トヨタも驚いた? 「RAV4 PHV」が“売り切れ”になった背景

マイナビニュース / 2020年7月13日 8時0分

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トヨタ自動車が6月8日に発売したプラグインハイブリッド車「RAV4 PHV」が現在、受注停止となっている。その理由は、バッテリーの生産能力を超える量の注文が入ったため。つまり、トヨタの予想を上回る人気ぶりなのだ。クルマが“売り切れ”になったなどという話はめったに聞かないが、その背景とは。RAV4 PHVに試乗する機会を得たので、そのあたりについても聞いてみた。

○航続可能距離は1,300キロ超!

「RAV4 PHV」は人気SUV「RAV4」の最上級モデルとしてトヨタが6月8日に発売したプラグインハイブリッド車(PHV)だ。RAV4のハイブリッド車に比べ高出力なフロントモーターとインバーターを搭載し、大容量・大出力の新型リチウムイオンバッテリーと組み合わせることで、システム最高出力を306馬力(225kW、RAV4のハイブリッド車は163kW)に引き上げた。RAV4 PHVはフル充電状態なら最長95キロのEV走行が可能。フル充電かつガソリン満タンの状態であれば、航続可能距離は1,300キロを超えるという。

RAV4 PHVの価格は469万円~539万円。月間販売目標は300台だったが、すでに現状の生産能力を大幅に上回る注文が入っているため、年度内の生産対応分をもって受注を一時停止している。つまり、現在は注文ができない状態だ。注文受け付けの再開時期は現時点で未定だが、決まればトヨタのHPなどで案内があるという。RAV4 PHVの受注台数は非公表だが、2020年6月に発売し、今年度の生産対応分を持って受注を止めたということは、月間目標300台×10カ月(2020/6~2021/3)=3,000台ほどは売れているのかもしれない。

今回の受注停止についてトヨタ広報は、欲しいといってくれる顧客がいるにもかかわらず商品を提供できないことになり、自動車メーカーとして大変申し訳ないと恐縮しきりな様子だった。ただ、クルマ離れという言葉も聞かれる中、クルマが売り切れたという今回の事態は、トヨタとしては喜べないかもしれないが、そんなに悪い話でもないような気がする。少なくとも、興味深い現象だ。

マイナビニュースでは今回、そのRAV4 PHVに試乗し、開発に携わったトヨタ Mid-size Vehicle Company MS製品企画 ZD 主幹の宮浦猛さんに話を聞くことができた。

○ほとんどの人は乗らずに買った?

マイナビニュース編集部:あらためて、受注を一時停止とした理由は?

宮浦さん:電池パックのキャパシティが上限に達したのが理由です。もともと構えていた電池パックの量に対して、たくさんの注文を頂きました。

編集部:今回の事態を受けて、電池は増産しているんですか? 電池を別の工場で作って持ってくることは難しいんでしょうか。

宮浦さん:RAV4 PHVの電池パックは新規開発で専用に作っているものですので、不足したからといって別のところで作れるものではないんです。増産に向けては、頑張っているはずです。

編集部:トヨタさんが思っていたよりも、RAV4 PHVが売れたということだったんですね。

宮浦さん:結果的にいうと、そういうことになりました。結構、お値段は高いじゃないですか? 500万円のRAV4ということで、買ってもらえるのかということは開発中も自問自答していました(PHVではない既存のRAV4は260万8,200円~381万7,800円)。そんなにたくさん売れるという自信も、実をいうとなかったんです。いい商品を作れば、値段が高くても買ってくれるお客さんがいるということを再認識できましたし、大いに反省しなければいけないと思っています。

編集部:RAV4 PHVを購入した方は、どんな人たちなのでしょうか。

宮浦さん:まだ情報は入ってきていないのですが、500万円くらいするクルマを、ディーラーにもほとんど配備されていなくて、試乗もできない状態で、カタログもご覧にならずにお買い上げになったお客様が、結構いらっしゃったということなのだと思います。これは予想以上でした。このクルマの価値に共感してもらえたのかもしれません。

編集部:どこに魅力を感じて購入を決められたのでしょうね? PHVであるというところでしょうか。

宮浦さん:そのあたりは、これから解析していきたいです。ただ、個人的に心に響いたのは、225kw、306馬力というシステム出力です。私は40代ですが、20歳くらいのときは「300馬力」に憧れがありました。「306馬力」が響いた方は、いらっしゃるかもしれません。

(編集部注:日本には「280馬力規制」というものがあり、かつては日産自動車「GT-R」でも280馬力に抑えていた時代があったそう)

編集部:今回の事態を受けてRAV4 PHVを増産したとしても、実は、もう欲しい人には行きわたってしまっていて、今度はそこまでの勢いでは売れない、みたいな可能性もあるでしょうか? 今回の“売り切れ”騒動が、実は一過性だったというような。

宮浦さん:なんともいえませんが、ありえます。なので、増産するにあたっては非常に慎重な判断が必要になるんです。

編集部:ただ、クルマの電動化は間違いなく進んでいきますよね。

宮浦さん:RAV4 PHVも、そこにはまったんだと思います。SUVで環境によくて、EVとして95キロ走れる上に、ハイブリッド車としても燃費がいい。さらに、荷物もいっぱい詰める。それで、普通であればミニバンをお買い上げになるようなファミリーユーザーからも、「RAV4 PHVって面白いかも?」と思ってもらえたのかもしれませんね。

SUVのPHVといえば、国産車では三菱自動車工業が「アウトランダーPHEV」を以前から販売しているが、ほかにはボルボ「XC60」やBMW「X3」などの輸入車しか選択肢がない。RAV4 PHVの価格は、RAV4のグレードのひとつと考えれば高いのかもしれないが、輸入車に比べれば数百万円は安く買えるはずだ。

さらにいえば、競合するPHVがどちらかというと都市型SUVであるのに対し、RAV4をベースとするRAV4 PHVはSUVらしく力強い外観なので、うまい具合に差別化を図れている。これらを考え合わせると、RAV4 PHVは「こういうクルマがあるといいな」という市場の潜在的なニーズにバッチリとはまったのではないかとも思えてくる。

○運転しやすい! あえて回生を弱めに

ちなみに、RAV4 PHVに乗った印象としては、もともと見切りが良くて運転しやすかったRAV4をEVのように走らせることができるところが非常に楽しかった。力強い加速と静粛性(エンジン音なし)がEV走行の特徴だ。最長95キロのEV走行が可能とのことなので、普段の用事や通勤などに使う場合は、ほとんどを「EVモード」で過ごしてもいいかもしれない。

EVに乗ると、回生ブレーキの効き目に驚くことがある。アクセルペダルを戻したとき、エンジン車よりも強く減速する、あの感じだ。この特性をうまく使えば、アクセルとブレーキの踏みかえを大幅に減らすことができて足が楽だし、走行から停止までの全てをアクセルペダルだけで操作する「ワンペダル走行」が可能なEVもある。

ただ、ワンペダルでの加減速はエンジン車と操作感覚が異なるので、慣れないとクルマの挙動はギクシャクしてしまう。慣れる慣れない以前に、ワンペダルには好き嫌いの問題もある。

その点、RAV4 PHVのEVモードは、ほかのEVに比べると、ほとんど回生が効いていないのではないかと思うくらい、アクセルを戻した際の減速の感じが自然というか、エンジン車のそれと似ていた。なので、少なくとも私は、エンジン車と同じような感覚で運転することができた。トヨタによれば、好みの問題を考えて回生はあえて弱めにしてあるとのこと。EVモードにしたうえでドライブモードを「スポーツモード」にすれば回生の強さは最大になるそうだが、それでも、ほかのEVほどの強さにはならないそうだ。
(藤田真吾)

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