「若さ」や「美人」は使えない価値!? 恋愛で身につけるべき「本当の価値」/脳科学者・中野信子

マイナビニュース / 2020年7月15日 7時30分

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みなさんは「恋愛におけるミッション」を考えたことはあるでしょうか? もちろん、それぞれの人なりのミッションがあるかもしれません。しかし、恋愛を続けていくうちに、本当の目的はどこへやら……いつの間にか、まるでゲームのような「遊び」になっていることありませんか? 脳科学者の中野信子さんが語る、恋愛にハマり過ぎることで起きる思いもしない行動、そして、「若さ」や「美人」に頼らない、「賢い恋愛戦略」とはどんなものでしょうか。

○人類の文明が進むにしたがって、恋愛はただの遊びになった

人間はなぜ婚姻をするのでしょうか? それは自分のリソースを維持し、資産の散逸を防ぐためです。そしてもうひとつのミッションが、出産と子育てをするためです。

でも考えてみれば、恋愛はこのふたつのミッションに必須ではありません。人類の文明が進むにしたがって、恋愛は生殖活動の枠を飛び越え、ただの「遊び」になってきたのです。

たしかに恋愛には、先のふたつのミッションをうながす役割はあります。恋愛関係が発展し、婚姻へと進むイメージです。しかし、恋愛の快楽にハマり過ぎると、むしろそのミッションから遠ざかるほうへと進んでしまいます。

なぜなら恋愛で悩んだり、楽しんだりしているときは、ドーパミンによる快楽が強くなり、思考や判断、行動する機能を司る脳の「前頭葉」の機能が落ちるからです。すると、恋愛相手の言動の矛盾に気づかなくなったり、仕事中も上の空になったりして、少し考えればわかるような計算や知的作業もできなくなってしまいます。

もっと行き過ぎると……結婚詐欺などにもあいやすくなる可能性も否定できません。それこそ、不倫をしている著名人なら、ふたりで歩くと写真に撮られることがわからなくなってしまうでしょう。むしろ、まわりに匂わせるような言動をするなど、行動の水準がどんどん下がっていきます。

そんな快楽を得る手段としての恋愛にハマると、本来のミッションである資産の散逸を防ぐことや、子育てを置き去りにして、壊す方向に働いていきます。

恋愛はただの遊び——。

恋愛を楽しんでいるときは、お酒に依存しているときと、さほど変わらないのかもしれません。
○知能が高い人ほど、恋愛にブレーキがかかりやすい

一方で、恋愛をしようとしても、なかなか相手を信用できなかったり、先々を考えて慎重になり過ぎたりすることもあります。もちろん、相手の性格や相性の問題もありますが、なぜか恋愛に過剰にブレーキがかかる人がいるのです。

そんな人は、脳の前頭前皮質にある「背外側前頭前野」という部位が抑制をかけています。いったんは相手に惹かれるのに、「この人と恋愛をすると損かもしれない」「家庭を大切にしてくれないかもしれない」などと思って、恋愛をしない判断を下してしまうのです。

じつは背外側前頭前野の活動の度合いは、知能の高さの指標にもなっています。慎重に思考できる能力は、致命的なミスを犯さないためには役立ちますが、行き過ぎると計算高くなり、相手の条件の見定めばかりに走りがちです。

昨今の婚活市場の活況を見ると、恋愛や結婚を戦略的に考えるあまりに、肝心のチャンスを逃している人もたくさんいるのかもしれません。
○「若さ」や「美人」であることは、長期的には使えない価値

そしてこのこともお伝えしておきたいポイントです。

恋愛をするとき、「若さ」や「美人」であることの価値を信じ過ぎるのは、あまり賢い戦略とはいえないということです。なぜなら、それらは長期的には目減りしていく「使えない」価値だからです。

冷静になれば、そんなことは誰でも知っているのに、実際は多くの人がその減損する価値を追い求めてしまいます。短期的には得を取れるからです。でも、時間の流れは不可逆なので、「若さ」や「美人」といった価値で勝負をしても先が見えています。しかも、目減りしていく価値を維持するには経済力も必要……。

ちょっと世の中を見渡しても、高価なアンチエイジング商品や、美容整形などが相変わらずの人気です。身も蓋もない言い方ですが、「若さ」や「美人」であることは、かなりの経済力がないと維持できません。

それよりも別の価値を自分のなかに育てていくのが、長期的には賢い戦略になるといえるのではないでしょうか。

その別の価値とは、なんだっていいのです。自分が夢中になれるものや好きなことを、何歳からでもはじめて、追い求めていく。そうして人生を楽しんでいる人が、恋愛においても真の魅力を身につけていくのだと思います。

構成/岩川悟(slipstream) 写真/塚原孝顕

※今コラムは、『悩みと上手につきあう脳科学の言葉』(プレジデント社)より抜粋し構成したものです。

中野 信子 なかの のぶこ 脳科学者・医学博士・認知科学者。1975 年、東京都に生まれる。東京大学工学部卒業後、同大学院医学系研究科修了、脳神経医学博士号取得。フランス国立研究所ニューロスピンに博士研究員として勤務後、帰国。現在は、東日本国際大学教授、京都芸術大学客員教授として教鞭を執るほか、脳科学や心理学の知見を活かし、マスメディアにおいても社会現象や事件に対する解説やコメント活動を行っている。レギュラー番組として、『大下容子 ワイド!スクランブル』(テレビ朝日系/毎週金曜コメンテーター)、『英雄たちの選択』(NHK BS プレミアム)、『ホンマでっか!? TV 』(フジテレビ系)。著書には、『サイコパス』、『不倫』(ともに文藝春秋)、『人は、なぜ他人を許せないのか?』(アスコム)、『空気を読む脳』(講談社)、山口真由氏との共著『「超」勉強力』(プレジデント社)などがある。
『悩みと上手につきあう脳科学の言葉』(2020年:プレジデント社)
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(スリップストリーム)

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