸国に比して高いので、実情と異なる面もありそうです。
○男性のほうが、恋の刺激がたくさん必要

浮気遺伝子は、男女であまりちがいはありません。ただし、男女の生理的なちがいとして、ドーパミンの感受性の差は考えられます。じつは、男性の方がややドーパミンの感受性が鈍いのです。

鈍いとどうなるか? 同じ快楽を得るのに女性よりも多くのドーパミンが必要になり、ドーパミンの要求量が多くなります。

要は、もっとたくさんの刺激を求めてしまうということ。

ヨーロッパではドン・ファン、日本では光源氏など、多くの恋を求めた人物が芸術作品に描かれてきましたが、恋の楽しみを味わいたい男性は、女性よりもたくさんの刺激が必要になります。

すると、明らかに「この女性はダメでしょう」という人にハマったり、「どう見てもお金目当て」という人に惑わされたり。しかも、そんなことを大いに楽しんでやってしまいます。もちろん、女性でもいわゆる「ダメ男」についていく場合があって、どれだけ痛手を被っても、何度もダメ男を好きになってしまう人もいます。

不思議なことに、ダメ男でないとドーパミンが出なくなっているのです。
○女性が「ダメ男」に惹かれるのは、遺伝子を多く残したいから

ナルシシスト、身勝手、噓つき、思いやりの欠如、浮気性……。多かれ少なかれ、人はこのような性質を持っていますが、これらの性質を複数持っていたり、その度合いが強かったりする男性を、いわゆる「ダメ男」と呼んでも差し支えはないでしょう。

でも、じつに多くの女性が、こんな「ダメ男」に惹かれるのです。いったいなぜなので
しょう?

これはあくまで仮説ですが、女性が自分の遺伝子をできる限り多く残したいためとも考えられます。男性だけでなく、当然、女性の脳にも、自分の遺伝子を多く残そうとするメカニズムが組み込まれています。

ただ、多くの女性と関係を持てる男性とは異なり、女性は産める子どもの人数に限りがあります。そこで、自分の子ども(男の子)に遺伝子をばらまいてもらえば、自分の遺伝子をたくさん残せるというわけです。

ダメ男の遺伝子を受け継ぐ子どもであれば、一般的な男性との子どもよりも、自分の遺伝子を広範にばらまけるかもしれない。だからこそ、たくさんの女性と関係を持つ可能性が高い「ダメ男」に女性は惹かれてしまう……。

もちろん、そんな男性を選ばない女性はたくさんいますが、なぜか「ダメ男」に惹かれてしまう本能が、一定の女性たちの脳に組み込まれていると考えることはできるのです。

構成/岩川悟(slipstream) 写真/塚原孝顕

※今コラムは、『悩みと上手につきあう脳科学の言葉』(プレジデント社)より抜粋し構成したものです。

○中野 信子(なかの のぶこ)
脳科学者・医学博士・認知科学者。1975 年、東京都に生まれる。東京大学工学部卒業後、同大学院医学系研究科修了、脳神経医学博士号取得。フランス国立研究所ニューロスピンに博士研究員として勤務後、帰国。現在は、東日本国際大学教授、京都芸術大学客員教授として教鞭を執るほか、脳科学や心理学の知見を活かし、マスメディアにおいても社会現象や事件に対する解説やコメント活動を行っている。レギュラー番組として、『大下容子 ワイド!スクランブル』(テレビ朝日系/毎週金曜コメンテーター)、『英雄たちの選択』(NHK BS プレミアム)、『ホンマでっか!? TV 』(フジテレビ系)。著書には、『サイコパス』、『不倫』(ともに文藝春秋)、『人は、なぜ他人を許せないのか?』(アスコム)、『空気を読む脳』(講談社)、山口真由氏との共著『「超」勉強力』(プレジデント社)などがある。
『悩みと上手につきあう脳科学の言葉』(2020年:プレジデント社)
(スリップストリーム)

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